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謎の美少女に抱きつかれました

「私は貴方みたいな男の子に出会うために生まれてきました!まさに運命の出逢い!」


嬉しそうな笑顔で美少女に抱きつかれる。

男だったら間違いなく歓喜する出来事だろう。人生の絶頂期かもしれない。俺もそう思ってたよ。

この柔らかい身体を押し付けてくる相手が、普通の美少女(まず美少女に普通とつけること自体おかしいが、それは流してほしい)だったらそうだったのかもしれない。

最初はもちろんドキっとした。そう、最初は……。


花篭葵はなかごあおいだなんて、珍しい名前の先輩がいると聞きつけてきて正解でした!なんという平均的な身長、覇気のない目、不機嫌そうな口、素晴らしい名前負けです。まさに日常系ラノベ主人公にふさわしいのではないでしょうか。こんなに三次元で有望な人材が得られたのは初めてです。感激です!」


褒めてるのか貶されてるのか…いや、間違いなく貶す言葉ばかり吐きながら目を輝かせて見上げてくる女の子。見た目が艶やかな黒髪とパッチリした目の和風美少女なだけ、出てくる言葉が残念すぎる。


「あ、世話焼きな幼馴染の女の子とか、いつも偉そうな美女担任教師とか既にいたりしませんか?でもでも、最終的には私をメインヒロインに」

「ストーップ!!!」

「!?」


抱きついたまま訳のわからない言葉を話し続けていた女の子は、俺の声で驚いたように停止した。これ幸いと抱きついていた女の子を引きはがして距離をとる。

正直、怖かった……。


「あ……失礼致しました。ついテンションが上がってしまいました。ごめんなさい」

「い、いや」


我に返ったのか、すぐに笑顔から真面目な表情になり深々と頭を下げられる。


「私は、一年生の田中和子たなかかずこと申します。本当に申し訳ありませんでした。初対面の男の人に抱きついてしまうとは私ったらなんてことを……」


顔を青ざめさせて謝られる。うん、これは良心が痛む。

謎のマシンガントークは怖かったけれど、女の子から抱きつかれるなんて初めての経験に胸を高鳴らせたのもまた事実。そして、その感触に女の子って柔らかいんだなぁと思ってしまったこともあり、あんまり殊勝にされると可哀想になってきてしまう。


「そ、そんなに頭下げなくても」

「いえ、失礼なことも申し上げてしまいましたし、花籠さんを傷つけてしまった私は重罪です。貴方様を傷物にしてしまった責任はとらせて頂きます。どうぞなんなりとご処分を。俺だけのメイドになれでもペットになれでも肉奴隷になれでも私は全うさせて頂く所存です」

「選択肢にまともなのがないよ!あと、肉奴隷とか女の子が言っちゃダメだ!」

「ナイスツッコミです。さすが私の見出したラノベ主人公」


最初の笑顔はどこに行ったのか女の子は終始真顔のままだ。つまり、さっきの処分についての部分もナイスツッコミと言った時も表情は無に近い。なんだろう、このシュールな子。


「では……か、彼女ではどうでしょうか?」

「……へ?」

「つ、つまり貴方に一目惚れしたということです!」


少しだけ恥ずかしそうに頬を赤らめた女の子、いや田中さんはとても可愛かった。

あんなに貶されたのに、一目惚れとは、と思ったけれど田中さんの目はあくまで真剣だ。嘘や冗談を言っているようには見えない。これは返事をしなくちゃいけないんだろうな。


「お、お友達からでよければ」

「はい!」


嬉しそうに返事をした田中さんは、キラキラした満面の笑顔だった。

思わず友達からなんて言葉が出てきてしまったのは、笑顔の田中さんがもう一度見たかったからかもれない。

初めての女の子からの告白は、忘れられない想い出になりそうだ。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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