討伐対象
「最近、神殿の周りに怪しい連中がうろついているって噂だぜ。」
最近、レオとの交戦?による傷が癒え、筋トレに励むようになったエーは、シーに話しかける。
「ははは。なんだそりゃ。こんな森の奥、だれもうろついたりしねーよ。そんなくだらないこと言ってねーで、筋トレに集中しろよ。お前、神様みたいになりたいんだろ?」
シーは、エーを諭し、筋トレを続行した。
ーープロテウイーン王国 王城幹部室ーー
「最近、誘拐事件が発生しており、貧困層の子供の数が減っています。」
「そうか、それで被害はどれくらいだ?」
「現在、判明しているのが10人です。」
「なんだ、その程度か。子供はどのみち働いていないのだから、今すぐには市場に影響はでないだろう。だが、続くようなら放っておくわけにはいかんな。犯人は分かっているのか。」
「夜という、錬金術師の集団が反乱を起こす実験のためにさらっているようです。」
政治の実権を握っているヒヨワーイ党の幹部プニオは、秘書から報告を受けていた。
貧困層の存在はこの国にとって重要だ。
貧困層のものたちに、生活に必要な賃金は与えるが、最低限だ。生かさず殺さず、使いつぶす。
しかし、そんな扱いを受けても、彼らは何の不満も抱かない。なぜなら、彼らは富裕層の存在を知らないからだ。働きもせず、自分たちが納めた税金を食いつぶしているものたちがいることを。
現在プロテウイーン王国が、徹底的に行っていることは、情報統制だ。
働かない富裕層のおそれていること、それは、貧困層の者たちによる反逆。貧困層のものは、徴兵されて鍛えたり、国民の生活を支えるため、その技術を進化させている。だが、富裕層は違う。貧困層が用意したインフラ、娯楽、その他サービスを享受するだけ。なんの力も、技術も持たない。
貧困層のものたちが国の構造に気づき、力による反乱を起こせば、どちらが勝ってしまうかは明白だ。
そのための情報統制。貧困層に与えるのは平等感。国のみんなが一生懸命働いている。富裕層など存在しない。こう伝えておけばよい。みんな大変なんだ。今日も家族のためにがんばろう。そう思わせられれば、反逆は起こらない。なんなら、仕事を続けていくうちに、皆自分の仕事に誇りを持つだろう。
富裕層には、貧困層の者たちに、自分がどんな生活をしているかを話さないよう、法律が課されている。
プニオ(この国は、律儀に法律を守る富裕層の連中によって保たれている。馬鹿どもが、なにも気づかずに税金を食いつぶしていろ。)
「危険分子だな。直ちに、精鋭部隊、‘’影‘’を動かせ。そいつ等を早々に討伐せよ。」
プニオの冷たい命令が、部屋に響きわたる。
その頃レオは、ダンベルベンチプレスで扱う重量があがってきて、軋むようになったベンチを眺めていた。より頑丈なベンチの設計について思案していたのだった。
翌日自分たちに牙がむけられていることも知らずに。




