圧倒
「とりあえず、グラビティの魔法です。」
ポチャリーニが左手をエーに向けた。
エーの足下に魔法陣が浮かび上がる。
「ぐっ。」
エーは突然、プルプルと足を震わせる。額に血管を浮かび上げた。
「すばらしい。さすが、筋肉教団と言ったところでしょうか。」
「どうなってやがる!?体が、重すぎる!」
「これはグラビィティの魔法です。あなたにかかる重力だけが強くなっています。常人であればこれで圧死していてもおかしくないのですよ。」
「そんな魔法が!?聞いたことないぞ!」
「まあ、古代に失われた魔法でございますから。ご存じないのは致し方ないでしょう。それでは、早速で申し訳ございませんが、クライマックスです。」
ポチャリーニはニヤリとわらい、剣を抜いた。
剣を構えながら、ゆっくりと、エーの前まで近づいてゆく。そして立ち止まった。
「さて、今から切ります。降参するなら今ですよ。」
ポチャリーニは話しながら、剣を振りかぶった。
(くそっ、このままじゃ...!ま、いいか。)
焦る表情を見せたエーだったが、その一瞬で焦りは消え、冷静さを取り戻した。
「降参はしねえさ。切ってみろよ。だがな、俺が死んでも神様がいる。おまえら、今日で終わりだよ。なぜ神様を呼んだかは分からねえが、ナメすぎだ。ヒヨワーイ党の悪政も、今日で終わりだな。」
ぴくり、とポチャリーニの眉が動いた。
ポチャリーニは剣を降ろす。
「……今、何と言いましたか? ヒヨワーイ党の悪政? 今日で終わり?」
ポチャリーニの眉が、ぴくりと跳ねた。振りかぶっていた剣をゆっくりと下ろす。その目は笑っていない。
「そうだよ。お前ら、好き勝手やり過ぎなんだよ。自分のために税を集め、自分のために税を使う。そんなもん、いつまでも続くわけねーだろ。この大会だって、一体いくら注ぎ込んだんだ? 誰に、どんな得があるってんだ!」
「ふざけるなッ! 我々は日々、国益のために活動しているのだ! この大会だってそうだ……これは、あなたたち筋肉教を潰すための、いわば『構造改革』! 筋肉教を排除し、国の秩序を取り戻す。……これは、国益をかけた戦いなんだ。なめられて、たまるかッ!!」
ポチャリーニが額に青筋を立てて絶叫した。
「国益」という名の自己正当化。その怒りに呼応するように、エーにのしかかる重力魔法がさらに一段、出力を上げた。
「おいおい……そんなの、誰が求めたっていうんだよ」
重圧でミシミシと骨が鳴る。動けないエーは、逆上して再び剣を振りかぶるポチャリーニの動きを、ただ見つめることしかできなかった。




