プロローグ
目を覚まして憂鬱な気持ちになる。
それは私が弱いせいなのだろうか。
どうしてこうなった、そう考えてももう遅い。
「こうなった」と考えてる時点でもう手遅れである。
私は決して不幸なわけではない。
私よりも不幸な人は沢山いる。
大企業というわけではないが、ある会社の社長だった父の会社が潰れ、父は下町の小さな工場で働くようなった。
やがて、働きすぎた父は身体を壊し病に倒れすぐに亡くなった。そして、母も父を追うように。
ほとんどの人が見ればボロアパートと呼ぶであろう家に私は1人で住むようになった。
わかっている。
こんなの不幸ではない。私は生きているし、なんとか生活していけている。
ただ、時々思うのだ。
どうしてこうなったんだろうと。
昔母に言われたことがある。
後ろは見ずにに前だけを見ていなさい。
そうすれば、必ず良いことがある。
お伽話に出てくる主人公もそうでしょう?と
小さい頃はその言葉が真実なんだろうと思っていた。
ただ大人になった今はそれが嘘だったんだと思う。
ガラスの靴なんてないし、魔法だってない。
魔法なんかがあれば私はもっと笑えていたはずだ。
事実、前だけ見ていても良いことなんてなかった。
どれだけ努力して、良い会社に努めようとしても内定できたことは一度もない。
5度目の就活に失敗した時、母に言われた「前だけを見ていなさい」と言う母の言葉を思い出した。
そっか、きっとこの言葉はそんな綺麗にとらえちゃいけないんだ。