箸集団拉致事件
みなさん初めまして
mustの締め切り守らない担当の水刀です
昨年のmustの作品では最初のおはなしを書かせて頂きました
今回の作品は、箸が拉致されます
是非読んでみてください。
タイトル:箸集団拉致事
「またまたー、矢田さん性格悪いっすよねぇー。毎日のように嘘ついて箸無くなったって騒ぎ立てて」
上司の鉄本さんにそう声をかけた。
鉄本さんは少し真面目すぎるきらいがあるので、どこか神妙な面持ちで、
「これだけ毎日騒ぎ立てるっていうことは何かあるんだろうなぁ」
なんて言う。
あるわけない。あるわけない。
口から漏れ出た息が上司を小馬鹿にした薄い笑いに変わる。
「そんなことはどうでもいいから。きちんと仕事しろよ。たださえ評判悪いんだから。田中のプレゼン」
仕事が面倒くさく、唐突に挟んだ俺の雑談はまるでどうでも良かったかのように、完全に話を逸らされる。
「へーい」
上司には真面目な返答をせず、雑な相槌を返事をする
矢田さんは、職場の受付業務のおばちゃんで、ここ数日休憩になると急に、
「箸が無くなったの。箸が。朝確認して入れてるんだけどねー。家に忘れてくるわけないのよねー。お箸お箸どこーーー」
なんて騒ぎ出す。
騒ぎ方もどことなく不思議で、よくわからない謎のリズムがある。
そんな奇妙な矢田さんのお騒がせは、いまや社内のモノマネネタとして大人気だった。
ようやくお昼の休憩になった頃、やはり真っ先に休憩を取っていたらしい矢田さんがいつもの如く騒ぎ始めたのだ。
しかし、そこからがいつもと違ったのだ。
同期社員である、田吉さんが少し苦い顔してやってきたのだ。
「どうしたんだ?田吉」
すると田吉は小声で
「私のお箸もないの」
そういった。
「家に忘れただけじゃないの?というか箸ぐらいで気にしすぎじゃない?」
「それだけじゃないのよ。今日私コンビニでお弁当買ってきたの。それで休憩になって少しトイレ行って戻ってきたら、なぜか机に出してなかったお弁当が机の上にでてて、お箸のビニールだけ残ってたの」
???
なんかとってもくだらないことが起こっているらしい。
ここは小学校か?
そんな言葉が私には渦巻く。
一度それらの言葉を飲み込み
「まぁ、そんな気にすんなって。たまたまさ」
そういうと、少し落ち着いた様子で田吉は戻っていった。
ただやはり少し気持ち悪いことではある。
カバンの中に入れていたはずの弁当がわざわざ机の上にだされ、そして几帳面にも箸だけ盗まれている状況というのはなかなか不思議である。
自分の箸が盗まれた腹いせに矢田さんが盗んでたりして。
そんなことを思いながら俺も昼食を取るために弁当を取り出した。
今日は妻が作ってくれた弁当持ってきていた。
妻は料理が好きらしく、朝は忙しく大変だというのに、なかなか凝ったものを作ってくれるので、いつもありがたく頂いている。
しかし、弁当を入れた袋を開けた時
「あっ」
と思わず声を出してしまったのだ。
そう、あることに気づいたのだ。
箸がないと。
さて、どうしたものかと。
お箸ケースが丸々ないのである。
こればかりは苦い顔をするしかない。
それこそさっきの田吉と全く同じ表情を、私は今浮かべているのではないだろうかと思った。
この辺りから私の思考回路は一点、無意識に社内の雰囲気にのまれたのか、おかしな方向に進み始めるのだった。
ここで下手に騒ぎたてれば、それは矢田さんと同じことをすることになるのである。
同僚に少し笑い話としてしようにも、まともに取り合ってくれないだろう。
きっと、
「それ、矢田さんのモノマネ?」
その程度で済まされてしまう。
絶対に箸を持ってき忘れたはずはないんだ。
しばらくそうして弁当を目の前に悶々としていた。
すると、社内がかなりざわついていることに気がついた。
「私も箸がないの」
そういった声が多く聞かれることに気がついた。
これは決して俺のミスではないと確信した。
集団的な箸の拉致が起こったに違いない。
そして犯人は、今まで盗んできた腹いせに矢田さんがやったに決まってる。
後で振り返ればなぜ自分がこんなにもヒートアップしたのかわからない。
けれどきっと仕事がしたくなかったのだろう。
俺は箸の話題でもちきりの集団に、堂々とした被害者面をして、飛び込んでいった。
*
結局この日箸集団拉致事件の犯人は矢田さんだった。
動機はこれまで自分の箸が盗まれていた犯人をどうしても突き止めたかったとのこと。
それで社内の多くの人の箸を盗んだらしい。
盗まれた人から「お前が同じことしてどうする」と総ツッコミを食らっていたが。
そしてなんと矢田さんの箸が盗まれた事件も、この騒動で解決に至ったのである。
なんと犯人は上司のすました顔してた鐵本さんだったのである。
それも盗んだ理由が
「箸フェチで矢田さんタイプだったんでつい」
というなんとも言うことが出来なすぎる動機である。
こうして、箸集団拉致事件は解決したのだった。
ちなみに俺の箸は、
「ごめんね。今日お箸入れ忘れちゃった」
という妻のメールにより解決し、無事赤っ恥をかいたのでした。
終わり
読んで頂きありがとうございました。
感想等あれば頂けるととっても嬉しく思います。
これを契機にもっともっと作品書けるようにしたいと思ってますので、小説を書いたら読んで頂けるととっても嬉しく思います。
次回こそ必ず締め切り守ります。
ちなみに著者の読み方は
すいとうたこう です。
お読み間違いないように 笑笑