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授業の前に、一枚のプリントが配られた。
プリントにはいくつかのグラフが書かれている。
たった数ヶ月で国の借金は右肩上がり。人口、会社……とくに洗剤や石けん業者は、細菌目視液を接種した月から急激に減少していた。
「グラフを見てわかるように、人々が多く自殺し、経済は崩れていった。いくつもの国がなくなったんだ。ここで映像を見てもらいたい」
スクリーンに映像が映し出される。そこにはたくさんのお墓が並び、まばらに参拝している人がいた。
その参拝している人たちは防護服に包まれ、普通の服装をしている人は片手で数えられるほどだ。
「たった半年で人口は半分以下となった。」
教師のその声で、画面が変わる。
どこかの会見場所のようで、数人の憔悴しきった男性たちが頭を下げている。
彼らに罵声を浴びせる人たち。
「殺菌できてないじゃない!」「賠償金を払いなさいよ!」ヒステリックに叫び続ける消費者に、ただただ社員の男性たちは頭を下げていた。
ただでさえ息苦しくなるこの映像。
画面が変われば、それはさらに酷くなった。
教育に悪いからなのだろうか、骨のように細い足だけ映っている、数々の死体。そのすべてが薄汚れていて、風呂どころか、満足にシャワーを浴びることが出来なかったことが伺える。
もしかしたら、家も無かったかも知れない。そんな彼らの服は、希望者に支給されたという防護服ではない。
細菌目視に発狂して自殺した人たちではなく、全く気にせずに生活していた人たちも、家計が圧迫されて餓死していったのだ。
「地獄絵図だ……」誰かが呟いた。
映像が終わってからも、数分は誰も身動き一つしなかった。恐ろしいものを見たと、顔を青白くさせて。
ようやく一人が立つと、それに合わせて早足にここから出ていく。
少女も、こんな恐ろしい映像が流れるここから、早く立ち去りたかった。それでも少女にはこれからの自分の人生がかかっている。
「先生、クリーンルームの件、どうなりました?」
自分も将来はあの映像のようになりそうで、少女は早口で教師に問う。
「資金がなくてな、どうも上手くいっていないらしい」
その返答に少女は落胆の意を見せたが、ハッとすると「ということは、案は通ったんですね!」と笑顔を見せた。
頷く教師に、少女は歓喜の声をあげた。
ここ数ヶ月は嬉しいことが続く。と、食べ物で重くなったお腹を支えて少女はベッドの上で転がった。
今まで見るのも嫌だった細菌も、少しは平気になってきた。
両親のように細菌を気にせず、豚のように食べるのにはまだ抵抗はあるが、目隠しをせずに食べられるようになっただけ、今までよりはずっとマシだ。
きっと、クリーンルームで生活できるようになれば、今までできなかったもっとたくさんのことが出来るようになるに違いない。
堪えきれずに笑みをこぼしてから、不安になった。いったい作り始めるのはいつ頃だろうか。しかも、完成には何年もかかる。それまで自分は生きているだろうか?
「なんで資金がないんだろう……。借金してでも作ればいいのに……」
その悲しみと怒りを枕にぶつけ、少女はベッドに寝ころんだ。