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35 幼いころの記憶

*****ブリアンナ視点


「凄い・・天使様みたい」

教室で誰かが呟く。


「あの人はまさか…」

わたしは小声で呟いていた。




わたしは幼い頃の記憶を思い出していた。


「ニャーニャーニャー・・」


高い木から、降りられなくなった子猫が甲高い声で鳴いていた。

可愛そうだけど、わたしには助けてあげられない。

木の近くにいた大人は気にしているようだけど、ただ眺めているだけだった。


突風がビュッと吹いたかと思ったら、白い羽の天使が現れた。

木の上に舞い降りて子猫を抱えてそっと降ろしていた。

驚いた。

天使なんているんだ。

そう思ったのを憶えている。


「あら、キレイな子ね。男の子かしら?」


わたしの手を引いていたお母さんは、天使じゃなくて天使族っていう獣人じゃないかって言っていた。

羽を持っているのは珍しいけどとも。


「あんなにキレイなのにてんしじゃないんだ」

わたしは見惚れていた。




あの時の子だ間違いない。

心臓がドキンとはねた。

驚いたことにわたしの隣の席みたい。

ゴクリと息を呑む。

わたしは落ち着いて挨拶を試みる。


「わたし、ブリアンナ・フィールドですわ。よろしくお願いしますわね」

多分大丈夫、普通に挨拶できたと思う。


「ぼくはアルト・ウィンザー。よろしく」


「あら?もしかして領主様のご子息かしら」

「うん。そうだけど」


何だ本当に普通の子だった。

周りの人は気になっているみたいで彼を見ているが話しかけられない。

彼もあえて話しかけてはいないみたいだけど。




*****アルト視点




家に帰りぼくは、リビングのソファに座って物思いにふけっていた。

学校の教室で席が隣になった女子の事が気になっていた。

何でって言われてもよくわからないんだけど。

何故かじっとぼくを見ていたな。


「アルト、アルト?」


妹のエミリアがぼくに話しかけている。

ぼくはただぼーっと妹の言葉を聞いていた。


見た目が珍しいとかそういう事ではないと思うんだけど。

言葉遣いはレーシャさんみたいだったからお嬢様ぽいなって思ったくらいで。


「ブリアンナさんかぁ」

「アルト!風魔法の練習に付き合ってくれるって言ったじゃない!」


ぎゅーっとエミリアにほっぺをつねられた。


「痛っ!何すんだよ」

「アルトのほっぺって柔らかいんだよね。って忘れてんのが悪い!」

「何か約束したっけ?」


エミリアがまあるい目をさらに見開いていた。


「昨日約束したじゃない。風魔法の・・」

「あ~忘れてたわ。悪い悪い」


エミリアに空飛ぶ練習しようって言われてたんだっけ。

家の庭なら良いってお父さんから許可を貰っている。

遠くに行っちゃうと助けられないからみたいだけど。


万が一怪我しても、回復魔法を使えるレーシャさんも居るし大丈夫だ。

痛いから怪我はしたくないけどね。

にしても、昨日の約束を忘れるなんてぼくどうかしてるよな。




お父さんの部屋の机の隅に宝石箱が置いてある。

前から少し気になっていた。

大事な物らしいけど、宝石箱には鍵がかかっていないのをぼくは知っていた。

ぼくの悪戯心いたづらごころが顔をのぞかせた。


「赤い石と水色の石、白い石か。お宝を持っているみたいで何だかわくわくするな」

ポケットにこっそりとしのばせてみて学校に持って行った。




*****トワ視点




「「わぁ!石が無い!」」

「どうしたの?騒いで?」


ウェンディが声をかけてきた。


「魔石が無いんだよ!もしかしてアルトか?」

そういえば最近ちらちらと宝石箱を見ていた気がする。


「ちゃんと言っておけばよかった」

僕は頭を抱えた。


「鍵かけておけば良かったのに・・まぁ今更ね」

「学校で、何もなければいいけど・・」



*****アルト視点



キーンコーン

始業のベルが鳴った。


「今日の授業は魔法実技か」


場所を移し屋外で授業をしている。

入学の鑑定だと光魔法って言ってたけど、得意なのは風魔法だ。

風魔法を見せればいいのかな?


「最初ですので、私が見本を見せますね」


クラス担任のマイア先生が杖を振りかざす。

先生は茶髪で眼鏡をかけていて、紺色のパンツスーツ姿の真面目そうな女の先生だ。


『火よ』


空中に小さな火が浮かび上がった。


「こんな感じで得意魔法を少し見せてもらいます。無理しなくて良いですからね」


隣を見ると、ブリアンナさんが青い顔をして震えていた。

緊張しているのだろうか?


「ごめんなさい。心配させてしまっていますわね。少し注目されて魔法を使うのが苦手なもので・・」

「そうなんだ。無理しなくていいみたいだから、見学だけで良いんじゃないかな」


彼女はぎゅっと目を閉じていた。

ぼくはブリアンナさんの頭を撫でていた。


「え?」

「こうすると少しは落ち着くかなって。怖がっている妹によくするんだよ」


ブリアンナさんの顔が、真っ赤になり俯いていた。

どうしたんだろう。


「あ、ありがとう・・」




「次はウィンザー君ね」


ぼくの番が来た。

少し体を浮かせればいいかな。


『風よ・・』


風魔法を発動させた。

数センチ体が浮き上がる。

慣れたものだ。

ぼくは無意識にポケットに左手をつっこんでいた。

まさかそれが想定していなかった事態を引き起こすとは思わずに。


左のポケットが光り始める。

「ん?何だ?」


目の前の何もない空中から大量の水が溢れだした。

「水??どうして・・」


水魔法はほとんど使ったことが無い。

何で水が出て来たんだ?

水色に光る石が左手にわずかに触れていた。


「もしかしてこれ?」

「ちょっと!ウィンザー君?ストップ!」


マイア先生が制止するが暴走した魔力は止まらない。

濁流の流れはクラスの皆を押し流し、しばらく水は放出され続ける。

しばらくして、水の流れが止まった。


「ごめんなさい・・」


ぼくはクラスの皆に、とにかく謝るしかなかった。

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