火の手
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ダンブルは神殿に集まる1万の聴衆に神託を告げた。
神殿を囲っていた森は、筋肉教徒のボランティアにより開拓が進み、今では一万の聴衆を収容できる規模になっていた。
「神からまた神託を賜った。『筋トレ中のタンパク質は体重×2g』!」
聴衆から歓声が上がる。
「おおーー!タンパク質は体重×2g!」
「タンパク質は2g!」
「タンパク質って何だ?」
「うおーー!」
聴衆たちはタンパク質を知らない。そもそも、栄養の知識はほとんど一般に知られていない。
無論、ダンブルたち元夜のメンバーは既にレオから教わっている。
「タンパク質は、肉、乳、卵、大豆に入っている!皆、積極的に食するように!」
「うおーー!」
ダンブルが加えて説明すると、また聴衆は沸いた。
「肉!乳!卵!大豆!肉!乳!卵!大豆!」
***
「やれ。もっとやれ。熱狂が激化するほど、この計画はよりうまくいく。」
遠くで見守るプニオ直属の工作員が、冷ややかにつぶやいた。
この男は、プニオが主導している王都治安維持計画の全てを伝えられ、今まさにそれを実行しようと、機を伺っていたのだ。
――時計の針が進む。今日、神殿で、最初の『火』を灯す手筈だった。
***
「はああーーー。」
グレンはため息を漏らした。
計画の全てを知ったものの、プニオに釘を刺され、動けない状況だ。
レオたちが危険だ。そう分かっていても、なにも動けない。
部下にはとにかく、一週間、神殿に近づかないよう伝えた。納得いかない様子だったが、団長が言うならと、渋々うなずいていた。
私だけでもこっそり、いや、それでは部下たちが危ない。だが、このままだとレオ殿が。
正直詰んでいる。プニオの作戦は完璧だった。確実に筋肉教を追いつめる。彼らが追いつめられたときなにが起こるだろうか。考えただけでも恐ろしい。何人が犠牲になるかわからない。
国を思うなら、間違いなく、無理をしてでも、レオに伝えるべきだ。たとえ、彼らの忠誠と命を犠牲にしても。
そう決意し、グレンは震える手で、最も信頼する部下たちを再度、召集するのだった。




