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29 ウェンディとメイド達

コンコンコン。

ドアをノックする。


「どうぞ。入って良いよ」


トワ様は執務室で仕事をしていた。

仕事中に話しかけるのは戸惑ったが、聞いておかなければいけないと思いやむを得ず声をかける。

隣の机では、もう一人の奥様ウェンディ様がお仕事をしていた。


「トワ様少しお時間宜しいですか?」

「ん?どうしたの?」

「奥様の中に王女様がいらっしゃるとお聞きしたのですが本当でしょうか?」

「ああ、レーシャだね。今日は具合が悪いから部屋で休んでいるけど」


「有難うございました。それで何か注意事項などありますでしょうか」

「ん?妊婦だから体調には気を使ってもらうくらいかな。ああ、王女だからって普通にしてもらえばいいよ。ここは城じゃないしね」


普通って何だろう。


「他にも少し変わった人?がいるからそっちの方が驚くんじゃないかな?あ・・うん、後で詳しく話すね」


何か「奥歯に物が挟まった言い方」をされて余計に気になってしまった。




*****トワ視点




「中々大変だね。新しい人を雇うのも」

僕はメイドのスズさんが退出した後、ウェンディに言った。


「それは仕方ないんじゃないの?でも顔見知りで良かったわね。メイドさんも気が楽でしょうし」


仕事をする事でウェンディの機嫌は良くなったみたいだった。

落ち込まれても僕は何も出来ないからな。

久しぶりに二人きりになれた気がする。

何せ家には三人嫁がいるからね。


「何よ?そんな優しい目をして・・ドキドキするじゃないの」

「うん。ウェンディと二人きりも久しぶりだなぁって」


「え?トワ?お仕事まだあるでしょ?ちょっと待ってってば!」


頬が赤く染まったウェンディが慌てていた。

僕はウェンディに近づいてそっと唇を重ねる。

一緒になってからしばらく経つのに可愛いなぁ。


「もう!だめだってば!ちゃんとお仕事終わってからね!」

ウェンディに上手く逃げられてしまった。


「終わったら続きしてくれる?」

「・・わかったわよ。仕方ないなぁ。もちろんここじゃなくて、寝室だからね!って何言ってんの私・・」


僕たちは残りの仕事にとりかかった。





深夜、僕たちはベッドの上に寝ていた。


「トワって会った頃から比べるとだいぶ変わったわよね」

「ん?」

「泣いちゃってたし」

「ちょっと、それメイドさんたちには内緒にしてほしいな」

「え~どうしようかな~」


普段からコミュニケーション取るって大事だな。

今回は久しぶりにベッドインしたことで、ウェンディの気持ちがだいぶ落ち着いてきたみたいだった。


窓から、優しい月の光が差し込んでいた。



*****スズ(メイド)視点



コンコンコン


「失礼いたします。お加減は如何いかがでしょうか?」


わたしは緊張しながら、ドアを開けた。

まさか王女様に会うなんて思ってもいなかったから。


「ん?どちらさまですの?」

「わたしこの屋敷で雇われることになったメイドのスズで御座います。他にも二名のメイドが居るのですが・・」

「そうだったのですね。ウェンディの負担が減って良かったですわ。わたくしはレーシャと申します。この家ではただのお嫁さんなので気楽に接してくれると有難いですわ」


レーシャ様はベッドに横になりこちらに顔を向けながら話していた。


「お医者様は呼ばれましたか?」

「いつもの事なので気にしなくても大丈夫ですわ。もう少ししたら起きますので」


レーシャ様は銀色の髪が見事な美少女だった。

緑色の眼差しは穏やかに微笑んでいる。


「スズさんだいぶ緊張していますわね。もう少しリラックスと言っても難しいのかもしれませんが」

「また後であとの二人をご紹介いたしますね」





「あああ~緊張した!」

「ねえ、どんな感じだったの?」

「気になる」


わたしはレーシャ様の部屋を退出した後、二人のメイドに声をかけられていた。

「銀色の髪が美しい可愛らしい美少女で、人の良さそうな方でした。男性だったら一目ぼれしてしまいそうですわね」

「そうなんだ」

「そっかー」


「って、ほら料理の支度しないと!」

「ああ、そうですわ」

「はーい」


私たちは慌てて、厨房へ向かった。




*****トワ視点




僕は食事の後、リビングにメイド達を集めていた。

僕の前に並んでソファに座るメイド達。

少し時間が経ってしまったが一応注意事項?を伝えるためである。

さて、どこまで話したら良い物だろうか。


「もう解っていると思うけど、家には三人の嫁がいてウェンディ、レーシャ、アル(アルビレス)だ。ウェンディはまあ普通だから良いとして、レーシャは元王女でアルは・・」


隠しても良いんだけど、本人が隠して無いし実害がある訳じゃないしな。


「魔王だ」

「・・!」

「まおう?」

「本当?」


「とは言っても、昔ほどの力はほとんど無いらしくて本人も何もする気が無いから安心してほしい。見た感じ普通の優しい母親だろ?」


「確かに、子供たちを優しく見守るお母様ですわよね」

「翼が付いているのが不思議でしたが・・」


「詳しい事は訊いてないけど、そういう種族なんだと思う。魔物の長ってだけで実際には部下は一人だけだそうだ。彼女は長寿だから、僕らが亡くなった後は他の部下が復活するとか言っていたが今のところは問題ない。この話を聞いて辞めたいと思ったら辞めても構わない。隠していてもいつかバレるだろうしね」

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