逆襲
迷いを捨てきれぬ剣士が、今日もまた刃を閃かせる。
背に負いしは何ものなるや?
……なんちゃって(笑)
シガールらが帰路についたのは、戦闘が終結した三日と半日後である。共に肩を並べた味方を烏の餌とするのは忍びないらからだ。
特に損壊が激しい者は、一人の人間になるように文字通り組み立ててやらねばならなかった。腕や足が見付からないこともあったからだ。ましてや敵味方入り乱れての衝突である。無理もない話だ。敵方の亡骸とて例外ではない。
放置すれば疫病が蔓延する可能性もある。疲れきった男達は、泣く泣く敵までをも葬ることになったのだ。
味方の笑顔はめっきり減っていた。
「ひでえな。これじゃ、まるで塵拾いだ」
──と、この様に幾人かの傭兵は欠損した遺体を前に軽口すら叩いていた。そうでもしなければやっていられないのだろう。シガールはそう感じた。何しろ、年かさの男が多く、そういった者は余裕があり、他者に対しては概ね寛容である。見知った顔であれば情も湧く。
考えてみれば、赤雷やアルシュもその手の人間だったはずだ。
口では荒いことを言えど、やはり仲間意識が先立つのだろう。
だからこそ、なのだろうか。彼らの口上は内容とは裏腹に力ない。
「誰にも死んで欲しくねえってのによ……」
スブニールが静かに呟いたその言葉を、シガールは聞き逃さなかった。
──野暮なことはやめろ。
寸前で止まり掛けた言葉はしかし、留まらせることは叶わない。
「大丈夫です、俺は……俺達は、負けませんから」
彼は返答があるとは思わなかったのか、目を丸くする。
──が、やがてそれは笑みへと変わる。
「そうだな。生き汚くたって、最後まで立って居ればいい! 湿っぽいのは、嫌いだったんだが……やれやれ、慰められちまったな」
それを見た荒くれ連中が、「シガールで遊ぶのも大概にしろ」とからかう。「『うるせえ、酒臭ぇんだ』って言ってやれ」と腹を抱えて笑うものも居た。もっとも、そうやって騒ぐのは年かさのある者ばかりで、新参者の顔はすこぶる悪い。
シガールにとってそれは、分からなくもない話である。
昨日まで肩を並べていた僚友が、明日の朝には骸と化す。言葉に起こせばそれだけでしかない。
だが、その恐怖と喪失感は想像を絶するものだ。赤雷の言葉を借りるなら、明日は我が身である。いつ何時、自らが凶刃に倒れるのか。当人らにしてみれば恐ろしくて堪らないことだろう。
──俺もそうだった。
かつてシガールは七歳にして人を斬った。
死が、目と鼻の先にあるという恐怖。生殺与奪が我が手に掛かることの重圧は耐え難いものであった。斬られて死ぬということに怯えもしよう。
然りとて戦場は、それを許す程甘くない。
斬らねば斬られ、人の心身を焼かんとする──正真正銘の地獄である。
それに対し、忌避感が無いと言えば嘘になる。とは言え、随分と和らいでいたのもまた事実である。
──否、薄らいだと言ってもいいだろうか。
剣を振るう内、何時しか彼は戦場に身を置くことに然程違和感を覚えぬようになっていた。
怨敵を斬り伏せることにこそ大義を見出ださんと、躍起になっていたのやも知れない。
そのように変化していく自身が恐ろしく、シガールは腕を抱き寄せる。
思えば、剣を取ったからと言って不安が拭えたことはない。寧ろ、日増しに酷くなる強迫観念めいた思考が、理性をも支配しつつある。
──それでも、俺は……!
──その時、後方がやけに騒がしくなり始めた。離れた場所から響く馬蹄の轟音と鬨の声が、程なくして先頭を行くジルベールらに届く。発生源は二箇所。仲間の部隊であろうはずもないと判断するのに、誰もがたっぷり十秒程の時間を要した。
シガールは、現実というものの非情を再び思い知る事となる。
この状況は、彼に激烈なまでの既視感をもたらしたからだ。
フェンシングもいいけど、剣術をもっと普及させて欲しい( ゜ 3゜)
鎬を削る、豪快な斬り合いも捨てがたい!
技巧も力押しもロマンだ!




