表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/43

24 魔王と勝負

僕はアルとこっそりとやろうと思っていたんだけど。


「何だか面白そうな気がする・・」


とギャラリーが増えてアスマとレーシャ、ゴダイ、ウェンディが勝負を観戦することになった。

黒の森の近くひらけた場所、周囲には植物以外何も無い。


「久々に力を出すのがわくわくするのう」

アルは上機嫌だ。


「手加減してほしいな」

端から聞く分に情けない限りだが、正体を知っているからには当然の言い訳だと思いたい。


『ファイヤボール』


アルは火魔法を唱えた。

巨大な火の玉が空中に浮かび上がる。

僕は慌てて魔法で『魔法障壁バリヤー』を唱えた。


ドドドドドーーーン


障壁に着弾した魔法は、凄い勢いで爆発していた。

これファイヤーボールの威力じゃないだろ。



「うわぁ・・・やば」

「えぐいですわね。あれってファイアーボールって言ってませんでしたか?」

「アルって一体何者なんだ?」

「・・・・」



「トワどうした。反撃せぬか」

「女の子に攻撃なんてしたくないんだけど」

「・・甘いのう」


『あら、面白そうな事始めましたね』

「女神か。邪魔せんでほしいわ」


アルの近くに女神が現れていた。

突然現れるとびっくりするんだよな。


「女神様、危ないから離れていてください」

『あらあ、大丈夫よ。なんたって女神ですからね』



『ウォーターボール』


僕は水の塊をアルに投げた。

当たっても濡れるだけだ。

アルはひらりと躱した。


バキバキバキ・・・。


水の塊は周囲の木をなぎ倒した。

思っていたより威力が大きかったようだ。


「怪我させないように弱いのを選んだんだけど・・加減は無理なのかな」

多分当たったところでアルは大丈夫なんだろうけど。


アスマがいつの間にか女神の所に来ていた。

心配で隣に来たのだろう。


「次はもうちょっと大きめのでいくかの」


竜巻タイフーン

アルは風魔法を唱えた。


ビュウウウウウ・・・・。


周囲が強風の渦に巻き込まれる。

「ちょっ・・」


これはやばい。

竜巻は範囲が広くて僕以外のアスマたちを巻き込んだ。


「「アル!何やってんの!」」


「わはは。まあこの位で死ぬような連中じゃなかろう。これでも手加減してるんじゃがな」


本当に勇者殺したりしないよね?

ぴたっと突然嵐が止んだ。


『アルさん・・一体何をしてるんですの?』


アイリーンが滅茶苦茶怒っているようだ。


「え?何ってトワと魔法勝負じゃが?」

『他の人達を巻き込んでどうするんですか・・怪我なんてさせたら許しませんから!』


ウェンディ、レーシャは近くの木に捕まっていて大丈夫だったらしい。

アスマ、ゴダイはアスマの風魔法で上手く上空に逃げたみたいだった。


「俺たちは無事だったから、大丈夫だ。アイリーン怒ってくれてありがとな」



*****女神アイリーン視点



『・・・・』

「どうした?」


わたしは未だかつてないくらい感情が揺れた。

どうしたんだろう。

他人にこんなにも怒ったことは無かったはずなんだけど。


手が震えて来た。

「お、おい。大丈夫か?」

アスマがわたしの様子を見て慌てている。


『何でもない・・です。ちょっと自分でびっくりしただけ』


アスマを失ったら・・と考えたら震えが止まらなくなってしまった。

わたし一体どうしたのだろう。



*****トワ視点



「勝負は終わりで」

「えええ?これからじゃというのに」


アルはまだ不満があるみたいだけど。


「観客を巻き込んだ時点で駄目でしょ」

「じゃあ、今度は誰もいないときで・・」

「いやあ、もう勘弁してほしい」


敵ならまだしも、アルだと気を使ってしまって無理だと思う。



**



「「城を出る?」」

ウェンディとレーシャが驚いていた。


「前から考えていたんだよね。いつまでも城に世話になってて悪い気がして・・」

「そんな事ないんですのよ?勇者パーティなのですから王族が養うのは当たり前ですわ」

「でも・・恐らく、勇者パーティが魔王討伐することは無いと思う」

「そ、それは・・」


魔王である、アルが「敵対するつもりは無い」と言っていた。

この先の事は分からないけど。


「だから余計にかな。王都のどこかで家を借りて住もうと思っているんだ」

お金は・・冒険者稼業をすれば稼げるだろう。




僕とウェンディは城を出た。

王都の辺境に安い家を借りることが出来たからだ。

城を離れるにあたって、僕はウェンディと共に勇者パーティから抜けることにした。

年季の入った木造の家を借りた。


「埃だらけね・・掃除しないと住めないわね」

「ホウキも無いな。買ってこようか」

「ちょっと待って。今綺麗にしてあげるから」


『風よ・・』

ウェンディが器用に風魔法を操って埃を端っこに寄せる。


「へえ~こんな使い方が出来るんだね」

「トワだと家を壊しちゃいそうだもんね」


ちょっとイラっときたけど、事実なので反論できない。


「まあでも細かいのは無理だから、やっぱりホウキを買ってこないと駄目かな?私が水魔法も使えたら良かったんだけどね」

「結構きれいになったよ。あとは手分けして掃除しよう。取り合えず水拭きをしようか」


雑巾に水を含ませて絞って床を拭く。

結構汚れているな。

家は結構広いので今使う所だけ掃除しよう。

後は少しずつすればいいか。


家を借りるにあたりお金がかかったのだが、忘れたころに王様から報奨金(ドラゴン討伐の)を頂いていてそのお金を使わせてもらった。

そのお金が無ければもう少し時間がかかっていたかもしれない。


王様的には、レーシャが将来僕と結婚するのを見込んで支援するという話もあったのだけど断らせてもらった。

僕にはレーシャ以外にも、ウェンディとアルが居るから流石に気まずいからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ