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21 女神の気まぐれ

魔王城の食堂で目の前に美味しそうな果物が並ぶ。

僕らは椅子に座っていた。


「ウェンディ、食べて平気ですの?毒とか・・」

「何言ってるの!どうせ死ぬのなら食べちゃった方が良いじゃない。美味しそうな果物だし食べないともったいない」


アルが魔王だと聞いて、殺されると思ったようでだったらいっそのこと食べてしまえと思ったのだろうか。

女子って凄い。


「毒など入っておらぬわ。心配せずとも殺しはせぬよ。そもそも理由が無かろうに」

「僕たち勇者パーティだけど・・」


アルは意外そうな顔をした。


「・・それは初耳じゃな。じゃあ、今のうちにサクっと・・」


「「ひえええ・・・」」


「まあそれは冗談じゃよ。今、勇者は居らんのじゃろ?そもそもわらわは力が無いので戦う事も出来ないのでな。争う気はないわ。理由も無いし」


「でも、500年前・・勇者と戦ったんだろ?」

「それはその頃の事じゃろ?今は関係ない。わらわは復活したてで見ての通り力のない小娘じゃし。トワにだって負けるじゃろうに」


僕だってアルと争いたくはない。

というか多分殺せないと思う。


「トワはわらわの事が好きなのじゃろ?」


アルが目を細めて笑った。


「え・・っと。何て言うか・・その・・」

「わらわも《《好きな人》》に殺されるのは嫌じゃからの。手は出さないから安心してほしい。もちろん勇者にはわらわの事は内緒にしておいてほしいのじゃがな。お願いできるかの?」


「絶対言いません。約束します!」




**




僕らはゼノベア城に戻ってきた。


「アルとトワ両想いらしいけど?」

「まだまだ、わかりませんわ。ほらアルは魔・・ですし」


僕の部屋でウェンディとレーシャがコソコソと話をしていた。

最近二人仲いいな。


「よう!アルの所行って来たんだろ?どうだった?」

アスマが吞気に部屋に入ってきた。


「な、何でもありませんわ」

「う、うん。特に何も無かったわね」


二人ともびくびくして顔が引きつっている。

怪しすぎるだろ。

嘘つくの下手だな。


「?」

アスマは当然何のことだかさっぱり分からない。


「ああ、でもトワと両想いみたいでしたわね」

「なんじゃそりゃ~」


魔王・・か。

両想いでも何だか複雑だな。


「その割に辛気臭い顔してるじゃねぇか」

アスマに背中をバシン!と叩かれた。




*****アル視点




「魔王様、力が無いと嘘をつかれましたが恩人では無かったのですか?」


わらわの唯一の部下であるオルトレスが言った。

彼は肌が浅黒い角が二本ある男性の魔族である。

若く整った顔立ちをしている。


「オルトレス、ああでも言っておかないと警戒されるじゃろう?人間にはステータスを見れる者もいるようじゃから、一応隠ぺいはしておるがの」


わらわは玉座に座り、オルトレスを見た。

500年はまだ短かったようで、魔族のほとんどの者が不在なのだ。

前の様に揃うのはもう少し時間がかかりそうだ。


「嘘ではないぞ。全盛期の力には程遠いからな。一人と多数では分が悪かろう。まあ、半分本当と言ったところじゃがな」



*****女神アイリーン視点



『偶然にしても面白いわね。魔王と知り合うなんて・・しかも恋愛関係とか?どうも勇者と争う感じにはならなさそうね・・』


彼はわたしの予想の斜め上を行ってる気がする。

少し悪戯(いたずら)したくなってきた。


『ちょっと下界へ行ってみましょうか』


神域に居ても退屈なだけだし、暇つぶしには丁度いいだろう。


『どうせなら、彼を驚かせたいわね。ふふ』


わたしは準備をして下界に降りることにした。



*****トワ視点



くしゅん!


「あら、やだ風邪ひいたのかしら?」

「そうかなぁ。誰かが噂してるような気がするよ」


変な悪寒がしてきた。

体調が悪いのかな・・?

僕とウェンディは王都を歩いている。


白いワンピースの大きな帽子を被った女性が前から走ってきたのが見えた。

急いでいるみたいだ。

あまり気に留めずに通り過ぎようとしたところ・・。


『会いたかったわ』


白いワンピースの女性が僕にいきなり抱きついてきた。

豊満な胸の感触にどきどきしてしまう。


「え?」

誰?


「トワ?どういう事?《《他にも》》女性の恋人がいるのかしら?」


ウェンディが怒りまくっている。

頭から角が見えるようだ。


「えええ?僕全然知らないよ・・」

『わたしを忘れるなんて酷い・・・』


泣くふりをする女性。

帽子を取ってようやく顔が見えた。

あれ・・どこかで見たような気がする。

僕が首を傾げていると。


『いつもの恰好じゃないと分からないのかしらね』


長い金髪で青い瞳の人間離れした美しさの妙齢の女性だ。


「あああっ!こんな所で何してるんですか!」


思い出した。

この人は女神だ。


『何って面白そうだから見に来たのよ。貴方って、何人女性侍らすつもりなの?』


侍らすって人聞きが悪いな。


「貴方もその中に加わるおつもりなのかしら?」


ウェンディの目が非常に怖い。

取り合えずウェンディの誤解を解かないといけない。

街中で名前を明かすと大騒ぎになりそうなので、何処かで話すことにした。


近くの喫茶店に入った。

王都らしく値段は高めらしい。

ウェンディがメニュー表を見て顔をしかめている。

ボックス席で僕の隣にはウェンディ、向かい合わせで女神が座った。


『名前ね。わたしはアイリーンよ。ウェンディさんは初めましてだわね』

不思議と通る声でアイリーンは話す。


「アイリーン?女神さまと同じ名前?」

『わたしが女神でっす』


「えええ?嘘でしょ信じられない」

「嘘っぽいけど本当だから」

『失礼しちゃうわね。何なら何か証拠を見せましょうか?』


証拠?


『貴方はプノン町でトワと出会って一緒に居る。現在はゼノベア城に住んでいて勇者パーティの一員。トワはレーシャ王女と恋人で最近は魔王と恋仲になりつつある・・』


「「わあぁぁ!」」


ビックリした。

突然暴露されてしまった。


「な、なんでそんな事知ってるんですか?ま・・は一部の人しか知らないはずなのに」

『わたしが女神だって事信用してくれた?』


アイリーンはにこにこと涼しい顔をして笑っていた。

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