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ノスタルジア管理局  作者: 彩人
序章~記憶の海
21/86

記憶の海-終章-

記憶の海編、完結です^^

次回からは本編の「水底の涙」に移りますので、あしからず…。


 例の部屋に彼はいた。

 ただ静かに目を閉じ、その時を待っていた。解放の時を…。


「金子高久さん…」

「おや?これは美人さんじゃのう」

 

 部屋を訪れた塁に、彼は皺くちゃの顔に更に皺を刻み柔らかく眼を細める。全てを受け入れるような優しい雰囲気につられ、塁も微笑みの表情を浮かべた。

「長らくお待たせしてしまいましたね」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ…お構いなしじゃよ」

 塁は部屋の扉を静かに閉めると、彼の前に腰掛ける。長い髪が肩から滑り落ち、彼はその光景に思いを馳せた。まるで失くした記憶(もの)を求めるように…。


「どうかしましたか?」

 

 視線に気がついて塁は尋ねる。

 物腰の柔らかい塁は、中間管理者としては適している人材といえるだろう…。例えば「雪」ならこうはいかない。

 それでも…。


「キミのその笑顔は、寂しいなぁ…」

 まるで全てを見抜いたような言葉に、塁は顔色を変える。それもほんの一瞬の事、すぐにいつもの柔らかい微笑みを浮かべると、古びた眼鏡の下にあるガラス玉の様な眼を見つめた。その言葉の真意を問うように。

「…怖いな、まるで全てが見えているようですね」

 冗談交じりに笑うと、目の前にいる彼もフッと眼を細めて見せる。その目の前に塁の手が差し出された。


「お探しのモノです」

 差し出された手の下にそっと自分の手を添えると、萎びた震える掌にソレは置かれた。小さなガラス玉…模様も色も無い古びて汚れたビー玉だった。


「……」

 金子高久氏は、そのビー玉を手にすると両の掌で擦り合わせたり、照明に向けて色を透かせてみたりと…過去を懐かしむように、大事な記憶(モノ)を思い出すかのように目を閉じる。そこに言葉はなく、塁も一部始終を見守った。

 

雪が検索した座標を元に金子氏のキーワードをつなぎ合わせた場所に「ビー玉(コレ)」はあった。人目を避け、火の神様の御神木の根元に埋められていたのだと実際に探しに行ってくれた「地上探索型・(イチ)」が教えてくれた。ただ一つ問題がある。

長い眠りから覚めた「ビー玉《記憶の欠片》」は時を重ねいつしか負の感情だけを残し、その形を変えてしまう…大切な約束が、無念の情へと…。


「そうか…」

 彼は小さく呟く。

 その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。全てを思い出したのだろうか…。

「……」

 塁は、彼が話し出すのを待った。そして。

「ありがとう、美人さん…」

 彼は静かに、けれどもどこか満足したように笑う。先ほどとは違う色を眼鏡の下のガラス玉に宿して。

「そうか…彼は逝ったのか…」

 天井を見つめ、彼は更にその奥にあるであろう空に思いを馳せた。

「彼は長い間苦しんでいました」

「そうじゃのう」

 塁の言葉に、彼は小さく相槌を打つ。全てを悟ったように…。

「すみません…」


 それ以上を告げるのはさすがに躊躇われて、塁はそっと眼を伏せる。その手に暖かな手が触れた。

「ありがとう、()を救ってくれたんじゃなぁ…」

「…いえっ、でも」

「辛い思いをさせた…君にも、彼にも」

「……」

「随分、待たせてしまったなぁ…」


 そう言うと、金子氏の身体が白い光に包まれていく。

 優しく暖かい光に…彼は驚いた様子も見せず塁の方を見た。

「ふぉっ、ふぉっ…彼が呼んでいる…私はもう行くよ」

「…はい。ご一緒します…」


 塁の言葉に彼はもう一度微笑みを向ける。そうして依頼人「金子高久」氏は「記憶管理事務所」を後にした…。


                     *

 あぁ、暖かい…。

 眩しいお天道様に、木々の木漏れ日が揺れる。

 私は彼の背中を何処までも追う。ランニングシャツに短パンを履いた「裸足の少年(ともだち)」の後姿を。彼は時折振り返り、私の姿を確認しては悪戯っぽく笑って見せた。


―早く、来いよー―


 私はその背中を追いかける。

 あの日交わした―再会の約束―は叶わなかったけれど、随分と長い事待たせてしまったけれど…。

 一緒に埋めた「ビー玉《宝物》」もこの手に戻ってきた。

 懐かしい君の思い出と共に…。


 さぁ、一緒に行こう。

 また…一緒に遊ぼう…。


                  ――記憶の海編・完――


「記憶の海ー終章ー」如何でしたでしょうか?

言葉や描写が足らずに、中々上手く伝える事が出来なかったのが心残りです^^;


☆祝・完結記念☆

ここで、彼らに登場して貰いましょう(笑)


作者「お疲れさまでした!」

 雪「っした」

 J「ありがとうございます」

 塁「雪、ちゃんと挨拶しなきゃ」

   雪の態度に眉根を寄せる塁。どこ吹く風な雪。

作者「いいよ、いいよ、塁」

 塁「…すみません、本当に」

 雪「お前は俺の親か?」

   深々と頭を下げる塁に、呆れ顔の雪。

 J「これって本編じゃなかったんですよね?」

作者「う~ん…本来なら、君の話だったんだけどね…」

 雪「や~い、主役の座奪われてやんの」

 J「うっ…」

   雪の心無い言葉に傷つくJ。慰めようとする塁。

 雪「そもそも、よく何の設定も無いのを書こうと思ったよな」

 塁「そうですよ!…どうなる事かとヒヤヒヤさせられましたよ…??」

作者「…何か、浮かんじゃったんですよ(汗)」

 J「何か…で俺の話は消えたんですか!?」

作者「消えてないって…」

   作者に詰め寄るJ。ちょっと鼻息荒い…。

 雪「…で、例の金子のジジイはどうなったよ?」

 塁「僕が、ちゃんとお送りしたよ」

 J「彼の心残りって、結局何だったんです?」

 雪「あっ、それ俺もちょっと疑問(笑)」

作者「う~ん…」

 塁「彼は昔、ほんの少年だった頃なんだけど…約束を交わしたんだ」

 J「約束ですか?」

 塁「うん。戦争で離ればなれになる前に-再会-の約束を、あのビー玉と共にね」

 J「それが記憶の欠片ですか?」

 塁「うん、そうだよ。でも約束を交わした相手は、その約束をしたすぐ後に爆撃によって命を失っているんだよ」

 雪「あの負の塊の持ち主だな…」

 感慨深そうに腕を組む雪。Jも黙り込む。

 J「無念だったろうな…」

 雪「あぁ」

 そっと、首を横に振る塁。

 塁「彼も金子氏も、これで救われたんだよ…きっと」

 微笑む塁に、頷く二人。作者控え目に…。

作者「説明不足でごめんね…ホント」

 雪「まっ、次回頑張れ(笑)」

作者「うぅ…(涙)」

 J「次回からは俺の話-水底の涙―に戻ります!」

 塁「これも大事な話だしね」 

作者「頑張って書きます…」

 雪「それじゃあ、次回」


 全「-水底の涙ーで、お会いしましょう!」



 *おまけ「後書き」終了。

 ありがとうございました^^



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