不死人《イモータル》
なろうの風潮に全力で喧嘩を売っていくスタイル。
気分次第の更新です。
「死にたい」
そう言って俺はゆっくりと身を起こす。
服はズタズタのボロボロ、全身は赤黒い血で濡れていた。
「あのボンクラ共…遠慮無しにやりやがって…」
痛む身体で壁に手を付き、頭を抱えて立ち上がる。
自分にこの仕打をした連中の、ヘラヘラとしたニヤケ面が脳裏に浮かんで苛立ちは更につのった。
「………ほんと、自分の弱さが嫌になる」
俺は弱い。
喧嘩なんてまともに出来やしないし、武術の心得もない。
いざ武芸を学ぼうとしても、金も保証も無い奴に教えを与えようなんて酔狂な奴もいない。
誇れることと言ったら人並み外れた魔力量と『体質』程度。
しかし、魔力量が人より多いと言っても、火の玉一つ生み出す事すら出来ないほど才能が皆無。
完全な宝の持ち腐れだ。
「生きてる意味、あんのかな、俺」
憂鬱な気持ちになりながら、俺は路地から大通りに出る。
全身ボロボロの俺を見て、町並みを歩いていた人たちの視線が一斉に此方に向いた。
「…………………」
数秒の沈黙。
「…………き」
衆目の1人が小さく声を上げる。
「き?」
「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そして大音量の悲鳴を聞いてから気付いた。
「……………あ、くっつけんの忘れてた」
俺、首切り落とされてからそのままだったわ。
悲鳴を上げて卒倒する女性を尻目に、俺は右手にぶら下がっていた頭を抱えて首に据える。
「いだだ、あっつ」
シュウシュウと煙を上げ、少しの熱と痛みを伴う。
ものの数秒で首の断面は綺麗に塞がった。
「……お騒がせしました、どーも」
「バカ野郎!脅かすんじゃねぇバケモノが!」
くっつきたての首の具合を確認しながら頭を下げると、誰かがそう罵倒を飛ばす。
そう、俺はバケモノ。
何があっても、どんな致命傷でも死ぬことのない不死人。
悔しい気持ちを押さえてもう一度頭を下げてから、俺、ビット・フェンは人混みを避けるように、逃げるように足を動かした。
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