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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三章 剣ノ勲
73/120

逆襲

迷いを捨てきれぬ剣士が、今日もまた刃を閃かせる。

背に負いしは何ものなるや?


……なんちゃって(笑)


 シガールらが帰路についたのは、戦闘が終結した三日と半日後である。共に肩を並べた味方を烏(からす)の餌とするのは忍びないらからだ。

 特に損壊が激しい者は、一人の人間になるように文字通り組み立てて(・・・・・)やらねばならなかった。腕や足が見付からないこともあったからだ。ましてや敵味方入り乱れての衝突である。無理もない話だ。敵方の亡骸とて例外ではない。

 放置すれば疫病(えきびょう)が蔓延(まんえん)する可能性もある。疲れきった男達は、泣く泣く敵までをも葬ることになったのだ。

 味方の笑顔はめっきり減っていた。


 「ひでえな。これじゃ、まるで塵(ごみ)拾いだ」


 ──と、この様に幾人かの傭兵は欠損した遺体を前に軽口すら叩いていた。そうでもしなければやっていられないのだろう。シガールはそう感じた。何しろ、年かさの男が多く、そういった者は余裕があり、他者に対しては概(おおむ)ね寛容である。見知った顔であれば情も湧く。

 考えてみれば、赤雷やアルシュもその手の人間だったはずだ。

 口では荒いことを言えど、やはり仲間意識が先立つのだろう。

 だからこそ、なのだろうか。彼らの口上は内容とは裏腹に力ない。


 「誰にも死んで欲しくねえってのによ……」


 スブニールが静かに呟いたその言葉を、シガールは聞き逃さなかった。

 ──野暮なことはやめろ。

 寸前で止まり掛けた言葉はしかし、留まらせることは叶わない。


 「大丈夫です、俺は……俺達は、負けませんから」


 彼は返答があるとは思わなかったのか、目を丸くする。

 ──が、やがてそれは笑みへと変わる。


 「そうだな。生き汚くたって、最後まで立って居ればいい! 湿っぽいのは、嫌いだったんだが……やれやれ、慰められちまったな」


 それを見た荒くれ連中が、「シガールで遊ぶのも大概にしろ」とからかう。「『うるせえ、酒臭ぇんだ』って言ってやれ」と腹を抱えて笑うものも居た。もっとも、そうやって騒ぐのは年かさのある者ばかりで、新参者の顔はすこぶる悪い。

 シガールにとってそれは、分からなくもない話である。

 昨日まで肩を並べていた僚友が、明日の朝には骸と化す。言葉に起こせばそれだけでしかない。

 だが、その恐怖と喪失感は想像を絶するものだ。赤雷の言葉を借りるなら、明日は我が身である。いつ何時、自らが凶刃に倒れるのか。当人らにしてみれば恐ろしくて堪らないことだろう。


 ──俺もそうだった。


 かつてシガールは七歳にして人を斬った。

 死が、目と鼻の先にあるという恐怖。生殺与奪が我が手に掛かることの重圧は耐え難いものであった。斬られて死ぬということに怯(おび)えもしよう。

 然りとて戦場は、それを許す程甘くない。

 斬らねば斬られ、人の心身を焼かんとする──正真正銘の地獄である。

 それに対し、忌避感が無いと言えば嘘になる。とは言え、随分と和らいでいたのもまた事実である。

 ──否、薄らいだと言ってもいいだろうか。


 剣を振るう内、何時しか彼は戦場に身を置くことに然程(さほど)違和感を覚えぬようになっていた。

 怨敵を斬り伏せることにこそ大義を見出ださんと、躍起(やっき)になっていたのやも知れない。

 そのように変化していく自身が恐ろしく、シガールは腕を抱き寄せる。

 思えば、剣を取ったからと言って不安が拭えたことはない。寧ろ、日増しに酷くなる強迫観念めいた思考が、理性をも支配しつつある。


 ──それでも、俺は……!


 ──その時、後方がやけに騒がしくなり始めた。離れた場所から響く馬蹄(ばてい)の轟音と鬨(とき)の声が、程なくして先頭を行くジルベールらに届く。発生源は二箇所。仲間の部隊であろうはずもないと判断するのに、誰もがたっぷり十秒程の時間を要した。

 シガールは、現実というものの非情を再び思い知る事となる。


 この状況は、彼に激烈なまでの既視感をもたらしたからだ。

フェンシングもいいけど、剣術をもっと普及させて欲しい( ゜ 3゜)

鎬を削る、豪快な斬り合いも捨てがたい!


技巧も力押しもロマンだ!

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