34 アルト魔法学校へ行く
*****アルト視点
「アルト!アルトってば」
ぼくは体を揺さぶられていた。
「ん・・なあにエミリア」
「なあにじゃないでしょ!朝、学校に行くから起こしてくれって言ったの貴方じゃないの」
ああ、そういえば頼んだっけ。
ぼくは12歳になって、エミリアは11歳になった。
今日からプノン町の隣、ルミラニア街の『王立魔法学校』というところに通う事になった。
魔法を勉強することが出来るからだ。
ぼくは背中に白い翼が生えてる。
アルは黒い翼なのに何でぼくは白いんだろう。
黒い方がカッコいいのにな。
いわゆるぼくとかは獣人と言われているらしい。
学校でも少数だろうとも言われたけど。
妹のエミリアは翼が無い。
トワに似たのだろうか?
黒い髪は艶々《つやつや》していて、目鼻立ちがくっきりとしていて妹ながら美人だと思う。
決してえこひいきじゃないと思う。
「ほら、急がないと!」
エミリアに急かされぼくは慌てて部屋を出た。
いざという時は、お父さんに送ってもらえばいいやなんて軽く考えているんだけど。
学校は貴族の子供たちが通っているらしい。
お金がかかるので、庶民は通えないとか。
教養を身に着けるとか、魔法を教わるとかも言ってたっけ。
朝ご飯を食べて、服を着替えた。
取り合えず初日は行ってみるだけで良いらしかった。
「仕方ないな。送ってあげるからほら手を掴んで」
ぼくはお父さんの手を握った。
『風よ・・』
風魔法を使って、お父さんと一緒に空を飛んだのは何回目だろう。
自分でも飛べるけど安定して飛べなかったりする。
小さい頃はよく落っこちて心配かけたものだ。
あっという間に学校の門の前にたどり着いた。
「じゃあ、行ってらっしゃい」
お父さんに見送られる。
「あ、領主様だ。おはようございます」
「ああ、おはよう」
登校してくる生徒たちがお父さんを見て挨拶をする。
お父さんは少し有名人だ。
そういえばお父さんは昔、教会で鑑定をしたとか言ってたっけ。
ぼくはそういうのしなかったけど。
ふとそんな事を思い出した。
校舎の入口の近くに、テントが張られており長い行列が出来ていた。
何だろう?
「入学する方はこちらで鑑定をお願いします」
結局ぼくもここで鑑定をすることになったみたいだ。
行列に並び順番を待った。
「貴方のお名前をお願いします」
受付の女性に訊ねられた。
「アルト・ウィンザーです」
「では水晶に手をかざしてみて下さい。魔力鑑定をしますので」
ぼくの前後にいる人たちは、ぼくの白い翼が珍しいのかジロジロと見ている。
水晶に手をかざすと緑色と白色が現れた。
「風魔法と、光魔法ですかね。ではこちらの紙を持って書かれている教室へ行ってください」
紙には1-Aと書いてあった。
地図の通りに進むと、廊下を渡ったところに真新しい教室が見えて来た。
すでに数人中に居て、お喋りをしているみたいだった。
「凄い・・天使様みたい」
女子生徒がぼそっと呟いた。
ぼくは金髪で青い瞳に白い翼が生えている。
天使と言うのは神の使いだっけ?
内緒だけど、お母さんは魔王だから実際真逆のような気もするけど。
教室を見ると獣人の人は居なくてぼくだけだったみたいだ。
貴族だから普通の人間が多いのだろうか。
最初だからか、授業は無くてこの学校の説明で今日は終わった。
明日から本格的な授業があるらしい。
「魔法座学、魔法実技、剣術、教養・・授業は思っていたより多いな」
ぼくが呟いていると。
「ねえ、貴方お名前聞いても良いかしら?」
隣の席の女子がぼくに声をかけてきた。
上品な青いふんわりとしたドレスを着ていて、金髪はポニーテールで結われていた。
可愛らしいネックレスが首元にかかり、銀色の瞳でぼくを見ている。
「わたし、ブリアンナ・フィールドですわ。よろしくお願いしますわね」
軽く会釈される。
「ぼくはアルト・ウィンザー。よろしく」
「あら?もしかして領主様のご子息かしら」
「うん。そうだけど」
ブリアンナさんは家のレーシャさんと言葉使いが似ているな。
位の高い貴族なのだろうか?
教室は他に30名くらい居て、ぼくたちが気になっているようでチラチラと様子を伺っていた。
「どうだった学校は」
家に帰ってきて、リビングでお父さんに訊かれた
「どうって、まだよくわからないし。獣人っていうのぼくだけだった」
「・・そうか」
お父さんは少し考え込んでいる様子だった。
「もし、学校で虐められたりとか嫌なことがあったらすぐに言うんだぞ」
「ん?わかった」
虐めって・・そんな事あるんだろうか。
今日は、ブリアンナさん以外の人には話しかけられなかったけどぼくも他の人に話しかけなかったしな。
「そういえば女子に天使みたいって言われた」
「・・・てんし?」
ぷっとお父さんは笑い出した。
「天使っていうより、小悪魔って感じだぞお前は・・まあ、ボロを出さないように気を付けろよ」
*****トワ視点
「アルトを学校になど大丈夫だったのじゃろうか」
「アルは心配性だなぁ。意外と何とかなるものだよ」
子供たちが寝静まった後、リビングで僕とアルが寛いでいた。
「そういえば女子に天使みたいだって言われたってさ」
「はぁ?天使じゃと?」
「キレイだもんね~アルトって男の子なのにね」
「はぁ~。トワみたいにモテるのも困ったもんじゃの」
流石に僕みたいにはならないよね?
アルトはまだ12歳だし。
来年には妹のエミリアも入学する予定だ。
エミリアは黒髪が珍しいくらいで、見た目は普通の人間なので学校では普通にやっていけるだろう。
ただ、人間と魔族のハーフだから何があるか解らない。
注意深く見守っていかないとな。




