胎動
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夜が子供を誘拐しまくっていたことが発覚し、一度、黄金ジムの存続が危うくなったものの、雨降って、地固まる。その後何事もなく。レオは筋トレを続けることができていた。
「レオ、私もウェイトトレーニングやってみたい。」
あれから5年が経過し、バベルも立派なトレーニーとなっている。
筋肉質になりすぎないよう、トレーニング量はレオが調整している。これが功を奏したのか、身長も伸び、160cmになったバベルは、スレンダーながら、程良い肉付きの大人の体になった。レオの期待通り、超絶美少女から、絶世の美女へと変貌を遂げていた。
(ああ、今日もかわいいな。お願いされたら何でも聞きたくなる。だが。)
「まだ早い。というかもうちょうどいい体型じゃないか。これ以上やるとムキムキになっちゃうよ?」
「え?それはちょっと嫌かも。」
バベルはまだ、レオの筋肉が苦手なのを克服できていない。自分の体にレオのような筋肉が付いたことを想像し、やはり嫌だと思った。
しかし、周りが楽しそうにおもりを上げているのをみて、うらやましいとも思っている。
「だろ?ちょうどいいんだ。今くらいが。」
「そうかもね。えへへ。」
今日もバベルと話ができて、レオはご機嫌だった。
テストステロンが上昇しているのを感じる。
今だと思い、ベンチプレスを始めようとしたところ、
「神様。今日もご神託をお願いできますか。」
夜改め、筋肉教の教皇となったダンブルが話しかけてきた。
「あと三十分待ってくれ、5セットしてから考えるよ。」
「かしこまりました。」
レオは筋肉教の神として祭り上げられている。
いいところなのに、とちょっといらっとしつつも、彼らの言うことは聞くようにしていた。ジムの存続に彼らが不可欠なのももちろんだが、今となってはレオのよき友、筋トレ仲間だ。無下にはできない。
また、筋肉教はあの後勢力を拡大していた。
足以降、神殿の近くから布教を開始していった。意外にも、簡単に受け入れられ、今では国民の半数近くが筋肉教徒だ。
元々は、女神マシュリーを主とするマシュリー教が、この国の国教となっていたものの。信徒のほとんどはそこまで熱心な信徒ではなかった。
そんな中、筋トレでかっこよくなった元夜のメンバーが勧誘することで、まず女性が入信し、きれいな女性が入信していると噂になった後、男も入信するという、下心の連鎖によって瞬く間もなく、信徒を増やしていったのだった。
この盛り上がりによって黄金ジムの運営費も賄っていることもあり、レオに後戻りする選択肢はなかった。
レオはまじめだ。神託として伝える以上、みんなのためになることを伝えなければ、
「『筋トレ中のタンパク質は一日体重×2g。』今日はこれを伝えてくれ。」
ベンチプレスを終え、レオはダンブルに神託を伝えた。
黄金ジムの天井に、午後の柔らかな光が満ちていた。
その光が届かない、王都の騎士団長室。
「国民の間で筋肉教なるものが流行っているそうだな。何か心当たりはないか?グレン団長。」




