始動
ーーロイスン村付近の森ーー
「暴れるんじゃねえ!奴隷がよ!」
夜のメンバーの一人、エーは苛立っていた。
(チィッ!無茶苦茶な命令出しやがって!)
リーダーのダンブルが発した一人10人のノルマはあまりにも非現実的なものだった。
魔力は確かに回収できるが、保存はできない。袋に入れても数時間で消滅してしまう。そのため、生きたままさらわなければならないのは分かる。しかし、いかんせん、こんな辺境に1万人もいるはずがないのだ。
(まあ、リーダーがどういうつもりなのかわからねえが、ここで貢献すれば革命後にはそれなりの地位が与えられるはずだ。ほかの奴らより先に、たくさんさらっちまわねえと!)
近くの村の奴隷をさらってきたエーはとにかくすぐにアジトに戻りたかった。
近くの村で早速人をさらうことができたものの、早く戻って次を探さなければ、1ヶ月には間に合わない。
エーがこんな無茶ぶりを素直に聞く理由は、リーダーの、錬金術師としての腕が本物であるからだ。
錬金術の知識もさることながら、魔力量は驚異の30cm、この世界では、偏差値90レベルの魔力量を誇っている。
この男が言うからには何とかなるのだろう。
無茶振りされながらも、エーは何となく、この作戦がうまくいく、そんな気がしていた。
エーがアジトに近づくと、声をかけられた。
「よお!エー!なにかかえてんだ?まさかもう一人さらってきたのか?」
話しかけてきたのはビーだった。
「ああ、早速見つけたぜ、一人で遊んでるガキをな。」
この世界で人を誘拐対象となるのは、子供だ。なぜならこの世界の住人に、大人を担ぐ筋力はない。剣術と魔法の研究は活発だが、筋肉に目を向けるものなど、過去に一人もいなかったのだ。
無事にさらった奴隷をアジトに放り込むことができたエーは、また奴隷を捜しにでかけるのだった。




