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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三・五章 滅亡ノ鐘
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追跡 壱

前回までの粗筋!

ミシェルがしゃしゃったので、赤雷おいたんとアルシュおいたんは──言い方、である──大わらわで彼女の尻拭いへと向かう。


 「……む?」


 赤雷達が追う男の前方に少女が立っている。細身で、そこらの町娘にしては端正な容姿だ。化粧に特有の繕った風もない、自然で未成熟な女の(はかな)美貌(びぼう)である。

 何より男の気を引いたのはそれではなく、その目付きだ。陵辱を受けた女が浮かべるようなものとは程遠い、理知的だが澱んだ色。それが接近して来たと気付いた時に覚えたものは、劣情などではない。背筋が凍り付く感覚だ。それこそ、(つじ)斬りに出くわしたようだった。

 彼は、最早少女が美しいだなどとは思っていない。長年の勘から彼女が敵だと判じられたからだ。


 「──退()けっ!」


 状況を一瞬の内に把握するや、彼は転瞬。手近な通行人を少女の方へ向けて引き倒す。巻き込まれて三人程が倒れ、籠から瓜や赤茄子などが散乱し道を塞ぐ。

 ミシェルは追い(すが)ろうと駆け出すも、それらに阻まれて身動きが取れず、出鼻をくじかれる格好となった。危機を察知したからか、思いのほか逃げ足も早い。付いていくのがやっとである。夜明けが近い為、人通りはかなり少ない。とは言え、彼女の行動は目立ち過ぎた。野次馬まで集まり、一連のことで騒ぎ立ててしまっている。


 「……なんてこと!」


 相手を甘く見過ぎていたことに歯噛みする。

 調査である程度把握していたが、それはほんの一部に過ぎなかったのだ。そうでなければ、こんなことでつまずくはずもない。元より荒事に関しては相手や赤雷らに一日の長がある。今まで順調に事が運んだのは、紛れもなくアルシュと赤雷の経験則、そして考察などから得られた功だ。他人の努力をあろうことか台無しにしつつある。ミシェルの不安と焦燥は急速に高まり、やがて頂点へと達した。


 ──どうすれば? 何か……何か打開策は無いの!?


 引き離されていく事実に、思考は一層の混乱を見せる。冷静な思考など望むべくもない。困惑の中に答を見出す以前の問題だ。失敗も少なく、咄嗟(とっさ)の事態に当たる対応力が不足しているのは明白だった。彼女自身の経験不足も否めない。

 ましてや、哨戒中の兵士がいる中での暴挙だ。今の状況を自警団や私兵連中に見付かれば、悪化の一途を辿りかねない。夜警は城へ戻り、引き継ぎを行うであろうことを考えても不幸中の幸いである。そんなことは既に失念していた。今の彼女には、それほどまでに余裕というものが無いのだ。

 腰を落として遮二無二(しゃにむに)といった様子で加速するミシェルだが、そこで男が露店の商品を妨害の為に道へ散乱させた。

 足に物が絡み付き、彼女の機動力を奪う。


 「──ええい、邪魔よッ!」

次回、赤雷は舌打ちをこぼすようです。

お楽しみに(笑)


……あれ、それなら平常運転じゃね?

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