表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/43

27 アルと空中散歩

確かに最近はウェンディに同情していたかもしれない。

それが辛かったのだろう。

何か話してくれれば良かったのだけど。

・・いや、僕が忙しいとかで話しかけ辛かったのかもしれない。


冒険者ギルドは男性が多い。

ウェンディはお酒が好きだから、勧められればあまり深く考えずに飲んでしまうだろう。

ガイに聞いたところによると、酔っぱらってまともに歩けなくなっていたようだ。

万が一何かあってからでは遅いのだ。

泥酔したウェンディを良からぬ連中が襲ったりするかもしれない。

ウェンディは僕が言うのもなんだけど、結構美人だから。


ソファでいつの間にかウェンディが寝てしまっていた。

「風邪ひくよ・・って起きないか。僕が二階の寝室まで運ぶか」


顔には泣いた後があって、ぎょっとした。

そういえば泣いてたって聞いた。

横抱きにして抱える。

成人女性は結構重い。

僕は風魔法で少し浮かせて運んだ。


「・・ごめんなさい・・」


夢の中で謝っているみたいだ。

心がチクンと痛んだ。





ウェンディを寝室で寝かせて、僕が階段を下ってくると。


「ウェンディは大丈夫かの?」

アルが訊いてきた。


「う~ん。起きたら訊いてみるよ。思ってたより本人が辛かったみたいだし・・」

「言いづらかったのかもしれんな。話すなら二人きりの方がよかろう。それと思ったのじゃが家事を任せ過ぎではないだろうか?わらわも手伝った方がいいのだろうがなにぶん不器用でな」


家の家事をほとんどをウェンディに任せきりのような気がする。

アルは料理が苦手で、以前手伝ったら炭で出来た料理が出て来た。

レーシャも家事が苦手のようだった。


「ここは広いのじゃから、お手伝いする家政婦とか雇っても良いのではないか?そうすれば負担も減るじゃろうに」

「そういえば、実家ではメイドとか執事っていうのがいたよ。必要だと思って無かったから考えてもいなかった」


きちんと考えたほうが良いのかもしれない。






「トワ、どうかしたのか?」


ゼノベア城の廊下でアスマに声をかけられた。

仕事で城に出向いていた。


「え?な、何が?」

「元気無さそうだからよ。いつも機嫌が良いお前が珍しいなと思って」


アスマは城で騎士の仕事をしている。

本人は一介の冒険者で良いと言っていたのだが、女神様と一緒になった事で王様が取り計らったのだろう。

女神さまは人間になったのでもう力を失っているのだけど。

神様は寿命がとんでもなく長いらしくて、女神さまの妹さんも人間になって寿命で亡くなったそうだ。


「まあ、色々とあるんだよ・・」

僕はため息をついた。


「そういえばレーシャが子供が出来たらしいな?」

「うん。だいぶお腹も大きくなったよ」

「最初は三人も妻がいるとか驚いたものだが・・この世界では普通らしいからな」


日本の感覚だと、一人の妻が普通だからね。

僕も初めて聞いたときは驚いた。

人って慣れるものなんだな。



*****ウェンディ視点


「頭痛い・・」


私は右手で頭をおさえた。

冒険者ギルドでお酒を飲んでからあまり記憶が無い。

久しぶりに飲んだから酔いが回ってしまったようだ。

リビングでコップに入れた水を飲んでいると、アルがふらりと現れた。


「昨晩は大丈夫じゃったか?」

「え・・?」

「ストレスが溜まっておるのじゃろう?気晴らしに外でも良くか?」





「「ひゃあぁ・・」」

「何じゃ大げさじゃの~。前はよくトワと空を飛んでいたのじゃろ?」

「もう5年も前のことですよ・・ちょっと怖いのですが・・」


気晴らしにとアルが空を一緒に飛ぼうと誘ってくれた。

もちろん私は飛ぶことは出来ない。

風魔法を練習すれば出来るようになるのかもしれないけど。


「手、手を離さないで下さいよ・・」


私はアルと手を繋いでいる。

アルの魔法で落ちることは無いと言われているけど、怖くて手が離せなかった。

アルは黒い翼を広げて悠々と空を舞う。

私はおっかなびっくりで、下を見ると怖くなって怯えてしまっていた。

アルは翼と魔力で飛んでいるらしく、そんなに羽ばたかなくても良いらしい。


「下じゃなくて上を見たらどうじゃ?空は気持ちいいじゃろう?」


最近は下ばかり見ていた気がする。


「そういえば、子供たちは?」

「レーシャに少し見てもらっている。まあ、大丈夫じゃろう。よく言っておいたし」


レーシャが子供たちの面倒を見ているんだ。

大丈夫かな。


「ほら、またしかめっ面をしておる。性格が真面目なのは良い事だが深刻に考えすぎな所があるな。もっと力を抜いたほうが良い」


私ってそんな顔してたのかしら。


「結構適当でも何とかなるものじゃ。何も考えないのは良くないが、いいかげんの良い加減を覚えたほうが良い」


良い加減ね。

ふっと力が抜けた気がした。


「笑顔になってれば自然と良い事もやってくるじゃろうて」

アルが私に微笑んでいた。


良い事言うな。

魔王だけど。

そういえば魔王ってこのままでいいのかしら?

ふと素朴な疑問が頭をもたげた。

普通?の人間のお母さん的なことをしているだけのような気がするけど。


「あ、ほらまた何か考えておるな」

アルに指摘される。


「えっと、これは私の悩みじゃないから・・」


本人を目の前に質問していいか悩む。

別に聞かなくても良いか。

私がどうこう出来る話じゃないし。


「そろそろ帰った方がいいんじゃないでしょうか?」

「ん?そうじゃな。子供たちも飽きてくるころだろうしな」


私はレーシャが大変な思いをしていそうな感じを想像した。

殆ど(ほとんど)アルの子供たちの世話をしていないからね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ