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11 誘拐

「ありがとう。言いたいこと言ってくれて少しスッキリした気がするよ」

「そっか。良かった」


僕とウェンディは風魔法で、上空を飛んでいた。

さっき実家に戻ったばかりなのに直ぐに引き返すことになるとは・・。

あの親らしいっていえばらしいのだけど。


「トワ折角だから、何処かへ寄って行かない?このまま帰るのも勿体ない気がするし」


僕たちは王都の都でブラブラすることにした。

王都には居るものの、都の観光をしてなかったな。

ちょっとくらい遊ぶのも良いよね。


王都に戻ってきた僕たちは都を歩き始めた。

「相変わらず人が多いね」

「そうね。はぐれない様に手を繋ぎましょ?」


僕とウェンディは手を繋いだ。

彼女の暖かい手に触れてドキドキする。


「あ、あれ冒険者ギルドだね」


看板を見て、僕は指さした。

もちろん王都にもギルドはある。


「少しのぞいていく?」

仕事をするわけでは無いけど、気になったので覗いてみることにした。


建物は、プノン町よりだいぶ大きくて広い。

もしかしてギルド本部なのかもしれない。

相変わらず活気があって、人も多い。


ドアを開け、ギルド内に入ると視線が集まった。

ウェンディ結構可愛いからな。

隣の僕も何故か見られている気がする。


「聞いたか?勇者パーティに凄い奴が入ったらしいぜ」

「へえ~」


どうやら冒険者たちが僕の事を噂しているみたいでむず痒い。

ウェンディに突かれた。


「凄い奴だって~」

「あはは・・」



ふと奥を見たら、見覚えのある銀色の髪で白いフードの少女を見えた。


「トワ様?もう戻ってきたのですか?」

レーシャ王女が依頼書の貼ってあるボードの前に立っていた。


「用事が早く終わっちゃってね。折角だから冒険者ギルドを見に来たんだよ。レーシャさんはどうしてここに?」


「わたくしは、たまに冒険者ギルドへ来ますのよ。色々な情報がありますからね。それにしてもこの前は凄かったですわね。トワ様から魔法の使い方など、是非色々お聞きしたいですわ。よろしければ直接指導いただいても・・」


レーシャ王女は興奮しながら喋っていた。

やけに顔が近いんだけど。


「ちょっと、トワと距離が近すぎるわ。離れてもらえないかしら」

「あら、いらっしゃったの。ごめんなさい。全然気が付きませんでしたわ」


これ、喧嘩にならないよね?

「えっと、二人とも仲良くしてね?同じパーティなんだし」


「「トワは引っ込んでくれる?」「トワ様は引っ込んでいてくださる?」」


「は、はい・・」


び、びっくりした。

二人とも睨みあって何だか怖いんだけど。


「何だか知らんが、ああいう時は関わらないほうが良いぜ。それにしてもお前さんモテるんだなぁ。羨ましいぜ」


後ろから見も知らぬ男性が助言をくれた。




それから・・。

何故かレーシャ王女が僕の後をつけて来るようになった。

城の中を歩いているときとか、都で買い物をする時とか。

本人は隠れているつもりのようだが、バレバレである。


「うっとおしい・・」

ウェンディの本音が漏れている。


「ま、まぁ遠くから見ているだけだし・・」

「それが嫌なのよね・・どこかへ行ってくれないかしら」



*****シキ(二番目の兄)視点


「くそっ、何でトワの奴が・・」

「何で俺が来なきゃいけないんだ。帰りたい・・」


俺は、トワが勇者パーティに選ばれたせいでウィンザー家の跡取りから外されてしまった。

腹が立って気が済みそうもない。

王都に行って一言文句・・それ以上の事をして憂さ晴らしをしたい。


「シキ兄、何で俺まで王都に・・来なくても良かったんじゃ・・」

弟のロドスはさっきから文句ばっかり言っているが、兄弟なんだから協力しろよ。


「少し痛い目にでも合わせたいところだが・・城に居るのだろうか・・」


王都に来れば会えるだろうと適当に来たのだ。

両親には王都で買い物がしたいと理由を付けて家を出てきた。

どうやって会うか・・兄弟なんだから言えば会えるのだろうか?


馬車から降りて、考え事をしていると・・・。

目の前を探している人物が通り過ぎる。


「あ、おい!」


声をかけようとしたが、様子を少し見ることにした。

トワはどうやら恋人と歩いていて、少し離れてその後ろを銀髪の少女が追いかけているみたいだ。

仲間なのだろうか。


「トワの知り合いか?・・ロドスあの少女をナンパしてこい」

「ええ?」


「よく見るとめっちゃ可愛い子じゃん。任せろよ!シキ兄!」

ロドスは扱いやすいな。


「ちょっと、そこのお嬢さん」

「はい?」


美しい銀髪を揺らして、緑色の瞳の少女は振り返る。


「何か用ですか?」


「えっと・・その・・」

ロドスは声はかけたものの、次の言葉が出てこないようだ。

目の前の美少女に照れているようだ。


「ああ、見失っちゃった・・どうしましょう・・」

「どうしましたか?」


俺は偶然を装い少女に近づいた。



「あれ?レーシャが居なくなってる」

「本当ね。どこへ行ったのかしら」


さっきまでずっと僕たちをつけてきた彼女が忽然と姿を消していた。


「お城に帰ったのかな?」

「それならいいけど」



*****レーシャ視線



わたくしは目を覚ました。

周りは真っ暗でここは何処だろう。

埃っぽい場所みたいだ。

倉庫とかだろうか。


「お目覚めかい?」


男性の声で、声をかけられる。

手首が縄で絞められているのか自由がきかない。

口にも布が覆われているようだった。


「ん~ん~」


声が出せない。

わたくしは誘拐されてしまったようだ。

都に来るときはいつも勇者たちと一緒だったからさらわれるなんてことは一度も無かった。

最近安全だったから油断してしまっていたみたい。


「なあ、シキ兄これからどうすんのさ。犯罪者みたいなことして・・」


もう一人男がいた。

さっき声をかけてきた男かもしれない。


「まあ、待て。トワに一泡吹かせたいからな・・さてどうしようかな」


わたくしを攫って何をしようとしているのだろう。

トワ様の知り合い?

不穏な男たちの言葉に背筋が寒くなっていた。

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