たった一言で 理解
「後で話がある」
姉貴がそう言ったのを耳にして、俺はさっと血の気が引いた。
笑顔なのに、口元が引きつっていた。
自分の今後の未来が理解できたからだ。
あれはそうとう怒っている。
今、姉貴は猫をかぶりながら、友人と話をしている。
本性を出していないモードだ。
ニコニコしながら、慈愛のある表情で、他人受けするあの顔が、身内でも同じだったらいいのに。
はあ、憂鬱だな。
でも一体何の件で怒られるんだろう。
冷蔵庫のプリンをこっそり食った件かな。
それとも姉貴から借りた漫画を、一ヶ月くらい返していない件かな。
もしかしすると姉貴の靴にガム落としちゃった件かな。
「うーん、どれだろう」
すると突然の姉貴。
「今思い浮かべた事全部に決まってるでしょー!」
やべ、火に油。
友達との話が終わったらしい。
察しのいい姉貴は、俺の頭の中をたった一言で見抜いてしまったようだ。