世界はたまにバグる…。
「世界はたまにバグる…」
と聞くけどこれはどう考えてもその域を超えている。
頼むからフィクションであってほしい。
壊れかけのコンビニでスナック菓子を手に取り、一粒一粒大事に食べる。
「世界が滅んで…もう4日が経ったのか…」
4日前。世界はいきなり終わりを告げた。
天空から謎の巨大物体が現れた。その時僕はちょうど部活終わりの夜道を歩いているところだった。
「あれは……口?」
雲で面影しかわからなかった巨大物体がどんどんと明らかになる。気味悪い口は舌を伸ばし一つの雫を地面に垂らした。垂れた瞬間、その場所から怪物が湧いて出た。人々は混乱状態、どこへ行っても逃げ場なんてないのに逃げ続けた。僕もそのうちの一人だった。人々が詰められた缶のようにもみくしゃになって逃げている間、後ろから怪物共が迫ってきていた。
「おい!!何してんだ!!お前も逃げろ!!」
そんな時、一匹のパグを見つけた。そのパグは危機感がないのかゴロゴロしている。普通ならこんな非常事態、見捨てるのが普通だろう。数十メートル進んだところで立ち止まる。
僕はどうしてもパグを見捨てられなかった。人々とは逆の方向に走り出す。戻ってパグを抱きかかえたが、
目の前には怪物がいる。恐怖で体が震えてなにもできないまま払いのけるように攻撃を受け、真横に吹き飛んだ。
「危機的状況だってのに…よくこいつは堂々と寝れるもんだなぁ」
そして今に至る。どうやら吹き飛んで気を失った後、崩れた瓦礫が身を隠してくれたようで運良く生き延びたらしい。僕とパグは無事だった。
「そろそろ起きろー。今日は外を探索するって決めたんだから」
傷もなんとか癒えてきて、外の状況が知りたい僕はコンビニから出ることを決心した。
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東京のスクランブル交差点…だった場所。
「ひどい臭い…おぇ」
崩れた建物、死体の山、鼻が曲がるような異臭。
逆さになった車などを避けて進む。
「ワン!」
パグが一つの方向を睨んで吠える。
視線の方向にはこちらを睨む怪物がいた。
(小型の怪物!こんな奴までいたのか!?いや……一体だけなら…)
護身用のナイフを強く握る。
すると怪物はとてつもない咆哮を上げた。
思わず耳を塞ぐ。気づいた時にはもう遅かった。
周りを怪物共が包囲していることに。
(ダメだこれ…もっと万全の状態で来るべきだった…)
手に力が抜けてナイフが落ちる。
それを見て怪物の一体が突っ込んでくる。
「ごめん…ここで終わりみたいだ」
諦めて目を瞑る。
不思議と痛みがない。
違和感を覚えてもう一度目を開ける。
『百点満点。よかった…生き残りがいたのね』
一人の妖艶なお姉さんが立っていた。
(刀持ってる!?)
紫色に輝く刀。その刀が怪物を一刀両断していた。
青い血が地面に飛び散る。
『こいつらは世界の壊滅と再構築を目論む怪物、私の世界では歪と呼ばれているわ』
次々と歪が襲いかかってくるがお姉さんは余裕の笑みを崩さず斬っていく。埒が開かないと判断したのか歪共が一斉に襲いかかってくる。
『私のそばを離れないで…それとちゃんと目に焼き付けるように。あなたもこれから手にするであろう……歪に対抗する唯一の力を…』
『…………開け…………』
一つの扉が地面に出現する。
開くとその中から無数のどこまでも伸びる長い手が出て、歪共を掴んで扉の奥へ引き摺り込んでいく。数十秒のうちに辺りが静寂に包まれる。
『『グチャァ』』
扉が閉まった後そんな音が聞こえた。
扉から青い血が漏れ出ている。
『人々はその力を………不正と呼ぶの』
・不正ー女郎蜘蛛
久々に人と出会ったからか気の緩みと共に僕の意識は暗転した。
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頬をぺろぺろと舐められる感触。
目を開けるとパグが嬉しそうに吠える。
病院の天井がぼやぼやと見え、意識がはっきりとしてくる。
『あら…起きたのね』
横の椅子から覗き込むようにお姉さんが見ている。
顔がとても近い。
『あなたの寝顔とても可愛らしかったわよ』
「なんですか急に…痴女なんですか!?痴女なんですね!!」
『助けられた恩人にかける第一声とは思えないわね。失礼な…私は面食いよ』
「ほとんど変わんないよ!」
(なんか今までの緊張感全部持ってかれた気がする)
『あなたもう動けるかしら?』
「はい…あの…」
すると口に人差し指を当てられ、話を遮られる。
『聞きたいことが山々なのはわかるけれどここも安全なわけじゃない。というかこの世界にはもう安全な場所なんて一つもない。だから着いてきてほしいの』
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着いて行った先は病院の屋上だった。
そこには一つの大きな機体が止まっていた。
近未来的なジェット機のように見える。
『それじゃあ行きましょうか』
「行くってどこにですか…」
『別の世界』
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初投稿緊張したぁ。