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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三章 剣ノ勲
69/120

真の戦場 参

お疲れ様です。

今回は、「如月は手抜きをしたようです」をサブタイにお送り致します(笑)

 アバンツァータの斥候が自陣に辿(たど)り着いたのは、日の出が地平線に顔を出す頃である。

 状況報告を済ませると、最初の内こそ楽観的思考を(のぞ)かせた指揮官も、次第に青い顔を見せる。工作の兆しありとされては対処に難儀するからだ。仮に彼らが手に負えないと判断し、増援の要請に戻ったとあっては、間に合わない可能性の方が(はる)かに高い。懸念は当然のことである。

 その上、およそ六〇〇という大所帯だ。開けた場所に陣を敷いているが、全ての兵が一箇所に集まることは出来ない、そんな土地柄となっている。軍を五〇毎に分けて野営しているため、不測の事態に際しては即応が困難となるのだ。騎兵隊も現状では十全な働きを期待出来ないだろう。


 しかし、男が少数の敵を制圧すべく、仲間が引き続き監視を続行している旨。そして仲間は敵の倍近い数であることを伝えると、彼の血色は心持ち良くなったように思えた。

 安堵の息がこぼれる。


 「成る程、そうであれば現状ではさして問題はないな。とりあえず、長旅の疲れを癒すとしよう」


 懸念は戦闘行為に限らず、兵の疲労。そして過酷な環境の中での強行軍で二〇〇近い死者が出たことと、それに伴う兵力と士気の低下にある。

 目論見自体は功を奏している。

 横槍を入れられる隙すら与えぬ先制攻撃。国境警備隊と僅かに駐屯する兵達を始末し、かの国に動揺を与えたことは確かだろう。

 とは言え、ただでさえ消耗を避けたい戦力は、看過できぬほどの打撃を受けている。将兵の士気に至っては、最早問うべくもない。相次ぐ仲間の死で、彼らの目に宿るべき覇気はそのなりを潜めていた。更に管理する輜重(しちょう)の食糧もやや心許(こころ)ないところなのだ。致し方ないこととは言え、彼は半ば()れていた。

 時折漏れる嘆息は、打開策が事実上ないに等しいことが理由なのだろう。

 自国へ戻れば、内紛の対応にも追われることが予想されているため、苛立ちは(つの)る一方である。将は感情を殺さねばならないと理解していても、歯痒さは抑えきれなかった。

 それから幾ばくかの時が流れる。


 「……戻って来ないな。少し様子を見てこい」


 斥候を放つ指示を出す。

 ところが、偵察は即座に終わりを告げた。出立した数名が戻ってきたからだ。焦りの色が濃い彼らに、男は面食らった。


 「大変です、林が燃えているようです! 火の手も確認しました!」


 「なっ!?」


 予期せぬ言葉に、絶句する。

 工作を阻止したという(しら)せと辻褄(つじつま)が合わないのだ。予想外の事態に、早急な行動指針の変更を求められたのだから無理もない。彼の思考は掻き乱された。


 「通達しろ、これより林を抜ける! 邪魔立てする敵は突破し、血路を開く!」


 一部始終を聞きつけた兵は、支度を開始。各部隊にも伝令が走っていく。

 あるものは槍を、またあるものは弓を取り、必滅の戦場へ(おもむ)かんとしていた。

──(手抜きじゃ)ないです。

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