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第94話「舞踏会の後でも宴は終わらないようっス……」

「あー、皆、ご苦労であった。

 特に、ドラゴンに治癒を施したクレア嬢。見事な働きだった」

「あ、こ、こ、光栄です!」


はい、ドラゴンさんを浄化させた後、また謁見室に戻ったクレアです。

現在王様に表彰式……違いますね、何って言うべきなんでしょう。

とにかくお褒めの言葉をいただいている所です。


城内はまだ慌ただしく、フルーヴブランシェ侯爵様や所長さん達は

後片付けとかに駆り出され、この部屋にはいらっしゃらないです。

お姉さまがボコボコにしちゃった兵士さん達は私が速攻で治療しましたけど、

建物にもダメージが結構ありましたからねー。

大半が侯爵様のやらかした事ですが。


『お(ねー)さんはとりあえずまだこの国では指名手配だからねー』

『ウェンディエンドギアス様もこの子を心配してらっしゃいますから、

 とっとと戻らせていただきますわ』

と、レイハさんとサクヤさんは、

ドラゴンさんを早急に森に返すという事で戻っていきました。



それにしても、再度謁見し直す感じになりましたけど、

ずいぶん人数が減ったっスね。

おおかた半分くらいの人数になって大分すっきりしました。

なし崩し的にお姉さまの断罪はしれっと無かった事になったようですけど……、

それで良いんだろうか。


「予想以上に汚染されていた貴族が多かったなぁ、

 釣り出して一網打尽というのは甘かったか」

「それだけ、魔力量偏重主義がまかり通っていたのですよ」

「うーむ、 論功行賞で魔力量による差を付けた覚えは無いんだが」

「それでもですよ、見せかけの魔力量とはいえ、

 上回ったという優越感に対して評価がそれでは、悪化する一方でしょう」


しかし自分がぶっ壊したお城の後片付けを他の侯爵様達に押し付けておいて、

自分は国王様に苦言を呈する侯爵様って、かなり良い性格してますねー、

温厚そうな見た目ですけど、さすが宰相なんてやってるだけはあるっス。


「お父様、陛下は”汚染”とか仰っておられますが、

 もしかして心当たりが最初からあったのですか?」

「まぁ実はね、公然の秘密ではあったんだよ。

 後天的に魔力量を爆発的に増大させる薬、我々は”魔王薬”と呼んでいますがね」

あー、何か聞き覚えある薬っスね、つい最近見た気がするっス。


「それって、魔技祭(マギカフェスティバル)での、」

「恐らく、同じか似たものだろうね。だが予想してた以上に悪質な薬だ。

 依存症になるのはまだしも、闇の魔力に目覚めてしまい、

 魔界への”ゲート”を開く切っ掛けになるとは」

「近年、その薬はあちこちに出現していてな、王城や魔法学園など、

 魔力の高い者が集まる所で特に多く摘発されている。

 貴族の間どころか、兵士にまで広まってるようなので、

 今回の騒ぎを利用させてもらったが……。


 とりあえず、汚染されてしまっていた者の身元を再度洗い直すのと、

 入手経路の調査は引き続き行え」

王様や侯爵様は色々と腹芸で以心伝心かも知れませんけど迷惑な話だったっスね。

そういえば、ボルツマン伯爵も汚染されていた、って事は、

息子のエリックと同じ事をやらかしてたって事でしょうか?


「魔力持ちが後天的に魔力が増大する、

 という事はままある事なんだけど、近年は数が多すぎてね」

「さっきのボルツマン伯爵もその口らしくてな、最近宮廷で発言力を増していたんだが、

 息子が魔技祭でやらかした事が原因で失脚しかかっていた所にあの告発でな」

あー、政治劇でよくある、突然台頭してきた急進派だかを

とりあえず抑える為に利用した、って所ですか。

ボルツマン伯爵も、息子の事で焦っていた所に、

あのフォボスにつけこまれたわけっスね。

つくづくこの国は魔力による評価が偏ってますね。


「で、そのフォボスとかいう奴は、

 あのクレア嬢の魔法で浄化とか始末とかできたのか?」

「あまり期待できないでしょうね。ロザリアの話からすると、

 魔技祭(マギカフェスティバル)や神王の森の時でも、いつの間にか姿を消していたわけですし」

「……今回は汚染者の洗い出しができた事だけで良しとするか」


「でも今回、最強クラスのドラゴンは対処できたんだし、

 あまり怖がる必要は無い、のよね?」

「お姉さまー、あんなのもう一度やれ、と言われてもやりたくないっス」

「クレア様、陛下の御前です、口調にご注意を。

 今回は緊急時でしたが、もうお嬢様達はあのような事はお控えください。」

「ええー、どうしてよ」

「ドラゴンを討伐する侯爵令嬢がどこにいるというのです。

 侯爵様、今後は仮にドラゴンが出て来たとしても、

 王宮側で対策できるように準備をお願い致します」

アデルさんの進言に、侯爵様や国王様までも気圧されてますね、

こうしてみると、偉い人ってのは色んな人から色んな事言われて大変っスね。

しかも24時間年中無休で……。


「ま、まぁそうだね。とはいえ、万が一の為にクレア嬢の為に光の魔石を研究し、

 それなりに備蓄しておいた方が良いだろうね」

 そうなると、ふむ、鉱山を更に拡張し、生産量を増やす必要がありますね。

 選別にはまたクレア嬢の協力を得なければなりませんが」

「そっちは後々普通の魔石の備蓄にもなるからどんどんやれ。

 普段なら値下がりしてしまうが備蓄の為なので値段は据え置きにしろ。

 鉱山関係者も良い稼ぎになるだろう」

「ははっ、早速鉱山関係者と交渉し、拡張するよう要請いたします」

眼の前で今後の対応をてきぱきと眼の前で決めて行くのを見るとやっぱ貫禄あるっスねぇ。

私も、魔石の選別でまたバイトができそうで嬉しいです。


「とはいえ、宮廷内にもそういう汚染が広がっているのは確実でしょうね」

「上級貴族にも割といたからな。妻子である女性の方も推して知るべしだろう」

「となると、誰かに潜り込んでもらって内偵でもしてもらいましょうか?

 それなりに腕が立って、宮廷内にいても怪しまれない人物に」

「よし、ロザリア嬢とクレア嬢に、宮廷内に潜り込んでもらおう」

「え」

「は」

私とお姉さまが変な声を思わず出してしまっただけでなく、

その場の全員があっけに取られましたよ、なんですかその即決は。



「確かもうすぐ魔法学園の夏季休暇だな? 2月程あるのは今も変わらんな?」

「は、はぁ、9月半ばごろまでは」

「まぁ休みを丸々というのもかわいそうだ、

 1月だけ行儀見習いとして登城してもらい、侍女になってもらうのはどうだ?」

「陛下! そんな勝手な事を! 断罪だの婚約破棄だのの上に、

 ロザリアをこれ以上困らせないで下さい!」

おお、特に発言の無かったリュドヴィック様が抗議に回りました!いいぞもっとやれ!

私も突然そんなわけのわからない事を命じられても困るっス!


「だからリュドヴィック、父上とか呼べよ……。

 あ、ロザリア嬢の王宮での部屋は

 王太子妃の間にしとくが異存は無いな?」

「異存はありません」

こいつ秒で裏切りやがったー!

えーそうでしょうねー! そうもなるでしょうねー!

王太子妃の間って事は、自室に物凄く近い所に1月だけとはいえ、

お姉さまが住む事になるわけですからねー!


「異存はあるに決まっているでしょう! 私は歩いてでも通えますよ!?」

「侯爵はどうだ? きちんと監督させるから心配はしなくていい。

 何しろまだ成人前だからな」

「はぁ、まぁ、私も節度ある関係を約束していただけるのであれば」

お姉さまの抗議も虚しく、侯爵様もあっさり承諾してしまいました。

これではもう断れる雰囲気ではありません。

ああ、私の平穏無事な生活が……夏休みが……。



「というわけで、よろしく頼む」

「いえよろしく頼まれましても……、侍女って、何をすれば良いんですか?」

「そうだな……、とりあえず女官……をいきなりは無理か。

 王族の侍女をしてもらう事になるな?」


王様じきじきにお願いされましたけど、お姉さまも私も困惑するしか無いです。

アデルさんは……ダメだ、

『侯爵令嬢として凄くまともで良いことです。なんと普通な事か』

と目を輝かせてます。

そりゃねー、年頃の貴族のお嬢様が行儀見習いとして王宮に上がるなんて、

乙女向け小説の定番ですもんねー。



夏休みに入ってすぐ、という予定を立てられてしまい、

謁見も終えてとぼとぼと帰ろうとした時、

フェリクス先生が現れて、私達に声をかけてきてくれました。

「色々と災難だったね? クレアさん」

「あ、フェリクスセンセイ、ど、どう、したんですか?」

「僕は城に居候させてもらってるからね。

 先程の騒ぎの治療とかが終わって、君を探してたんだよ」

「はえっ!? 私、です、か?」

「うん、何だかバタバタしちゃったんだけどね?

 クレアさん光の治癒魔法使えるようになったんだよね?」

「一応、そのはず、ですけど。

 つい先日、エルフの長老さんに色々と教えていただきまして」

「よし、ロザリア様、もしかしたら、貴方のお母上は完治するかもしれない。

 ちょっと会わせていただけないだろうか」

「完治って、まだまだ先では? あ、クレアさんの!?」

「そういう事、すぐ治療させてみたいんだよ、ダメかな?」



「さて陛下、私も帰らせていただきますが、魔王薬の調査、半ば口実ですね?」

「ああ、あのフォボスとか言う奴が再度襲って来るなら、

 確実にクレア嬢を狙うだろうからな」

「やはり彼女は”聖女”ですか?」

「わからんが、最近巷でも話題になりつつあるだろう、救護院の天使だとか何とか」

「それは彼女の人柄によるものだとは思いますけどね」

「どちらにしてもだ、光の魔力属性を持って、

 あれだけ話題になっていたら警護は必要だろう。

 封印が弱まる時期に彼女が出現した、偶然とは思えん。

 さっきの奴は明らかに2人を標的にしていたぞ?」

「とすると、手元近くに置いて安全を図った上で、

 場合によっては囮になってもらうと?」

「俺も何事も無いのを願っているよ」



王様と何か話をしておられた侯爵様もすぐ追いつき、

私達はローゼンフェルド邸に戻ってきました。

つい先程ここを出たばかりなのに、なんだか物凄く久しぶりな気がします。

……なんか横の門とか窓の所壊れてるけど大丈夫だったんだろうか。


あ、侯爵夫人が出迎えにでてこられました、大丈夫だったようですね。

良かった、お姉さまとか侯爵様が屋敷の惨状を見て殺気立ってましたからね。

回れ右して、また城に殴り込みに行きかねない所でした。


「あら皆さんおかえり、あら、フェリクス先生まで。

 晩(さん)の時間なのだけど先生もいかが?」

「いえ、私はちょっと寄っただけなのですよ。

 侯爵夫人、少々よろしいですか?」


「では、フロレンシア侯爵夫人。治療の一環として、

 クレアさんの治療を試してみたいんです。よろしいですか?」

「良いも悪いもありませんよ、

 フェリクス先生のおかげでここまで良くなったのですもの。

 よろしくね、クレアさん」

「は、はい、それではちょっと失礼します」

「クレアさん、実験するようで申し訳ないが、

 最初はできるだけ軽く、少しずつ治していこう。

 どれくらい効果があるか見てみたい」


侯爵夫人の治療を試してみる事になったのですが……、

うわー、お姉さまの家族どころか、

広めの部屋でする事になったものだから、

屋敷中の人が見に来ちゃってますよ、緊張するなぁ。

ともあれ、私が迷っていては先に進みません、

ここは杖の力を借りてでも、

ゆっくり、ゆっくり慎重に治療していきましょう。


「どう、ですか? フェリクス先生。私の指先には、

 もうそういうのが感じられないんですけど」

「うん、ちょっと診察してみるね。侯爵夫人、少し良いですか?」

フェリクス先生の助言もいただきつつ、治療を終えた私は疲れ果てていました。

いや最初から何も問題は無いんですけどね、

どんどん観客が増えるんだもの……。


「うん、経過観察は必要だとは思うけど、完治したとみて良いと思うよ。

 半年ほど繰り上がって良かった」

「あらまぁ、ついこの間までもうダメなのかしら、

 と自分でも思っていたのに……ロザリア?」

「……お母様、お母様あああああああああ!!」


ああ、お姉さま、侯爵夫人に抱きついて泣いちゃいました。

そりゃそうですよね、ゲームだと悪役令嬢になる切っ掛けになるくらい、

色々と追い詰められる原因が解決したわけっスから。

いやー、良かったっスね。

とか思ってたら、突然お姉さまが私の手を取って、真剣な目で私を見つめてきました。


「クレアさん、貴方には感謝してもしきれないわ。

 ありがとう、本当にありがとう……」

「えっ? あー、いえ、私もお姉さまに色々と助けていただきましたし」

とか言ってると、私まで泣けてきましたね。

あのゲームでは絶対に見る事のできない光景です。

感極まったのか、お姉さまは私を抱きしめて、2人して号泣してしまいました。。

皆泣いてますよ、ご両親や屋敷の人達も。

ああ、私も頑張ってよかった、転生してきて良かった。

いつの間にか、私たちは皆からの拍手に包まれていました。



尚、その頃ローゼンフェルド家の忠臣であり執事のハンスは、

ローゼンフェルド領へと今も必死に向かっているのだった。

その事を忘れていたローゼンフェルド侯爵が、

翌朝になって慌てて使いを出し呼び戻す事になったが。

物凄く中途半端な距離だった為に戻るのにも時間がかかり、

疲労困憊で戻ってきたハンスに、

侯爵が大慌てで謝罪したのは別の話になる。


次回、第8章「悪役令嬢とメイド修業と優雅な?お茶会」

第95話「お城の中は優雅とは程遠いんですけどー!?」

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