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ブラックな婚家に別れを告げてホワイトな男爵家に嫁ぎます  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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13/20

第13話 相談

「サミエルとの婚約がなくなった理由、だって?」


 アレックスはディアナに問われて目を丸くした。


「ええそうです、お兄さま。サミエルとの縁談もありましたよね?」

「まぁ確かに……でもあれは、お前とサミエルが13歳の頃の話だろう? なぜ今頃になって、そんな話を?」


 呆れた表情を浮かべる兄に改めて言われて、ディアナは頬を赤く染めた。


「ははぁ~ん。さてはイーサンと別れて、ようやくサミエルの良さに気付いたか?」

「もうっ。ニヤニヤしないでください、お兄さま」


 ディアナは真っ赤になった顔を両手で隠して首を左右に振った。


「はははっ。28歳にもなって生娘のような反応だな、ディアナ」

「私は生娘ですっ!」

「あ、そうか。イーサンとは白い結婚のままだったな」


 ディアナはコクンと頷いた。

 18歳の時にイーサンのもとへと嫁いだディアナは、白い結婚を言い訳に結婚式すらしていない。


「今にして思えば、お金が惜しかったのでしょうけれど……」


 ディアナは溜息を吐いた。


 白い結婚だからといって、契約書にサインするだけというのは、今にして思えばよくなかったかもしれない。

 あの頃は『愛するあなたのお役に立てるなら、それだけでいいの』という気持ちであれもこれも我慢していたけれど。

 

「予算はあったのに。結婚式に使うはずだったあのお金は、どこへ消えたのでしょうね」


 ディアナは遠い目をした。

 実家からの持参金に、領地や商会への恩恵、ディアナ自らが行う魔法薬作り。

 それらを見返り無しにミーティア伯爵家へと提供してきた。


(あんなバカでも、私は好きだった……)


 冷静になったら負けだ。

 自分が惨めになる。


「実は……」


 ディアナはサミエルとカナン男爵家に対する推理を兄に披露した。


「ED家系疑惑……なんとも不名誉で相談しにくい内容だな?」

「そうでしょう? だからサミエルは私に婚約を申し込まなかったのではないかしら?」

「あぁ。お前は子どもが欲しいってよく言ってたからな……アレは何気に男性には負担になる」


 アレックスは顔をしかめてみせた。

 それは薬師として経験を積んだ今のディアナにもよく分かる。


「悪かったと思ってるわよ。子どもが出来るって奇跡よね」


 アレックスがウンウン頷いている。


(アレ? お兄さまは独身だったはず……)


 男性不妊への共感力が高すぎて、ディアナはちょっと引いた。


「不妊は年齢と共に悩みが深刻になるからね。十代の頃のサミエルよりも、二十代も終わろうとしている今のほうが大変だよ。それでディアナはどうしたいの?」


 アレックスとしては縁談をどうしたいのかを聞いたつもりだったが、返ってきた言葉は意外なものだった。


「ん、男性不妊にも効く魔法薬を作ろうと思って」

「随分と話が飛んだね?」


 アレックスは妹の突飛な発想に驚きすぎて、ちょっと呆れた。


「私の経験からいって、男性不妊の魔法薬は潜在的な需要がかなりあると思うのよ」

「そうだね」

「子どもが5人、10人と沢山いる貴族も少なくないから見逃されがちだけど。子どもがないと爵位の継承にも関わるし、不妊に関する薬は人気があるわ」


 実際、女性向けの不妊関係魔法薬は売れ筋だ。


「だったら、もう既にある魔法薬を使えばいいのでは?」


 アレックスの言葉に、ディアナは首を横に振った。


「あれば女性向けよ。男性不妊なら男性不妊に向いた魔法薬を作ったほうが効果的だわ」

「そうなんだ?」


 ディアナは首を傾げているアレックスを見て、ついついプレゼン口調になる。


「男性不妊は認知度が低いし、男性のプライドを傷つける。だからそのままじゃ売れないとは思うけど、媚薬ということにすれば売れると思うの」

「なるほど?」

「もちろん男性不妊向けとはいえ、女性が使っても効果があるくらい安全性の高いものにするつもりだけどね」

「ふぅ~ん。……薬を作るから、サミエルとの縁談を進めろと?」


 ニヤニヤするアレックスに、ディアナは顔を赤くしながら言い訳のように付け加える。


「そうは言っていないわ。男性不妊に効く魔法薬は需要があっても商品としては存在していないし。媚薬として売れば売れると思って。一石二鳥じゃなくて、三鳥も四鳥も狙っていくのよっ」

「ふぅ~ん」

「もう、お兄さまったら。ニヤニヤして。表情がうるさいっ」


 ディアナは顔を真っ赤にして、兄に一矢報いようとしては失敗していた。


「ふふ。しょうがないな。この兄が、それとなくサミエルに聞いてみてあげよう」

「ありがとう、お兄さま」


 どこまでを聞いてみるのか確認するのは恥ずかしかったので、ディアナは適当にお礼を言った。



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