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26 ウェンディの憂鬱

「きゃっ!きゃっ!」


家の庭で、僕とアルの子供たちが騒いでいる。

兄のアルトは4歳、金髪で瞳が青くて白い翼を持っている。

妹のエミリアは3歳、黒髪で瞳は茶色で一見すると人間の子供と変わりない。


アルトが最近翼を使って空を飛ぶことを覚えたらしかった。

まだ、飛ばなくて良いと思うんだけど。

そんなに高くはないが、30センチほど翼を使って浮かんでいる。

羽ばたくというよりは魔力を使って飛んでいるらしいのだが。


「おにい~ずるい~」

エミリアが文句を言う。


「いいだろ~。へへっ」

アルトは自慢げだ。


「まだ飛ぶには少々早いと思うのじゃが、そのうちエミリアも飛べるようになるじゃろ」

アルがエミリアに諭した。


「はねないけど、とべる?」

「翼無くても大丈夫じゃ。お父さんは無くても飛べるからの」

「アル、適当な事言わないでよ。僕のは風魔法を使って浮かんでいるんだから・・まだエミリアは子供だし危ないよ」


「そっか。わたしもとべるんだ・・」

目をキラキラさせてエミリアは空想しているようだ。


「先ずはしっかり歩くところから始めてほしいんだけどな」




「子供いいなぁ・・」

ウェンディが呟いた。


何故かウェンディは子供が授からなくて、こればっかりは仕方がないのだけど。

自然と視線がウェンディに集まった。


「だ、大丈夫よ・・そんなに気にしてないから」




*****ウェンディ視点





トワと私たちは屋敷で三人で暮らし始めた。

最初はどうなんだろ?と思っていたけど意外と仲良くやっている。

以外だったのはアルで子供が出来てからすっかりお母さんになった感じ。

レーシャも子供がお腹にいる。


私だけ置いてけぼりのような気がしてきた。

5年も経つとだいぶ変わるものね。

私は25歳になっていた。


「私、久しぶりに冒険者ギルドへ行ってこようかな・・」


同情の視線が辛い。

気を紛らわすために家を離れてみるのもいいかもしれない。

冒険者で依頼をすればお金になるし。

お金に困っているわけでは無いけど。


「ギルドへ?そっか。気を付けてね」


気持ちはトワと一緒に行きたいのだけど無理だろう。

トワは領主の仕事をしているし、ギルドへ行ったら目立ってしまう。


「うん。ありがとね」


ぎこちなく微笑んで、返事をした。




久しぶりに冒険者ギルドへ来た。

相変わらず、男ばっかりだわ。


「よお、見ない顔だな。新人か?」


ガタイのいい30代男性の冒険者が声をかけてきた。

剣を腰に下げている。

数年はギルドへ来ていなかったので、知らない人が増えたのだろう。


「いいえ。しばらくぶりだわ」

「そうなのか?俺と一緒に飲まないか?」


そういえばしばらくお酒を飲んでないかも。

久しぶりにギルドで飲むのも良いかもしれない。


私は冒険者ギルドでエールを飲んでいた。

屋敷でも飲もうと思えば飲めたのだけど遠慮してしまっていたのだ。

気晴らしに良いかなって思っていたのだけど・・。


「う~。よっぱらっちゃった~」

「いい飲みっぷりだ。俺とパーティを組まねえか?」


少し意識が朦朧としてきた。

「ぱーてぃい?ん~?」


そういえば昔トワとパーティ組んでたっけ。

あの頃は良かったな。

思い出してぽろぽろと涙が零れ落ちた。


「どうしたんだ?何か悲しい事でもあったのか?」


名前も知らない男が心配してくれた。

今の私に優しくされるとちょっと不味いかも。

気持ちがふらふらと行ってしまいそう。


「あれ!ウェンディ久しぶりじゃねえか?どうしたんだ。ギルドなんか来て。トワは元気にやってるのか?」


私を見つけたらしい男性が声をかけてきた。

あの人は確か・・。


「ガイだよ。随分久しぶりだなぁ」




***




「気を付けな。男に酒誘われてたじゃねえか。ウェンディは美人なんだから男が放っておかないだろうから・・」


私は馬車に乗り、ガイに家まで送ってもらっていた。

酔っぱらってしまい、まともに歩くことが出来なくなっていたのだ。


「トワも出世したものだな。領主になったんだって?奥さんも三人居るとか・・信じられねえけど」


私はガイの言葉をただ聞いていた。


「ちょっと、愚痴言っていい?」

「お?どうした?聞くだけなら聞いてやるが・・」


馬車の中でぽつりぽつり話す。


「子供か・・俺は男だからわかんねえけど・・だからって責めたりとかしねえんだろ?辛かったら俺が愚痴くらいなら聞いてやるさ」


不思議と少し心が軽くなった。

トワに直接言えば良かったのだろうけど、言いづらくて言えない。

あれで結構忙しかったりするから。


「俺がトワに言っといてやるよ。余計なおせっかいかもしれんが」

「色々とありがとう・・ごめんなさい」



馬車で屋敷に着いた。


「え?ガイ?とウェンディ?」

トワが私達を見て驚いていた。


「ちょっといいか」


ガイがトワに話しかけた。

さっきの事を言ってくれるのだろうか。

他の人に聞こえないように、部屋の隅でコソコソ話をしている。



「そうだったのか。ウェンディごめんなさい。僕がもっと気を使っていれば・・」

「ううん。油断していた私が悪かったの。ギルドは行かないようにするから」


「どうしたのじゃ?何やら深刻そうな顔をして・・」

アルが話しかけてきた。


「いや、何でもないよ」


アルは人の感情に敏感で直ぐに気が付いてくれる。

レーシャはのんびりとしておっとりしているので気が付かないだろう。

妊婦に心配をかけるのも良く無いし、その方が良いのだけどね。



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