38 ブリアンナの訪問
何故かブリアンナさんが石を見たいと言った。
確かにあの時目をキラキラさせていたけど、そんなに興味があったのだろうか?
お父さんに聞いてみたら大丈夫との答え。
ブリアンナさんが家に来る。
何だか変な気持ちだ。
「アルト落ち着きが無いのう」
ぼくはそわそわして歩き回っていた。
「そりゃ、初めて女の子が家に来るっていうんだからそうだろうね」
お母さんと、お父さんは勝手なことを言っている。
「やっぱ血筋かのう」
「早くない?まだ入学してそんなに経ってないよね?」
週末になり、彼女が家に来た。
僕の家を見て驚いているみたいだけど。
何でだろう?
「初めまして、ブリアンナ・フィールドと申します」
彼女は手に袋を持っていて、僕に渡してきた。
「もしよかったらご家族でどうぞ」
袋を開けてみると、お菓子が入っているようだった。
ぼくはお母さんに渡した。
「中々、気の利くお嬢様だのう」
ぼくたちはリビングに入った。
お父さんが宝石箱を持ってきた。
「これがあの石だよ。少し触るだけならいいから」
テーブルの上に置かれる。
「キレイですね」
「でしょ?これはね・・」
お父さんのいつもの解説が始まったよ。
小一時間また最初から言うのかな・・。
「そうなんですね・・それほど高価な物だとは・・」
ブリアンナさんは少し疲れているようだった。
「トワも程々にしといたほうがいいじゃろ。彼女も疲れただろうし」
メイドのスズさんが、紅茶とお菓子を運んできてテーブルに置いた。
ぼくはフィナンシェを摘まみながら紅茶を飲む。
「疲れた時は甘いものが良いよね~」
「いただきます」
ブリアンナさんは上品にカップに口を付けた。
あんまり近くで見たこと無かったけどまつげ長いな。
ふと彼女と目が合う。
「じゃあ、二人でゆっくりとしてね」
お父さんとお母さんはリビングから出て行った。
「な、何で急に・・」
「意味深ですわね」
「え?」
「な、何でもありませんわ。それにしても皆さまお美しくて驚いてしまいましたわ」
「ああ、レーシャさんやウェンディさんかな?」
「黒い翼の・・お母さまでしょうか?不思議な魅力を持った女性ですわね」
「そう?」
ぼくが生まれる前から、皆いるから当たり前になっているんだよな。
「実際に複数の奥様を持つのは、大変らしいので貴重な体験をしましたわ」
「そうなんだ」
ブリアンナさんが、何か考え込んでいるみたいだけどどうしたのだろう。
「レーシャさん・・ってどこかでお名前を聞いたことがありますわ」
「あー元王女様って言ってた。今でもたまにお城に行くみたいだよ?」
「ふえぇぇ・・・?」
ブリアンナさんが急に変な声を出した。
「え?大丈夫??」
「ちょっと目眩がしただけですわ」
彼女は顔面蒼白になっていた。
*****ブリアンナ視点
「元王女様ですって?」
わたしは動揺していた。
何か失礼なことをしていないだろうか?
そもそもほとんど会話をしていなかったはずだけど。
しかし、アルトの家は実はとんでもないところなのでは・・。
馬車に乗り、家に帰ってわたしは考え込んでしまった。
「どうしたんだ?ブリアンナは部屋に引きこもっているようだが・・」
少し開いていたドアの向こうから微かに声が聞こえた。
廊下で父と誰かが話しているようだった。
「お父様・・」
わたしはドアを開いて、顔を覗かせた。
「お友達の家に行ってきたのではなかったのか?何があった?」
「実は・・」
「成程な。元王女様がいらっしゃったと。でもほとんど会話をしていないのだろう?」
「はい・・どうしたらいいのかわからなくなってしまって」
「確かに王女様が嫁いだと聞いたことはあったが、領主様の家だったとはな。多分大丈夫だとは思うが・・」
わたしは椅子に座り、父は立って聞いていた。
「わたしが領主様に聞いてみるよ。心配するな、ブリアンナ」
ぽんと頭を軽く叩かれる。
「はい。ありがとうございます」
*****アルト視点
「おはよう」
学校でブリアンナさんに挨拶した。
「おはよう・・ございます」
彼女は俯いていた。
酷く元気が無いように見える。
「えっと、あの」
「な、なんでしょうか」
「ぼく・・君に変な事しちゃった?何かしたのなら謝らないと・・」
「え?いいえ?ち、違いますわ。そうではなくて・・元王女様の事で・・」
彼女は口を右手で塞いだ。
あ、そういうことか。
「多分大丈夫だと思うよ。城じゃないし、そもそも会話してないでしょ?」
「そうですか。少し安心しましたわ」
まだ朝だというのに、彼女は机の上に頭を乗せて眠り込んでしまった。
心配で昨日寝られていなかったのか?
まだ授業まで時間がある。
そっとしておこう。
学校の廊下で歩いていると。
「お前、フィールドさんと何かあったな?」
ニルスがにやにやして話しかけてきた。
「何ってなにもないよ」
ぼくの家に来てお菓子を食べて話したくらいだ。
途中から妹が入ってきて遊んでって駄々こねたけど。
でも、学校で見る彼女と違ってだいぶ表情が柔らかかったな。
「今フィールドさんの事考えてただろ?」
「そ、そんな事ないってば」
ぼくは慌てて否定する。
何でこんなに恥ずかしいんだろう?
「いいなぁ、俺も恋愛ってやつしてみてえ」
「れんあい?」
あれ?もしかしてこれってそういう事なのか?
よく分からないけど。
教室に戻ると、ブリアンナさんがぼくを見て手を振っていた。




