閃き
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(今なら完全に男の影になっている...ここだ...!)
プニオは店にでている肉料理に手を伸ばし、粉薬を振りかけた。
「それ、腐ってるので食べない方がいいですよ。」
ビクゥ!
毒をかけたその瞬間、突如後ろの男に声をかけられ、プニオは驚いた。
「おい!てめぇ!なにが腐ってるだと!ここは新鮮な肉しか置いてねえ!腐る訳ねえだろうが!見ろ!これのどこが腐ってるんだ!」
「いやあ、そんなこと言われましても...。」
確かに見た目は新鮮そのものだ。しかし、レオのスキル、「スキャン」では、明らかに菌の繁殖が確認されている。
驚くプニオをよそに、出した料理が腐っているといわれた店主がレオにキレる。
「確かに見た目はきれいだし、ほかの料理は全然大丈夫です。だが、これは腐ってるんです。捨ててください。なんなら、これは僕が買いとって捨てますよ。」
「いくらてめえが買ったところでなあ!俺が作った料理が捨てられて気持ちいい訳ねえだろ!」
なにやら揉めている様子のレオにグレンが近づいた。なぜかバベルがレオから離れたので、今なら近づいてもかまわないだろうと考えた。
「グ、グレン!」
近づいてきたグレンに気づいたプニオだったが、もう遅い。グレンもプニオに気づいてしまった。
「プニオ殿!」
(プニオ...?この男が?)
レオは店主にキレられながら、グレンの言葉に反応した。
「ああ、あなたがプニオ殿でしたか。グレンさんからお話は伺っています。今日は楽しんでいただけておりますか。」
「あ、ああ。」
(誰なんだこいつは、態度から察するに、教団関係者なのだろうが、敵意は感じられない。まあよい。それより、グレンものこのこ出てきおって、私の制裁を受ける覚悟は出来ているんだろうな...。)
プニオはグレンをギロリと睨みつける。
裏切ったグレンはプニオの視線を受けて目が泳ぐ。
「こちらは、筋肉教の神、レオ殿です。」
「か、神!?ではあなたがこの教団を?」
突飛な紹介に驚きつつも、この瞬間、プニオに電流が走った。
(神などと、ばかばかしい。だが、教団が、この男を絶対的な神と祭り上げているのであれば、回りくどいことをする必要はない。こいつさえ消してしまえば終わりではないか。)
教皇などの役職は、一人消しても次の後継者はいくらでも出てくる。しかし神は違う。代わりなどいない。
「いえ、この教団はダンブルという...さっき挨拶させていただいた男が...。」
「そうですか。そうですか。お会いできて光栄ですぞ。」
突然プニオの機嫌がよくなった。
「そんな、神だなどと祭り上げられていますが、僕はただの子供です。ふつうに接してください。」
(この体格で子供...?なにを言っている。そういう設定ということか?まあ何でもよい。)
「いえいえ、さすがに神様に無礼を働くのは、他の教徒にも申し訳が立ちませぬ。どうかこのまま...。」
「そうですか。わかりました。ご配慮いただきありがとうございます。ところでその...どうですか。今日来られてみて、うちの印象は。」
レオは一番気になっていることを聞いた。今日プニオを招待した一番の目的がそこだ。
「極めて健全ですな。これだけの人数が集まっても秩序が保たれている。そして活気もある。これほどの集団は他にないでしょう。」
(だからこそ、代わりがいないおまえを消すのだがな。)
思いの外好印象な返事が返ってきて、レオは満足した。
「それはよかったです。グレンさんからはうちが目の敵にされていると伺っていたので。」
「もうすでにお耳に入っていると思いますので正直に申します。私はあなた方を解散させようとしていた。これはもちろん、私なりの正義の為です。しかし、なにも知ろうともせず、むやみに攻撃を仕掛けてしまったことについては、謝罪させてください。」
「そこはもう大丈夫ですよ。いろいろあるのでしょう。今はご理解いただけているとのことですので。実際なにもされませんでしたしね。」
レオは謝罪を素直に受け入れた。
「ありがとうございます。今後はよい関係を築いていきましょう。」
「ええ、よろしくお願いします。」
二人は握手を交わした。
(さて、どう処分したものか。)
プニオは笑顔の裏で、冷酷に次の作戦を練るのだった。




