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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
二章 異国之剣客
43/120

赤雷の傷 壱

話を短くするのが得意なフレンズなんだね(笑)‼

ぶっちゃけ、繋げて書くとややこしいのでこうしました。

反省はしていない、寧ろ清々しい気分がする。


(──などと、如月恭二容疑者(25)はこのように供述しており、精神鑑定を行うなど、警察が慎重に捜査を行う予定です)

 「令月(れいげつ)──お前は、他国に出奔(しゅっぽん)するがいい。儂は儂の始末を付ける。西方の大陸ならば、この国の者も迂闊(うかつ)に手を出せぬだろう」


 風が唸り、紅蓮の炎と黒煙が天上を焦がす。

 燃え盛る城下の町を()め付けながら、男は背中越しに、まだ年若い青年へ声をかける。角ばった顔付きに(まげ)()った髪型は、古風な武人を想起させた。闇色の袴と着物の組み合わせが実にそれらしい。

 あまりに厳めしい外見から、子供たちからは《鬼神(きしん)》と呼ばれている。もっとも、真に鬼神の如き強さではある。

 町が戦火に巻き込まれる──そんな状況を作り出したのが、他ならぬ彼なのだから。


 「父上、俺は貴方を置いては行けませぬ。どうか、俺も一緒に戦わせて下さい!」


 「──ならぬ‼」


 即答であった。

 それでも令月──後の赤雷は──必死に食い下がる。

 戦う理由は、父の子だからだとか、役に立てるはずだだのと稚拙なものだ。そして、死ぬときは一緒だと告げるなり師である爪紅蘭月は、令月の胸倉を掴みあげた。般若のような凄まじい形相が接近し、彼は僅かに息を飲む。ここまで父親の顔を間近で見たことがなかったのだ。


 「()いか、二度目はない。お前は逃げろ……これは師としてではない。父親として命ずる──逃げろ、令月」


 尚も思案の様相を見せる令月。

 束の間の沈黙が流れる。彼は、得物の柄で殴られやしないかと思った。逆らったとき、大抵はそれで片が付くからだ。

 反射的に縮こまる身体。気が付けば、親の言葉を待つ格好となっている。


 「……一八年」


 「は?」


 訳の分からない単語に、思わず声を漏らす。


 「あれが死んでから、もうそんなになるか。覚えておるか、お前は三日三晩母親の(むくろ)にすがって泣いておった。……あの時は困った。どうしたら良いのか、儂にはまるで分からなかった」


 それから聞かされたことは、彼も覚えている内容だった。

 まだ悲しみの晴れぬ内より剣の柄を握らされ、泣けば頬を(はた)かれた辛い修練の記憶である。

 だが、そんなある日に国の上層部から認められ、蘭月は将として取り立てられる話が出たという。丁度、彼の態度が変わった頃だ。

 勿論、問題もあった。蘭竜胆という男が酒場で乱痴気騒ぎを引き起こし、相手の片腕を切断したという件だ。力に酔った節がある彼は、元々門弟(もんてい)の間でも評判は芳しくない。よって、蘭竜胆を破門し追放するという処分に至るのだった。


 大問題ではあったが、それを勘定に入れて尚破格の待遇だ。剣術の師範としての(はく)が付くため、彼は当初こそ歓喜していた。

 だが、蘭月は次第に喜びが疑念へと移り変わる事となる。請け負うものは、ほとんど汚れ仕事だったからだ。その理由は様々だった。危険思想を持っている、反骨の相ありなどとして人を斬ることを強要されたという。半ば脅しじみたことを(ほの)めかし、門弟の命をも危険に晒しかねないということで、逆らうに逆らえなかったらしい。

 そしてある時、疑念が確信に変わる。

 いつものように誅殺を終えて報告に向かった蘭月は、大臣らの密談を目にした。

 内容は、彼の心を打ち砕くに(かた)くない。

 今まで蘭月が手を下した人間は、国に毅然(きぜん)として立ち向かい、公平な扱いを求めるような者たちである。けして理不尽に殺されていい人間ではなかったのだ。

 話題にあがっていたのは、口封じの計画と、蘭月を嘲笑するものの二つであった。

 弱き者の為にこそ剣を取る。それが彼の目的であり、ひいては流派の教えであったはずだ。それがいつの間にか我欲に走り、人の命を(かろ)んじた。看板に泥を塗ったのだ、そう自嘲気味に話す蘭月は酷く憔悴(しょうすい)しているようですらある。


 「我ながら、実に愚かしい。仕官という甘い蜜にまんまと誘き寄せられ、挙げ句に利用されたのだからな。後はお前も知っての通りよ……水面下で仲間や同士をかき集め、今に至る。手前の始末は手前でしろ──お前にも教えたことだったが。皮肉よな」


 赤雷は何も言えない──否、言えなかった。

 これ以上踏み込めば、それは彼の顔に泥を塗ることであり、覚悟を嘲笑うことにもなる。

 だが、父親にむざと死なれては目覚めが悪いことこの上ない。

 口にすればまず間違いなく決意を鈍らせるだろう。それが致命打に繋りかねないことは、彼も重々承知の上だからである。


 「ではな、赤雷。儂は行くぞ」


 「……ち、父上‼」


 踵を返し、遠ざかる蘭月に赤雷は思い切って声を出した。ゆっくりと振り返る父親に、しかし掛ける言葉は見付けられない。ただ引き止めたいが為、その一心の行動だ。


 「どうした?」


 問い掛ける言葉、そこに昔の険悪な空気はなく穏やかな気持ちだけが伝わる。やはり何と声を掛けて良いかが分からなかった。


 「御武運を……」


 「ははは! なに、これさえ終われば儂もこの国に未練などない。皆で静かに暮らそうではないか。その時は、身内として話をせねばな」


 再度、戦火に向けて蘭月は駆け出した──さらば、その一言だけを置き去りにして。

 父親が消えたことを確認するに至り、令月はぽつりと漏らした。


 「行かないでくれ……師匠」


 心の臓を患った覚えはない。寧ろ、まったくの健康体が自慢だ。だというのに、何故か──何故か、胸が(きし)んだ。

弐に続きます。

あ、ネタは入ってません(笑)

相変わらずの中身です。

本家どりは、ネタが好きな巧い人にお任せします(笑)

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