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帰省

約2ヶ月ほどの休載となりました。お待たせして申し訳ありませんでした。これからはなんとか完結まで休まずにいきたいと思っています。


簡単なここまでのあらすじです。


会社に就職した御庄麻友は総務、営業を経て、秘書課へ配属となりました。そこで将来の社長候補と言われる松井取締役の専属秘書となるのですが、社内恋愛はしないぞ、と決めている麻友に対して、次第に近づいてくる松井。とうとう二人は一緒に食事して、自宅で膝枕までしてしまうまで距離を近づけてしまう。今回の話は帰省です。1泊2日で実家に帰ろうとする麻友に松井は……。





「取締役、念のため言っておきますが、今週末は呼ばれても会社には出られませんので」


 いつもの会社の昼下がり。

 最近は定位置なった取締役室のデスクに座り、パソコンの画面を見続けながら麻友は上司に断りを入れた。

 土日は会社で定められた休みであり、麻友が会社に出る義務はもともとない。

 しかし、土日も接待ゴルフや会食を行っている松井にとって、そういった感覚は無いに等しいようで、最近は土日であろうとも麻友を呼びつけることが度々あったのだ。

 麻友も呼び出されるたびに律儀に対応していたのだが、今回はそうはいかない事情がある。


 松井の顔が上がり、整った顔から短い質問の言葉が出た。


「何があるんだ」


 まあ来るだろうな、と思っていた疑問に麻友は相変わらず画面を見ながら答える。


「プライベートを報告する義務はないはずですが」

「気にするな。で、何がある」

「……そこは取締役が気にして下さい」


 麻友は相変わらずの強引な上司に、思わず苦笑してしまった。


「なんだ、男か?」

「そんな人はいない、と以前に話したはずですが」

「ならば、話せるだろう」


 しょうがないと言わんばかりに、麻友はひとつ大きくため息をつく。

 まあ、もともと理由を言わずに通せるとは思っていなかった麻友は、顔を上げて松井に説明を始めた。


「定期的に実家に帰っているんです」


 嘘偽りのない報告。ここまで言う必要もなかっただろうし、この理由ならば松井も快く送り出してくれるだろうと、麻友は考えていた。

 しかし松井の動きは止まり、どこか思案をしている表情を始める。

 それをみて、麻友は嫌な予感がし始めていた。

 信じられないけど、まさか……。


「俺も一緒に……」

「お断りします」


 松井の言葉に重なりそうな麻友の返事に、松井の眉が上がる。


「何のためらいも無く断ったな」

「当たり前でしょう。どの世界に、部下の帰省に付き合う上司がいるんですか。確か、ゴルフがあったはずですが」

「キャンセルしておいてくれ。大事な用が入ったとでも言ってくれ」

「大事な用って……」


 麻友は思わず苦笑した。

 まだ付き合うことにもなっていなければ、告白もしていない間柄のはずではなかったのか。


「付き合うかどうか決めるために、実家を見ておくのは大切だ」

「私の思いや意見はどのあたりに組み入れていただけるのでしょうか」


 松井の言葉に、思わず麻友は問いかけずにはいられなかった。なにしろ、あなたのことは別に好きでもなんでもない、とはっきりと伝えたはずなのだから。


「ついていくことを断ることは了解した。では、黙ってついて行くことにしよう」

「…………ストーカーですか。やめて下さい」

「じゃあ、ついて行かせろ」


 どうやら、了解してついて行くか、黙ってついて行くかの二択らしい。

 麻友は本気で大きなため息をついた。


「楽しくないですよ」

「旅行じゃない。お前のことをもっと知りたいんだ」


 麻友は松井の瞳をじっと見つめた。

 その視線はとても真面目で、曲がることのない意思を感じる。仕事の真面目さをそのままこんなところまで持ち込まなくても、と麻友は心の中で愚痴ってみるが、どうやらここは麻友が折れるしかないらしい。


「では、どうぞご自由に。お構いはできませんが」

「有り難う。何時にどこに行けばいい」

「土曜日の午前10時に東京駅の新幹線改札口に」

「了解した」


 ようやく出た松井の笑顔につられて、麻友もしょうがないなと思いつつ、笑顔で応えた。




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