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ノスタルジア管理局  作者: 彩人
序章~記憶の海
9/86

雪と塁・2

「それじゃあ、始めるよ」

「ああ」

 二人は頷きあうと、一台のパソコンの前に陣取る。塁が椅子に腰かけ、雪は後ろからその画面を覗きこんだ。

「まず初めのキーワードは?」

 塁に尋ねられ、雪は「金子 高久」氏から与えられたキーワードを思い返す。

(「大きな木」、「祠」、「火の神様」・・・「整理された道」・・・)

 もう一度考えてみる。どれを入れれば数多の情報を上手く選び出せるか。

「・・・『整理された道』・・・」

「整理された、道?」

 雪が呟いた言葉を塁は復唱した。

「本当にそれでいいの?」

「・・・・」

 聞かれてもう一度考える。そして、一つの疑問が浮かび上がってきた。

「塁、あの人が生まれた場所って何処?」

「あの人って・・・・金子 高久さん?」

「そう」

「ちょっと待って」

 唐突な雪の質問に、塁はキーボードをカタカタと叩く。事務所のパソコンを呼び出し、そこから「金子 高久」についての記録ファイルを開いた。

「あった、これだ」

「・・・・」

 塁に促され、雪は画面を食い入るように見つめる。そして、そこに書かれている情報を見て落胆した。

「・・・・くっそ・・・」

 ぽつりと呟かれた雪の言葉に塁は苦笑いの表情を見せる。何で気がつかなかったのか。最初にキーワードを提示された時に気づかなければいけないはずの情報を、見逃していた。その事実に、雪は自分に腹を立てて拳を強く握る。

 画面に映し出される情報は、全てを繋げた。彼の「記憶(探しモノ)」の在処までは分からなかったが、これから何処に行くべきなのか・・・・その道を示しだしている。

「どうするの?」

 塁が尋ねた。

「行くさ、今すぐにでも」

「まさか、一人で?」

「ああ」

 行く場所は決まった。これからするべき事も行けば自然と分かるだろう。ならば、後はその場に赴くだけだった。

「一人は駄目だ!」

 不意に塁が声を上げる。その眼は真剣で、有無を言わせない表情をしていた。雪は戸惑う。

「塁?」

 その理由を問うように、塁の顔を覗き見る。一瞬合った目が逸らされた。

「いや・・・ほら、危ないしね」

 何かを誤魔化すように、視線を泳がす。

(塁は秘密ばかりだ・・・)

 雪は溜息をつくと、小さく頷いて見せた。

「分かった。一人じゃ行かないよ」

「ホント?!」

「ああ」

 心底、ほっとした表情の塁に雪は意地悪げに笑い「一緒に行こうな、塁」と、塁の肩を軽く叩く。

「・・・・・?」

「一人じゃいけないんだろ?」

「ちょっと待っ」

「嬉しいな~、塁が一緒してくれるなんて」

「あの」

「ついでだから、(あいつ)も連れてこうな~?」

「だから・・・・」

 塁に反論を許さず、雪は大きな声で呟いて見せる。そこに反論の余地はない。

 大きく項垂れる塁を後目に、雪はにこにこと楽しそうに微笑んでいた。





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