序章 弐
「これ、今まで以上に短いな。これは手抜きだろ」
──と、お思いでしょう。
長い話は分割しようと思い至り、こうしました。
そもそもシーン切り替えの為なので、寧ろ気軽に読んで貰えれば幸いです(ニッコリ
シガールは、街の井戸で剣の具合いを確かめていた。すぐ横には砂地が設えられている。それは騎士団の練兵場だ。細かい砂の粒子が舞っていた。
水を汲み終わると、目を皿のようにして刃先を眺める。柄に付着した垢を流し、陽に照らして傷の有無を検分してゆく。その様相たるや、職人顔負けだ。刃こぼれひとつ見逃すまいとする気魄。整備に余念がないことはすぐにそれと知れた。
「刀の方は問題ない、と。こっちは磨かなきゃな」
長剣を砥石に添え、水を加えつつ研磨し始める。
たとえ使わずとも、摩耗するのが武器である。手入れを怠れば、相棒は応えない。錆び付きを許せば、死ぬのは自分なのだ。
シガールは自らに、そう言い聞かせる。口喧しく思いつつも、彼は赤雷の教えを守っていたのだ。
──あれから一年と半年。行く宛てはなく、暮らしも楽じゃない。さて、どうしたものか。
赤雷と別れて一年半余り。彼は自警団の加勢をするなどして生計を立てていた。時には酒屋での雑用もこなしてはいたものの、懐事情は寒いままだ。王都近郊とは言えど、生活の質はデポトワールと大差ない。或いは、年若いのをいいことに金勘定を誤魔化しているのかも知れなかった。
その上日雇い程度の賃金だ。日々暮らしていくことが精一杯という有様で、貯蓄すらままならない。
様々な思いを巡らせる内、彼は再度孤独を痛感することとなった。
両親やマジー、赤雷にアルシュ達の顔が胸に去来する。寂寞の念が芽生えるのも自然の理である。
ふと、彼は仲間達の墓を思い出した。母の笑顔が、父の勇姿が浮かぶ。
「……何時かは戻って、弔いの言葉を掛けなければな──あっ!?」
いつの間にか、上の空になっていたらしい。シガールの手から長剣が滑り落ちる。幸い、掌の皮一枚を切るに留まっていたものの、不注意であったことは否めない。
嘆息したのは、自身の不甲斐なさ故だ。
傷口を舐めあげながら思案する。
「傭兵にでもなるか」
アルメ=イディオの事が頭に浮かぶ。実力こそ高いが、その本質は外道働きそのもの。獅子とは程遠い、死肉漁りの禿げ鷲が関の山だ。
あれは御免だ、そう漏らすと彼は立ち上がる。腰には長剣と刀が差してあった。手入れは済んでいる。行動指針が固まった今、此処に留まる理由はなかった。
「隣町に傭兵の集まりがあったな。移動するとしよう。あの、そこの君。傭兵の詰め所に案内してくれないか?」
シガールは道行く少女に話し掛けるが、傭兵という単語を耳にするなり、彼女は問い掛けを流して去っていった。
制止の声を掛けるが、振り向きもしない。数回呼び掛けたところで、彼は諦めることにした。
何故ならば、人目を引いていたからだ。その上、状況が状況である。下手に勘繰られた挙げ句、騎士の厄介になるのは避けたかった。
そもそも、傭兵というものの評判は芳しくない。荒くれ、無法者と悪評が付いて回るのが常だ。いい顔をしないのも当然だろう。特にそれが女性なら尚のことだ。
自堕落と粗野、獣欲をまぜこぜにした人物が服を着て歩いているという批判も聞いたことがある。もっとも、ソレイユのような人物が希少だっただけなのかも知れない。
この辺りで聞き込みをすることは厳しいだろう。そう判断したシガールは、地道に探す方法選ぶより他にない。肩を落とすのも億劫だった。
「……ああ、先が思いやられる」
自分でも短めの文章は手抜きに見えるんですよね(;^ω^)
描写魔の悲しき性ですね……。
一応、会話より動きや設定やらが多い……はずです。
勿論、戦闘はスタイリッシュを目指しますとも、ええ。