傾国の乱戦
基礎ステータスを、HPに割り振る。
ほんの僅かでもいい。
少しでも体力に割り振らなきゃ、
転んだだけで死ぬ。流石にそれは、避けたい。
「……さて」
浅く、短く呼吸を繰り返す。
戦闘の余熱で荒れた息を整えながら、周囲に散らばるドロップ品を拾っていく。
足元に転がるそれを拾い上げ、視線を落とした。
ええと………何が落ちたかな?
「ん?…………血清?」
眉をひそめながら、詳細を開く。
|チャージホグの血清
|
|このアイテムを使用時、状態異常を回復する。
「……血清ってあれか?」
頭の中で、ぼんやりとした知識を引っ張り出す。
病気の抗体をもった医者が患者にも抗体を待たせるために使ったっていう。
「え?…………飲むの?打つの?これを?」
__汚ねぇ。使いたくないんだが。
まあ、いいや。使わなきゃいい。インベントリにアイテムを入れる。
次は、新スキルの確認。
|[武技スキル] [魔法スキル] [強化スキル]new
newのある[強化スキル]を選択。
|・[強化スキル](SP;4)
|
|[突進] SP2, [投擲] SP2
ん?…………。[突進]がある。
相手のしていたスキルも使用できるのか。スキルの幅がどんどん増えていく。
出来ることが増えるのはどんなことでもうれしいもんだ。
詳細を確認する。
|[突進] SP2,
|スキル使用中、自身のVIT(耐久)を低下させ、
|障害物無視の突進を行う。
|
|ステータス上昇値
|STR(筋力):5、VIT(耐久):5
うん。やっぱりだ。VIT(耐久)を低下させると書かれている。
タイミングさえ、掴むことができれば、[バカぢから]でぶん殴っても倒せたな。
“耐久低下”
つまり当たれば終わり。
「リターンはデカいが、リスクもデカい」
だが、悪くない。
むしろ、このゲームらしい。
|[投擲] SP2,
|スキル使用中、投げたものを狙った場所に命中させる。
|
|ステータス上昇値
|DEX(器用):5、INT(知力):5
武器を投げたときに発現したのかな。覚えること自体は簡単だが、取得にはポイントが必要。まだ、見極めたいとこなんだが、気づいたことがある。
[バカぢから]は使いずらいことに。
今のところ全戦闘に引っ張りだこな[バカぢから]だが、スキル使用でスタミナ全消費はキツイ。
連発不可。外せば、終わり。
「……頼り切るには、危険すぎる」
選択肢は、三択。
武技、魔法、強化のスキル群だ。今のところスキル一覧は全部、攻撃的なスキルしかない。
「おし、これにするか。」
__たぶん、これから必要になってくる。
スキルを取得したと同時、
前を向けば、
渓谷が広がっていた。
森を抜けた。
跳ばなくても目的地が見える距離まできた。
だが、見なくてもわかる。
渓谷には大量のモンスターがいることに。
深く、広く、そして。
蠢いている。
「……多すぎだろ」
呟きが漏れる。
そこにいるのは、モンスターの群れ。
一体や二体じゃない。
数十、いや、百近い。
「さて、………どうしたもんか。あんな量一々相手にしてられないからな。」
どう動く?
正面突破は論外。回避ルートは?
思考を巡らせ、考えあぐねているとき、
…………ゾワッ。
背筋を撫でるような違和感。
視線を、ゆっくりと森の奥へ向ける。
森の奥から、不穏な気配がした。
渓谷の反対側、自分のいる方とは逆の森。
そこから、
「「ギャッギャッ!」」
「「ギィィ!」」
「「グギャァ!」」
「「キキキキッ!」」
「「ギョエェ!」」
大量のゴブリンが湧き出てきた。
数えるのも馬鹿らしくなるほどの数が。
その中で、ひと際大きいゴブリンが、前に出る。
「ギャギ、グギャギャギャギャギャ!!!!」
咆哮。合図を送る。
その瞬間。
「「「ギャアアアア!!!」」」
津波のように、ゴブリンが雪崩れ込んだ。渓谷へ。
乱戦。
誰が見方で誰が敵か、わからなくなる。
そんな、地獄みたいな場所が今、目の前で繰り広げられている。
「これは…………。」
目を細める。
__チャンスかも。
渓谷のモンスターはゴブリンの集団に襲われている。
今応対してるのは少ないが、ゴブリンの数が増えればそれも増す。
厄介な渓谷のモンスターがゴブリンに気づけば、
塔までの道が開ける。
がんばれーと小さな声で、ゴブリンを応援していると、
塔周辺の密度が、明らかに薄くなっていく。
厄介なやつらがゴブリンに行く、
塔の周りにいる奴らの数が少なくなる。
「もう、そろそろか。」
先程、取得したスキルをセットする。
インベントリから、武器を取り出す。手の中に収まる感触。
「さあ………行こうか。」
右手に握られているのは
”杖”。
レベルは3~5に上がりました。
スキル詳細にデメリットが書かれているのは、ミスじゃないですよ。




