キメ台詞はポンコツの前に
「さて……問題はここからだな」
小さく呟いて、視線を戻す。
スキル欄。
さっきまでと同じ画面のはずなのに、見え方が違う。
三つしか取れない。
その三つで、全部が決まる。
「……いや、重」
思わず漏れる。
軽い気持ちで選べる数じゃない。
カーソルを動かす。
スキル一覧に戻り、[武技スキル]と[魔法スキル]を見ていく。
[武技スキル]。
「……なんもないんだけど」
開く。
空白。
本当に、何もない。
「いや、まあ……確かに武術とか経験ないけどさ」
ちょっとだけ納得してしまうのが悔しい。
「リアルスキル参照とか、さすがにないよな……?」
一瞬だけ考える。
だとしたら、[強化スキル]であの3つのスキルが出てくることはないか。
出てくるとしたら、堕落スキルやコミュ障スキルがでる。
次に、[魔法スキル]を開く。
|・[魔法スキル]
|[火魔法] SP2, [水魔法] SP2, [風魔法] SP2, [土魔法] SP2,
「リアルスキルが載るっていう仮説はなくなったか。よかった~……。リアルスキルが載るなら、魔法を使えるわけないもんな。」
「それにしても、……いや、でも高くない?」
SP2。
今の所持ポイントは——
「……3か」
表示を見て、眉が寄る。
現状、スキルポイントは3つしかなく、魔法を取れば、スキルをセットできるのは、2つ。
つまり、スキル2つ分しか、ステータスを増やせないっていうことになる。
というか——
「どんなプレイヤーでも、似たような構成になるんじゃないか?」
ステータスは全員同じ。
スキルも少ない。
差がつきにくい。
ふと、さっきのレビューがよぎる。
“ステータスが最悪”
「……こういうことか」
納得する。
上げたくても、上げられない。
自由度があるようで、かなり縛られている。
これは推測でしかないが、どんなプレイヤーもステータスが固定ってことになる。
スキルが2つしかない無いプレイヤーと、スキルが3つあるプレイヤーでは、ステータスに開きがある。
ゲームが始まってまだ、2日、どんだけやり込もうとも、初心者プレイヤー。
だが、
「初日で、スキル2つ。もし、そんな奴がウロチョロしていたら…………。」
嫌な想像が浮かぶ。
「これ、序盤から襲われたりする?…………」
スキルが2つ。
ステータスも微増。
こんなプレイヤーなんて、プレイヤーキラーの格好の餌でしかない。
「いやいやいや、ないだろ」
すぐに否定する。
「そんな、いきなりプレイヤーキラーとか……」
一瞬、間。
「……ないよな?」
成大にフラグを建築した気がしないでもないが、……忘れよう。
「おし!決めた。……強化スキルの3つで始める。」
スキルを取得した瞬間、視界の端に淡い光が弾けた。
遅れて、半透明のウィンドウが静かに展開する。
追加されたスキル名を一瞥し、指先で軽く弾く。
スキルセットの画面には、スキルを設置するためのスロットがある。
スロット画面の空いている枠へ、迷いなくスキルをドラッグしてセットした。
ステータス一覧を確認すると。数値が、変わっている。
|STR(筋力):30(+20)
|VIT(耐久):10
|DEX(器用):20(+10)
|INT(知力):10
|MND(精神):10
予想通りというか、文字通りと言えばいいか。
ステータスが上昇した。
「まあ、……たとえ、推測が当たっていたとしても、ステータスの上昇がプレイ環境に影響を及ぼすか、定かじゃない。」
ステータス画面を閉じて、肩を軽く回す。
数字は上がった。
だが、それがどこまで意味を持つのかは未知数だ。
「……いや、ステータス関係ないゲームなんて、パズルゲーぐらいしか思い当たらないけども。……当たって砕けろか。」
そういいながら、ステータスを確認した後、プレイヤーネームの設定に移行する。
|プレイヤーネームを決めてください。
「ハイハイ。わかってるよ。」
とは、言うが、ここでも迷う。
「塩梅から取った、ウメシオくんに、青菜に塩から取った、アナシオくん。……あと、何があるかな……。」
プレイヤーネームは、人によっては統一している人もいれば、ゲームごとに別の名前にしている人もいる。また、語呂だけを統一してる、ハイブリットな俺みたいな人もいる。
俺の場合は、名前に(しお)が付いているため、(しお)がつく単語か、ことわざを名前にしているケースが多い。
「よし!……傷口に塩を塗るを略して、キクシオ。と……。」
プレイヤーネームを確認して、ゲームを始める。
その瞬間、体が吸い込まれるような感覚がする。足元が消えるような感覚。落ちる、というより。
吸い込まれる。アバターに入った時とは違う感覚。
「っ……」
視界も光に包まれていく。世界が自身を引き寄せている。
「ゲームの評価を見れば、賛否両論……。」
誰に聞かせるでもなく。
ぼそりと呟く。
「ステータスは初めから、上限があり、スキル数も固定……。」
現状、マイナスしか存在していない。
光が強くなる。
境界が消える。
「だが……。」
ほんの少しだけ、口元が緩む。
「それを吹っ飛ばすくらいのポテンシャルは、…………あるんだろ。」
世界に語りかけるように、独り言をつぶやく。
全身が眩しく光っているの見て、思い出す。
「……あれ?」
一瞬、思考が止まる。
「…………俺?……キャラメイクしたっけ!?」
次の瞬間。
嫌な予感が、現実になる。
光が吸い込まれているのか、下へ、下へ、と伸びていく。
「まっって!!」
光の中、自分の髪が視界に入る。
「お願い!!、止まって!!!」
鮮やかすぎる色。
混ざりすぎてる色。
「頭が虹色なんですけどぉぉぉ!」
懇願するが虚しくも聞き入れる様子はない。光は、そのまま下へ引きずり込む。
「頭を虹色にしたら、中身が空っぽになりました。とか、やかましいわ!!」
「ていうか顔!!顔そのままなんですけど!!」
「これ完全に俺じゃん!!」
「やりなおさせてぇぇぇ!!」
叫びは、光に飲まれる。
届かない。
止まらない。
無情にも、世界が切り替わる。




