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ノスタルジア管理局  作者: 彩人
序章~記憶の海
10/86

雀と狐

  

閻魔庁・マザーコンピューター『記憶の海』。

そこにはこの世界に生きとし生けるもの、その「全て」の記憶や、情報が記録されている。


「雪、記憶の海(あそこ)に行くって本当?」

自席でお茶を飲んでいた雪に、一人の女性が近づき尋ねる。雪も女性に気づき顔を上げた。

「お~・・・ホント」

「一人で?」

「いんや・・・新入りと」

淡々と話す二人の会話を気に留める者はいない。女性は「新入り」と言われ少し考える仕種をする。

「Jの事だよ、狐」

その時、塁が静かに後ろから声をかけた。彼女は振り向き、更に首を傾げる。

「J?」

聞きなれない名なのか、彼女はピンとこない様子で辺りを見回した。そしてコピー機の前にいる人間に気づく。Jだ。いつもの「コピー機(定位置)」に彼はいた。

「J、ちょっと来い!」

雪も彼女の視線の先に気づき、軽く手を上げJを呼び寄せる。声をかけられるなり、Jはすぐに作業を止めて走ってきた。

「・・・・なんです?雪さん」

「狐、これがJ」

「うん」

Jは何の事だか分からずに目を瞬かせるが、目の前にいる女性と目が合うと少し照れくさそうに笑って見せる。一方、女性の方は笑みを返す訳でもなく、相変わらず淡々と言葉を返す。

見たところJよりも年上な女性はストレートの髪を背中までたらし、涼やかな瞳と、その色が印象的だった。

(あれ・・・・なんか見た事ある・・・?)

誰かに似ている気がするが、それが誰だか分からない。Jは頭を悩ませる。

「どうしたの、J?」

その様子に気がついて、塁が声をかけると三人の視線はJへと向けられた。

「いや・・・あの、」

口ごもり、あたふたとするJに三人は不思議そうに顔を見合わせる。その時。

「よっ!新入り!」

「うわあああ」

唐突に肩を叩かれ、Jは叫び声を上げた。こんなことをする人間はひとりしかいない。

「雀さん!」

いつも通り振り向いた先にいる彼に、Jは抗議した。雀は「まぁまぁ・・」と一瞬宥める仕種をして、次には他の三人に向き直る。

「狐!捜してんだ」

「何?」

この女性は誰に対しても端的な物言いをする様で、誰もそれを気にしない。むしろこれが彼女にとっての普通なのだ。

二人が話す様子を見ていたJは、そこで初めて「何か」に気づき、そのままを口にする。

「二人・・・・似てません?」

「狐」を見たときに抱いた感情は、「雀」を横に並べたときに当てはまった。二人はその顔つきから、目の色素までがよく類似している。

Jの言葉を聞いて塁は驚き、雪と雀に至っては呆れた表情を浮かべた。

「・・何を今更」

「知ってるものだと思ってた」

「普通気づくだろ~」

三人はそれぞれ思い思いを口にしてから、溜息を漏らす。

不意に雀が狐の肩を抱き寄せ、正面を向いて横に並ぶ。真横に立つと本当によく似ていた。

「こいつら、双子だよ」

茫然とするJに、雪は呆れ顔で告げる。雀は悪戯っ子のように笑みを向け、一方の狐は雀に肩を抱かれたまま立ち尽くしていた。ふと塁が説明してくれる。

「綾瀬 雀・狐。彼らは二卵性双生児の管理官なんだよ。雀は「情報」、狐は雪と同じ「探索方」」

管理局の中で唯一双子の彼らは、その変わった名前も相まって有名人らしい。ただ、お互いに違う仕事を任される事が多く、二人がこうやって揃う事は珍しいそうだ。

「双子・・・」

Jはその言葉に納得する。最も性格は大分違うようだが・・・。

「それより、お前ら、行くんなら早くしろよ」

雀が思い出したように三人に声をかける。先程まで彼にじゃれつかれていた狐はいつの間にやら姿を消していた。

「あ~・・・・行くよ」

雪は頭を掻いて重い腰を上げる。

「記憶の海」・・・Jには想像もつかない場所。彼がこんな風に腰を重くするほど、その場所は大変なところなのだろうか。Jは思案を巡らせる。

そして、気づくと知らない場所に立っていた。

「あれ、いつの間に??」

「今、自分で歩いてきただろうが」

どうやら考え事をしている間に、移動して来たらしい。その間の記憶が抜け落ちていた。

地下室の様なうす暗いコンクリート造りの部屋の中。苦笑いになるJを後目に、雪は部屋にあるロッカーを徐に開け何かを取り出した。

(ジャンバー?)

雪の手には白いコート・・・いやジャンバーのような物が数枚握られている。

「ほらっ」

それを一枚Jに向かって投げると、自分もそれに袖を通した。

フード付きのそれは、少し長めで背中に何やら文字が刻まれている。「N・C・O」そう見えた。

「N・C・Oってなんですか?」

思ったままを口に出す。雪は反対を向いたまま「良いから早く着ろ」と答えてはくれない。

仕方なく言われるままに袖を通し、雪の後に続く。その場には雀と塁も立ち会っていたが、どうやら行くのは俺達二人だけらしくJは余計に身を固くする。


知らない「未知の世界」へと、Jは足を踏み入れようとしていた・・・。



前回「記憶の海」編になるとか言っときながら・・・話が逸れちゃった(^_^;)


とりあえず、新キャラ「狐」ちゃんの登場です。やっと出せた・・・。雀と狐は対の存在なので早めに出したかったのですよ!

・・・というわけで、次回こそ突入します!

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