痴漢の末路
ダンブルは、ボディビル大会の説明をした。
「ああ?何でそんな訳の分からない大会出ないといけないんだよ。第一、捕まっちまってでれねえよ。」
「ほう、うちの団員は皆、喜んで出たいと申しておりますがな。やはり、うちの団員ではないということでよろしいか?」
「はっ、そんなところでなくたってな、俺は団員なんだよ。」
男は白々しくも、そう言いのける。
ダンブルは笑顔で対応しながらも、怒りで顔の血管が浮き出ている。
元々怒っていたのだ。いきなり大衆の面前で痴漢を起こし、それどころか、なぜか団員を騙ろうとする。突然現れた、教団の評判を著しく悪化させるその存在に。
それが、こちらが利用しようとしてるとはいえ下手に出ていれば、強気に対応してくる。
本当は、なんとしても出場させたいところであったが、あまりの怒りで冷静ではいられなかった。
「そうですか。よく分かりました。出場していただけるなら保釈金でも払ってここから出そうと思っておりましたのに、残念です。」
とはいえ、謎の男に対してどう怒りをぶつければよいかも分からず、そんな捨て台詞を吐きここを立ち去ろうとした。
「っ!!待て!いや、待ってください!私をここから出してくださるのですか?」
じろりとダンブルは男を一瞥した。
もはやどんなリアクションがあろうと帰ろう。そう思って放った台詞だったが、想像していたより遙かに大きなリアクションが返ってきた。少し冷静になった。元の目的を思い出しながら、
「ええ、そう思っていました。出場していただくにはそうするしかありませんからね。」
そう言うと、男は食い気味に反応してくる。
「分かった!分かりました!私を出場させてください!」
なんだこの変化はと、ダンブルは怪訝に思ったものの、元々訳の分からない男だ。考えても無駄だろう。そう思い直した。
それよりも、ここは確実に、
「そうですか。ありがとうございます。それでは手続きして参りますので、少々お待ちを。」
自分の任務を遂行するための言葉を紡いだのだった。
***
(なんだこれ、俺めちゃめちゃラッキーじゃねえか!)
男はとにかく喜んだ。もう死を待つしかないこの状況から、一発逆転の可能性を見いだした。
なぜ団員でもない、謎に団員を騙る自分を釈放させようとしているのか。教団の男の狙いは分からない。そんなことより、今はプニオの手から逃れられる。それが一番だった。
これから自分に起こる本当の地獄など、知る由はなかった。




