古代魔法
「そうです!その人の足より太い腕!広い背中!分厚い腹筋!私の仮説が正しければそれぞれ別の魔法が発動するはずです!」
「おお!それで、どうやって吸い込む部位を変えればいいですか?」
「練習は簡単です。まず、いつも通り魔法を発動してください。」
「こうですか?」
レオは魔法を使ってとりあえず宙に浮いた。
「それでは一度、胸元を確認してみてください。」
自分の周りのを漂っていた魔力が大胸筋に向かって吸い込まれているのが分かる。
「その吸い込み口を少しずつ動かしていくイメージです。お腹を通って太腿までずらしてみてください。」
レオは意識を集中する。意識してみると確かに胸に不思議な感覚がある。不思議な感覚を動かすイメージをすると吸い込み口がイメージ通り動いていく。
吸い込み口が胸から腹へと移動しきったそのとき、宙に浮いていたレオは地面へと降り立ち、目の前が凍った。
ブレイはそれをみて興奮する。
「早速、氷結魔法が!これは古代魔法ですよ!」
レオは続ける。意識を太腿までもってきたそのとき、手から雷が放たれたのだった。
レオは自分の手をみて呆けている。
そして涙が頬を伝う。
「お、俺、雷打てた。」
異世界転生して、魔力の存在を知ったレオは、自分もアニメみたいに炎や雷を操ってみたいと思っていた。しかし、実際にに使えたのは力の制御、便利ではあるものの、地味だったので、当時レオは結構がっかりしていたのだった。
一度あきらめた夢が叶ったレオは感動で震えていた。
そして、ブレイもまた、失われた古代魔法、氷結を目の当たりにして感動している。
「腕や背中も試してみてください!」
***
「今回の結果で、前腕が回復、上腕は重力、僧坊筋と広背筋は錬金魔法、三角筋が空間魔法、腹直筋、腹斜筋が氷結魔法だったことが新たに分かりました。どれも古の時代に失われた魔法です。」
「背中とお腹は筋肉で魔法が分かれませんでしたね。でもこれはすごいことですよ!とんでもない発見です!」
二人は手を取り合ってはしゃいでいた。
「本当です!神様さえよければ、この結果を公表したいのですが。」
「もちろんです!僕もたった今、それをお願いしようとしていたんです。」
魔法を使うために、筋肉のサイズが重要という事実が広まれば、筋トレがより普及するに違いない。そう踏んだレオからしてみれば、ブレイからの申し出を断る理由はない。
「ありがとうございます。ただ、闘技大会に出るので、公表はその後ですね。」
「え、ブレイさんも出るんですか!?」
「ええ、この手でガリスト倒す、またとない機会ですからね。そうだ、僕に筋トレを教えていただけませんか?僕も古代魔法を使いたいんです。どうしても奴に勝ちたいんです。お願いします。」
レオはそれを聞いて微妙な顔をした。筋トレを教えるのはやぶさかではない。しかし、大会まであと2ヶ月。フィルターとして機能するほどの筋肉量になるのだろうか。
どれほどのサイズで機能するのかもわからないまま安請け合いしていいのだろうか。
「やはり、だめでしょうか。神様相手に軽々しい申し出でした。どうか忘れてください。」
ブレイがしゅんとして立ち去ろうとする。
レオは、ブレイが悲しそうな顔をしたのをみて何だか放っておけないような気がした。
「いや、待ってください!そうじゃないんです!」
この一瞬レオにひらめきが走る。
レオはブレイの肩をガシッとつかんだ。




