グレンvsヒヨワーイ党幹部
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「なぜ止められる? お前は魔法を使えなかっただろう……っ!」
ヒョロノリの手に違和感が残る。先制してグレンを殺すつもりで切りかかったはずが、結果は完全な鍔迫り合い。押し込まれているのは、自分の方だ。
「私も『筋肉教』で鍛えていましたからね。これくらいは当然です」
二人は一旦退いた。グレンは息一つ乱していない。
「ふん。さすがに手の内は明かさんか。だが、次はどうかな?」
ヒョロノリがニヤリと笑う。その手に持つ剣に複雑な魔法陣が浮かび上がった。
「『雷電剣』! 小賢しい真似をしたようだが、次は受ければ感電するぞ?」
バチッ、バチチィッ!
ヒョロノリが剣を地面に近づけると、剣先から凶悪な紫電が走り、石畳を焦がした。誰の目にも明らかな殺傷能力を帯びた刃に、観客たちは総立ちとなって興奮した。
先ほど同様、ヒョロノリはグレンに肉薄する。
(10cmか...。)
グレンはヒョロノリの剣を大きくよける。
「グアッ。」
呻き声を上げたのはヒョロノリだった。
「バカな、なぜ初見で避けられる……っ!」
ヒョロノリの右ふくらはぎから鮮血が噴き出した。アキレス腱を正確に断たれた彼はバランスを崩し、無様にその場に崩れ落ちる。
その隙を見逃さず、グレンはヒョロノリの喉元へ、吸い込まれるような速さで剣の切っ先を突きつけた。
「そこまで」
一瞬の早業に、闘技場全体が爆発的な歓声に包まれる。
ヒョロノリには理解できなかった。
本来、あの距離なら剣そのものは避けられても、刀身から放たれる「放電」がグレンを貫くはずだったのだ。自分の剣が受けられるのを嫌ったヒョロノリの妙案――もしグレンの剣の柄が絶縁体だったとしても、回避した体そのものを焼く算段。
「……馬鹿はあなたです。なぜわざわざ放電を見せたのです? 私を避けさせるのが目的だったのでしょうが、おかげで放電の『有効射程』が把握できました」
「こ、降参だ……」
「勝者、グレン・マッカーサー!!」
「グレンさんすごいね! 圧勝だよ!」
観客席でバベルが興奮して声を上げる。レオは腕を組み、満足げに頷いた。
「ああ、さすがだ。見た目以上の筋力、というよりは『神経系』を極限まで鍛えた結果だろうね」
グレンは以前、レオがバベルに言った「バベルの、そのくらいの体型がちょうどいい」という言葉こっそり聞いていた。
レオがバベルに気があるのでは、と疑っているグレンはひそかに、バベルの体型に憧れていた。
筋肉が剣技に不可欠であると理解しつつも、レオに「筋肉ダルマ」だと思われたくない――そんな乙女心の葛藤に対し、レオが授けた助言が『RM値を極限まで高めるトレーニング』だった。
「よく分からないけど、グレンさん、頑張ったんだね!」
「ああ、近くにこんなにがんばる人がいるなんて、俺は誇らしいよ。」




