実践
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「握りはOKです。順手も逆手も、バッチリです。次に戦術的な話になります。剣の戦いは攻撃と防御があります。しかし、ショートソードは刀身が短い分、防御には不向きと言えるでしょう。」
「たしかに短いし、振られた剣を受けるのは難しそうですね。」
「そうです。そのため、ショートソード使いは一対一の戦闘の場合、敵の斬撃を交わしつつ、隙をついて急所をねらう場面が多くなります。」
「なるほどなるほど。」
レオはグレンの話を素直に聞いている。
「そこで、相手がどの様に攻撃してくるか、ある程度パターンを覚える必要があります。まず、対ロングソードですが、どのような攻撃を仕掛けてくると思いますか。」
「うーん、イメージ的には、剣を振り下ろすような動き...ですかね。」
「そのイメージは合っています。しかし、それはロングソード対ロングソードの戦いで多く見られる光景です。対ショートソードには横薙ぎの斬撃が多くなります。ロングソード同士の場合、剣の振り下ろしは、敵の攻撃に対して防御にもなるため、攻防一体の動作となります。しかしショートソード相手の場合は、打ち合いの警戒は必要なく...。」
グレンの剣術指南が続く。
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「それでは、一度、木刀を使って実践しましょうか。」
「はい!お願いします!」
「はじめ!」
グレンは叫ぶと同時に、レオとの間合いを詰める。
レオの刃は届かない。しかし、グレンはちょうど一歩でレオに刃が届く間合いだ。
グレンは構えたまま動かない。
痺れを切らしたレオが、グレンの懐に入ろうと足を踏み出したそのとき、踏み込んだ足めがけて木刀を薙いだ。
「ここです!注意してください!」
ショートソードはあくまでカウンター狙い。それをレオに体で覚えてもらうため、心を鬼にして放った一刀であった。
しかし、木刀がレオの足に当たると同時に、グレンの手に強い衝撃が走る。
耐えきれず手を離してしまった。
「なっ!?」
激しい衝撃で手が痙攣し、その痛みから、グレンは膝をついた。
「大丈夫ですか!?」
レオはグレンを心配して駆け寄った。
(なんだ、今のは。ただ固いものを打った衝撃ではない。放った攻撃の2倍近い衝撃だ。)
「すみません、筋トレの時以外、魔法を使って体に受ける力は反対側に跳ね返すようにしているんです。忘れていました。」
「そ、そんなことができるのですか?」
「ええ、まあ。魔力を力に変換できるタイプの魔法使いなので。グレンさんにお見せするのは初めてですね。いつもは筋トレでドロップセット法の為に使っているんですよ。」
ドロップセット法に使っていることは正直どうでもよかったが、グレンにとって剣の革命が起こったような出来事であった。
「レオ殿、私は貴殿に剣を指南することはできません。明らかに、私の腕を大きく上回っています。」
グレンは少し悔しそうにレオに告げた。
「ええ!?そんな!?」
「レオ殿の力であれば、我々が使用するような剣術はむしろ邪魔になります。レオ殿の道を私は応援します。...ッ!」
グレンは目に涙を浮かべて走り去っていったのだった。レオはなにもできず見送った。
「すごい魔法ですね。」
突然、知らない男がレオに声をかけた。




