表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/43

01 異世界転生?

チュンチュン・・

鳥のさえずりが聞こえる。

目を開けると知らない天井?

あれ?でも見たことある気がする。


「えっと・・」


ここはどこだろう。

一人の部屋にしては広すぎる洋間。

天蓋てんがい付きのベッドに戸惑いつつも、床に足を下ろす。

床はフローリングでベッドの下には靴が置いてあった。


本当は解っている、僕の部屋だ。

壁にある丸い大きな鏡に映るのは、明るい金髪に青い瞳の小柄な少年。


僕は、佐野 十和トワ13歳で中一年生・・黒い髪、黒い瞳の日本人だったはずなんだけど。

もしかして、異世界転生ってやつなのだろうか?

今の僕はトワ・ウィンザー、ウィンザー家領主の5男で15歳で間違いはない。


「ん~もう!」


部屋でゆっくり落ちついて考えたいのだけど。


僕は着替えながら、愚痴をこぼした。

「何で、魔力鑑定をする当日に思い出すかな~」




ガタゴト・・

馬車で揺られ近くの教会へ向かう。

15歳になるとみんな教会で鑑定を受けることになっている。

今日は母が一緒に来てもらっている。

父は仕事があるとかで来られないらしい。


「トワはどんな魔力を持っているのかしら。楽しみだわ」


扇子を振りながら、母シイラが嬉しそうに微笑んでいる。

母はウエーブのかかった金髪で肩より少し長く、瞳は青く切れ長の30代女性だ。

胸の少し開いたドレスを着用している。

この世界ではどんな人でも魔力を持っていると言われている。


「そうですね」

(下手なことを言わないように気を付けないと・・)




教会の入口で母と馬車を降りた。

教会にはすでに数人の人が居て、魔力の鑑定をしているようだ。

母は後ろの長椅子に座って待っていて、僕は列に並んで順番を待つ。


「火の魔法ですね。素晴らしい!」

「おおやった!」


前の男の子が喜んで飛び跳ねていた。

ようやく僕の順番が来て、黒い祭服を着た神父が祭壇に置かれている女神像に祈りを捧げる。


『女神アイリーン様、どうか「トワ・ウィンザー」この者の持っている魔法を教えて頂きたい』




「・・・あ・・え・・と」


神父は何故か青い顔をしている。

どうしたのだろう?


「まさか・・いやそんなはずは・・領主様の息子なのだし・・」

「どうしたのですか?」


母がたまらず神父に訊ねた。


「・・魔力がありません」

「え?」

「トワ様には魔力が無いようです・・」

「な、何かの間違いでは・・」

「いえ、今まで間違った事は御座いませんので・・申し訳ありませんが・・」


ザワザワ・・

「え?魔力が無いって?」

「ありえない・・」


周囲の人たちがヒソヒソと話している。


「魔力が無い?」


僕はしばらく呆然ぼうぜんとしていた。

母の顔色は青ざめて引きつっている。


「お母様?」

様子がおかしかったので、声をかけたが僕の声がまるで聞こえていないようだった。


「帰りましょうか・・」


母は絞り出すように声を発した。

帰りの馬車で僕と母はただ無言で座っていた。




僕と母は屋敷に戻ると、屋敷の玄関で何故か父アーロンが待っていた。

父は今日は仕事で居ないはずだったのだけど。

僕の鑑定結果が気になって帰って来たのだろうか。

母は悲壮な表情で泣いて、父に何か話している。


「貴方・・どうしましょう・・・」

「トワは自室に戻っていなさい」


父に告げられ、僕は部屋に戻った。

ベッドに仰向けになり天井を見る。

僕には魔力が無い。

流石に予想をしていなかったので、自分でも驚いていた。

僕は一体どうなるんだろう。

何だか嫌な予感がするんだけど。




翌日、父に話があると言われてリビングに行った。

父はソファに座り、リビングの奥には一つ上の兄のロドスが座っている。

僕が目の前のソファに座ると直ぐに父が話しだした。


「・・トワは屋敷を出て行くように」

「え?」


「「はぁ~」」

父は大きなため息をついた。


「お前には期待していたのに・・魔力が無いなんてウィンザー家の恥だ。今まで聞いたことが無い。親戚にもいないはずだ。わかったら明日・・いや今日中に荷物をまとめて出て行け」


「い、意味がわからないんだけど?何で出て行かないといけないの?」


「ばっかだな、そんな事も分かんねえの?」


父が他の家族には話していたのだろう。


「魔力が無い奴なんて、一族の恥さらしだろ。父様の言う通りさっさと出て行けよ!」


かくして僕は、意味が分からないまま家を追い出されてしまった。





僕は取り合えず近くの町プノンに行くことにした。

リュックを背負い、トボトボと歩き出す。

屋敷は少し森の奥にあって、不便な場所にある。

近くの町に行くには半日歩いて行かないといけない。


魔力無しか・・どうやって暮らしていけばいいだろう。

幸い少しお金を貰ってある。

しばらくは宿に泊まるのもいいだろう。


「冒険者かな・・やっていけるのかな」

考えながら歩いていると、草むらからカサカサと音が聞こえてきた。


「あれもしかして、スライム?」


透明でぷよぷよしている物体が目の前に現れる。

冒険者になるには魔物を倒さないといけない。


「やるか・・」


僕は重い腰を上げた。

これから冒険者として生きて行かないとだしな。

腰に携帯していた短剣を抜いてスライムに切りかかってみた。


「・・・えいっ!やあっ!」


スライムは飛んだり跳ねたり動き回っている。

意外と素早いようだ。

過去の記憶の中にある某ゲームを思い出していた。

現実はそううまく当たらない。

そりゃそうなんだけど。


「思っていたよりかわいくないな・・」


それでもしばらく短剣を振り回していると、運よくスライムに命中した。


サクッと切れる感覚があり、スライムの体が砂になっていく。

そこには青い石が転がっていた。


「へえ~何だろうこれ。拾っておくか」


僕はリュックの中に石を仕舞(しま)った。

それから森でスライムに会うたび攻撃してみる。

一回では無理だけど、何回かやっていくうちにコツが掴めてきたようだった。




近くの町プノンに着いた。

冒険者になれば、魔物と戦わなくてはいけない。

少しでも慣れておいた方が良いと思い、何匹かスライムと戦ったせいで少し疲れてしまった。


「少し動き過ぎたかな・・」


歩くだけでも疲れるのに、動き回っていたので汗だくだった。

とにかく今日泊まるところを探さないと。


「ちょっと困るんですけど」

「いいじゃねえか。悪いようにはしねえからさ」


前の方で、若い少女の声がした。

ポニーテールで鮮やかな青色の髪の少女がチンピラ風の男性に絡まれている。

右手には杖を持って、茶色いローブを羽織っているので魔法使いだろうか。

ぱっちりとした水色の瞳、身長は160センチくらいで20代前半くらいに見えた。


僕は少女と偶然目が合った。

助けてくれと目で訴えてかけられる。

えええ??

無視するのも気分が悪いし、仕方ないな。


「ごめんね。待たせたかな?」


知り合いのふりをして近づいた。

僕は少女の手を取って、走り出した。

しばらく男が見えなくなるところまで移動した。


「・・ありがとう。助けてくれて・・しつこくて困っていたの」

「どういたしまして。とにかく逃げられて良かったですね。じゃあ、これで」


僕が立ち去ろうとすると、少女に引き留められる。


「あ、待って!今日泊まる宿は決まってるの?」

「いえ、これから探すところですけど」

「丁度良かったわ。私の泊まっている宿へ一緒に行かない?まだ空いてると思うから」

「え?いいんですか?ありがとうございます」



宿はミラージの宿と看板に書いてあった。

町外れの場所で簡素な作りの部屋。

ベッド、窓際のテーブルには燭台が置いてあり椅子が一脚ある。

泊まるだけなら十分な所だな。


コンコンコン

ドアがノックされた。


「入っていいかしら?」

先ほど、助けた彼女が訪ねてきたみたいだ。

読んでいただき有難う御座います。


下の☆☆☆☆☆から作品の応援お願いいたします。


面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ正直な感想で構いません。


ブックマークもいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ