虚警
レオは教団の男に、ダンブルを呼ぶように命じた。
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「いかがされましたかな。」
「実は、かくかくしかじかなんだ。」
「なんと、政治家の手先が今日爆発テロをしようとしているのですか。しかも我々に罪を擦り付けようと。」
「ああ、とにかく早急に、聴衆を解散させよう。聴衆がいなくなれば、テロを起こされても被害はない。そもそも偽爆弾らしいからな。」
「ええ、確かに。ちょうど先ほど痴漢騒ぎがあったので、それを利用しようかと。」
「ナイスアイディアだ。自然と解散させられる。」
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「お越しいただいた皆様、先ほどの痴漢騒ぎを重く受け止めた結果、本日の会合は終了とさせていただきます。今後このようなことの無いよう、対策を練らせていただきます。次回の会合は未定になります。しばらくこの神殿には近寄らず、各自宅トレに励むように。」
「まじかよ、何だったんだよあいつ。邪魔しやがって。」
「教徒も増えてきたしな。こういうことも今後増えるかもしれない。対策してもらえるならその方がいい。」
「痴漢だってー、怖いよねー。悔しいけどしばらく近づけないかも。」
ダンブルからの案内で、聴衆たちを解散させた。
聴衆達はぶつくさいいながらも素直に解散に応じたのだった。」
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「解散させてきました。全員、バラバラなので、テロの効果は少ない。奴らも慌てているでしょうな。」
「ああ、よくやってくれた。それで本題だが、今日何か異変は無かったか?グレンさんの情報によると、うちの団員の格好をした工作員が爆弾騒ぎを起こすことになっているそうだ。」
「はて、異変といいますと、先ほど申し上げた痴漢騒ぎくらいですかな。このような騒ぎを起こす者は今までいなかったので、異常なことといえばそうですが、あまり関係ないかと。格好もぼろぼろの半裸でしたし。」
工作員は取り押さえられる際、服をボロボロに剥かれていたため、教団に引き渡される時には半裸になっていた。
「ふーむ。さすがに、痴漢男が工作員な訳ないよな。テロの前に騒ぎを起こしても意味ないし。それは切り離していいだろう。」
「今、団員にも周辺の異変がないか確認させています。一応報告ですが、痴漢男の引き渡しのため、警察にこちらへ向かわせています。」
「ああ、ありがとう。完璧な対応だ。」
元々千人規模の夜を率いていただけはある。さすがの手腕だ。トラブル対応に抜かりがない。
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レオは極度の苛立ちの中にいた。
いつ工作員が現れるのかと神経を研ぎ澄ませて警戒していたが、結局現れず、その日筋トレが十分にできなかった。
睡眠も大事なので今さらやるわけにもいかない。
「くっそー、あいつら、いつやってくるんだ!」
何も起こらぬ夜空を染め上げた魔力は、彼の苛立ちに共鳴し、夜の闇を鮮烈な紫に歪ませた。その異様な光は、遠く王宮の窓まで届いていた。




