真の戦場 伍
俺の知ってるプロットと違う……。
スブニールらの追撃に対し、初めの内こそ反撃を試みていたアバンツァータは、敗色濃厚とみたのか。遂に逃げの姿勢に入った。
追いすがるシガールらに、背を向けて彼らは撤退する。
逃げ遅れた兵が槍の穂先、或いは剣の切っ先に貫かれ、血の泡を吹きながら絶命した。幾本かの矢がアバンツァータの兵に吸い込まれはしたものの、流れ弾のようなものであり、即座に
シエル王国は、哀れな兵を呑み込みながら前進するが、次第に引き離れていく。結果として捨て駒となった彼らが、僅かばかりの足止めになった。
そして何より、奇襲や速攻戦術を得意としている所以だろうか。はたまた死物狂いでの撤退によるものか、後退するアバンツァータは越境し自国領内へと退いていった。
鬨の声があがる。
「もう二度とその面ァ見せるんじゃねえぞ!」
山賊もかくやの迫力で叫び、大笑したのはスブニールである。剣を天に向けた堂々たる威風は、荒くれではあるものの、その目には確かな理性があった。
束の間の勝利を味わった彼だが、喜んでばかりもいられない。戦いを乗り越えたとて、犠牲はつきものである。
如何な常勝の軍にも例外はない。
不運な者、力量が及ばない者、または情にほだされた者。
そういった者は地に伏し、野の肥やしとなるのを待つこととなる。
哀れではあるが、時として味方の馬に内臓を踏み抜かれる事態もあり得るのだ。死傷者が出ることと、その理由をあげればきりがない。
スブニールはこうした状況に慣れてはいるが、心が苦しまない訳ではなかった。
後ろに視線が向き、自軍の兵力が削がれていることに胸が痛む。
──また、大勢死んだ……。
敵を斬ることに躊躇はない。
だが、死体の山が味方のものであることに、彼は懊悩した。勿論、戦果が無いわけでもなかったが、実質的にアバンツァータの被害は軽い。彼らが一〇〇程度の死者を出しているが、こちらは見たところ四〇以上の手勢を失っている。そのほとんどが新兵であり、新参の士気は不安が残るところでもある。なにぶん、全軍にして二五〇もないのだ。
元の数が少ない上に、減少しているのだから不安もひとしおである。再び戦闘を仕掛けられたとしても、勝ちの見込みは薄く思われた。
周りに誰も居なければ頭を抱え、懺悔すらしたことだろう。
気分が晴れない彼のそばへ、レミーが駆け寄る。
「スブニール、死亡者が四十八名だ。更に戦闘不能が十三名。どうにも重傷の者が多いようでな、軽傷は数えるほどしかいない」
「すまんなレミー。通例通り、負傷者は後方へ。手当てを優先するように。物資は心もとないが、何もしないよりはましだろう」
「言っておくが、連中は恐らく……」
「──手が早い癖に執念深い、だろ。これ以上説明が要るか?」
「……悪かった。任せよう」
レミーが去るのを認めるとスブニールは、爪を噛んだ。
副官の手前、大見得を切っているが、打開案ひとつで切り抜けられるほど安穏とした戦いではない。短期間での台頭がもたらした傲慢は、当人らの与り知らぬものである。それと知らずに増長した者は、往々にしてしつこいものだからだ。
頭痛の種が増えたようで、気分が悪くなったところで彼は気付いた。
「シガールのやつはどこへ行った?」
実は、話ちょっと変えました( ・`д・´)キリッ




