表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノスタルジア管理局  作者: 彩人
序章~記憶の海
17/86

記憶の海・7


 辺りはより一層闇を濃くし、空も灰色へと移った。

 多分…もうそこまで来ているだろう…。


 雪は一人、森の奥まで足を踏み入れ今は目的の座標の前にいる。多分今頃、地上探索型である「(いち)」も例の場所に向かってくれているはずだった。


(「大きな木」、「祠」、「火の神様」・・・「整理された道」・・・)


 「金子高久」氏からの手掛かり…キーワードを打ち込んで導き出された場所。

 この「記憶の海」自体には、その場所は存在しないが…地上とこのセカイとを照らし合わせた時に重なる場所はある。それが雪が今立っているこの場所だ。

 何もない、先程までと何も変わらない木々と草の生える寂しい場所には、暗く怨念のようなものが渦巻いているように見える。

 

…悲しみの記憶。

 誰かの悔恨や悲痛の記憶が、この地で浄化されることなく残ったのだろう。

 最初は草木の種ほどの大きさだったものが、いつしかこの地にある他の多くの悲しみの記憶を集め次第に大きな負の塊になった。そう考えるのが妥当だ。


 空気が重い…。

 どんどん辺りは光を隠し、暗く落ちていく。もう、後戻りは出来ない。


(さて、鬼が出るか蛇が出るか…)


 含み笑いを浮かべると、雪は徐に左太ももに装着してあった「警棒」を取り出す。これも「管理官七つ道具」のひとつ。全ての記憶を所有する「記憶の海(このセカイ)」には、良い記憶もあれば悪い記憶もある…その殆どは時間をかけ、このセカイで浄化されるのだが時折「暴走」を引き起こす事がある。丁度、今のように…。

 暴走を止めるには記憶自体を力づくで捩じ伏せるか、あるいはその記憶の元を地上で探し「浄化」させるか…そのどちらかしかない。

 元がないのなら力づくで捩じ伏せることしか出来ないが、今回の「暴走」には「金子高久」氏の探す「記憶(落し物)」が深く関わっているのだ……()が間に合えば良いのだが…。


「頼むぜ…ホント」

 

 迫りくる黒い負の記憶(カゲ)を目前に控え、雪は怯むことなくその時を待つ。彼が地上で探す間の足留めでいい。このセカイに眠る他の記憶を壊さない為に、その為の「盾」となろう。そう決意して息を飲む。次の瞬間、雪は駈け出していた。


「っだぁぁぁぁ…」


 渾身の力を込めて一撃を繰り出す。

 これ以上その(カゲ)を増大させるわけにはいかない。少しでも浄化させなくては…。

 雪の一撃を喰らい、塊は一瞬揺らいだが、大気の様な不気味な塊は瞬く間に姿を戻し……不意にこちらを見た気がした。そして…


「-っ!?」


 影の中から黒く柔らかい「腕」の様なものが伸び、雪の体を直撃する。体はいとも容易く後ろへと弾き飛ばされ、その衝撃で木の幹へと全身を強く打ちつけられた。爆発の様な轟音と共に、負の塊(カゲ)から叫びにも似た怒声が放たれる。胸が押し潰されそうだ…。


「ぐっ…っはぁ…」


肩で荒い呼吸をする。

一瞬の判断で防御態勢を取ったものの、体への衝撃は生易しいものじゃない。

骨が数本折れてるんじゃないかとさえ思うほど、体は軋み痛みを訴えていた。それでも、今ここで負の塊(こいつ)を見逃すわけにはいかない…見逃せば、他の記憶と共に「記憶の海(このセカイ)」が危ういのだ。


口内に広がる血の味を吐き出すと、雪はよろよろと立ちあがる。

霞む目を擦り、もう一度警棒を握り直すと今度は両手で掴み左右に引きだす……まるでヌンチャクのように細い鎖で繋がれたソレは 、原形を留めずに鞭のような形式へと移行した。

捕縛用の武器へと持ち替え、雪は再び忍び寄る(カゲ)と対峙する。


「チッ…」


 全てが一瞬で決まるような予感がした。

 近づく塊を捕えるために間合いを測る…もう少し、あと数歩…心の中で詠唱を開始すると武器に気を送る。武器を特殊な霊気でコーティングする為の詠唱。管理官ならば別段、特殊な事ではない。

 意識を目前の敵に向けたまま徐々に気を込めると、次の瞬間ソレは動き出す。


「くっ…」


 予想外に早い動きに雪は大きく右に飛んで、その一撃を避ける。だが、すぐに別の触手が雪を捕え、その小さな体を弾き飛ばした。

「っ!!」

 再びの衝撃を覚悟して歯を食いしばる。

 今度ばかりは動けなくなるかも知れない…。そんな考えが頭の中を過った。

 それなのに…。



 衝撃は、いつまで経ってもやってこない。それどころか、体の何処にも痛みはない…。

 恐る恐る目を開けると、雪の体は宙に浮いていた。


「ったく、無茶なんだよ!テメエにはな!?」


 聞き覚えのある声に振り向く。

 そこには同じような背格好の少年が呆れ顔で立っている。

 そして、雪の体は優しく地面に下ろされ「大丈夫か?」と気遣う声がかけられた。


「時間屋!?…なんで」

「うるせぇな。テメエは黙って引っこんでろ」

「なっ」

「邪魔なんだよ」


 偉そうな物言いの「スギ」に反論しようと雪は体を動かすが、鈍い痛みに眉を顰める…今更になって、最初の衝撃が響く。その様子を見てか「凌」は、追いやるように雪の体を優しく背に庇うと、二人は「負の記憶の塊(カゲ)」と対峙した。


「へっ、やっとお出ましか…」

「スギ、無茶はするなよ」

「誰にモノ言ってんだよ」


 スギは楽しそうに不敵な笑みを浮かべると、凌に向かって視線を送る。

 戦いは始まろうとしていた…。


「負の記憶の塊」と対峙した雪だったが、圧倒的な力に気押されてしまう…。

その危機を救ったのは、あの変な二人「時間屋」だった。

次回、Jとラヴィも混入!!

そして、雪の秘密が明らかに(笑)





どうも彩人です^^

予定通りの更新ですが、内容的には半分くらいになっています(汗)

それというのも表現力が少な過ぎて…戦闘(乱闘?)シーンは難しいです…。

次回更新は遅くても25日までには…^^;

宜しくお願いします☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ