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第91話「黒幕登場、まぁ、本当に真っ黒な相手なんですが。」

あ、クレアです。

謁見室で暴れていた人が全員大人しくなりましたが、

アデルさんの表情はどうも険しいです。

最近私も、アデルさんの微妙な表情の変化が読み取れるようになってきたんですよねー。


「アデルさん、どうしたんですか? 一応、もう終わったんですよね?」

「魔力の気配の総量が変わっていません」

「? 魔力、ですか?」

「クレア様、先程までの皆様は過剰摂取(オーバードーズ)状態で暴れ回っていましたが、

 皆様を大人しくさせて治療し終わっても、

 その気配の総量は変わっていないのです」

「え、だって闇の魔力に侵食されてたのは私が治療しましたよ?」

「その魔力そのものが消えたわけでは無いのでしょう?

 ではどこに行ったか、という事です」

私とアデルさんが会話してると、

突然、アデルさんの頭のゴーグルに何か光る表示がされました。

アデルさんもそれに瞬時に反応し、とある方向を向きます。

「魔力は、全てあそこに集まっていたようですね」


そこに闇がありました。


「な、何だあれは……」

「フルーヴブランシェ卿、お下がり下さい。

 単なる球体ではありませんね、全く光を反射していない。

 兵士たち集まれ! 陛下をお守りするんだ!」

侯爵様方も気づいたようです。即座に王様を守れと命令する辺り、

ああ見えてもローゼンフェルド家は武門の家柄というのがよくわかりますね。

私達もその突然? 表れたっぽい黒い球体に注目しています。

大きさは大人の頭程ですが空中に浮いたまま動きません。


「ロゼ! ロザリア! 無事か!」

「もう、リュドヴィック様、今頃になって、遅いですわよ」

おや、先程の騒ぎを聞きつけたのか、王太子様までやってきました。

何だかんだ言って心配だったのか、近くに控えていたようです。

あとお姉さま、口調に反して顔がにやけていますよ。


「いや、私はロゼを信じているからこそだな、その……」

「でもそのせいで、先程危ない時に側にいてくれませんでしたよね?」

「ぐっ……それはすまないと思っている」

「あー、寂しかったですわぁ。本当に信頼して下さっているのかしら?」

「いやロゼ! 私はだな!」

おいバカップル、目の前によく判らんものがあるのに、

ここぞとばかりにイチャつかないでもらえますかねぇ!?


さて、そうこうしてると、黒い球体に動きがありました。

徐々に姿を変え、人の姿を取り始めたんです。

長いコートにすっぽりとフードを被っているので

顔も見えませんので性別もはっきりとはしませんが。


『フム、コノモノハ失敗シタカ。マァ良イ、魔力ハ十分ニ収穫デキタ。

 イチイチ出向クノモ面倒ダカラ持タセタノガ役ニ立ッタナ』

その声は、魔技祭(マギカフェスティバル)や神王の森の時に聞こえてきた”あの声”でした。

どうやら私たちはついに黒幕のお出ましに遭遇したらしいですね。


「今までの事の原因はお前か! お前は一体何者だ!」

『ワレカ? ワレハ断片ユエニ、名前ヲ聞カレテモ困ルナ。

 ”フォボス”トデモシテオク』

「フォボス(恐怖)?」

王太子様の問いに謎の人物は答えたんですが、どうも要領を得ませんね。

いえ、そもそも名乗ってすらいないので、素性が知れなくても仕方ないのですが。


そのフォボスと名乗った人物は謁見室の様子をぐるりと眺め、

私たちに目を留める。

というか、これ私を見てません? ヤバくないっスか?


「オ前ダナ、マサカ治癒デキル者ガイタトハ、

 ”強制力”モ働カナクナッテイルヨウダ。

 ドウヤラカナリ事象ニズレガ発生シテイルノヲ見落トシテイタ事ヲ認メヨウ」


なんか良くわからない事言ってますけど、

やっぱりゲームの強制力を意識はしてたみたいっスね。

このまま引き下がってくれないかなー。

「コレ以上治癒サレテハ困ルノデナ、オ前ハトニカク邪魔ダ、

 ココデ排除サセテモラウ」

はいダメでしたー!


「アデルさん、あれ、やっぱ敵、ですよね??」

「恐らくは。やはりクレア様は下がっていて下さい」

「陛下! ここは危険です。お下がり下さい、殿下もです」

「いやしかし、私はロゼをだな」

「リュドヴィック様、何をおバカな事を言っているんです。

 貴方王族を守るのが私達の役目ですわ」

アデルさんが私をかばうように、

向こうではフルーヴブランシェ侯爵が王様と王太子様を守ろうとしてくれてますね。

そして王太子様はお姉さまに良い所を見せようとしたのを、

そのお姉さまに一蹴されております。


「来ます!」

「あーちょっと待って下さい! もしかしたら!」

相手が動きを見せたのをアデルさんが警戒するので、

私はあわててアデルさんの籠手(ガントレット)魔力付与(エンチャント)を行いました。

急いでだったので大した量は込められませんでしたが。


フォボスと名乗った相手はアデルさんと私に狙いを定めたようで、

こちらに向かって来たのです。

私が魔力を込めた籠手(ガントレット)を見たフォボスは、

一瞬だけ動きを緩めましたが、そのまま拳を振り上げてきました。

その腕は伸びて、片刃の剣のように変形しています。


「むん!」

それに対してアデルさんは、

振り下ろされた相手の剣を両手で拝むように受け止めました。

リアルで真剣白刃取りってできるもんなんですねー。

すると、私が込めた魔力が効いたのか、フォボスの剣が木端微塵になりました。


「よっしゃ効いた!」

「えぇ、これは……」

いやアデルさんどうして引き気味なんですか。

「いえ眼の前で相手の腕が木端微塵になれば誰だって引きます」

あ、そうか、あれ腕でした。

「まぁ気にしない方向で。多分行けるかなー、と、光の魔力込めたんです」

「ふむ、闇の魔力特効ですか、感謝いたします」


「マァイイ、ナラバ次ダ!」

今度はフォボスの腕が伸びてきて鞭の様にしなりながら襲い掛かってきます。

「遅いです」

アデルさんはそれをかいくぐり、

カウンターでフォボスの顔面に掌底を打ち込んでいます。

「グフッ!」

それを受けたフォボスは怯み、少し後ずさりました。

正体不明でもダメージは受けるようです。


「今のうちに、もう一発!」

アデルさんはそのまま追撃の回し蹴りを放ちます。

が、それは空振りしてしまいました。


「なっ!?」

「小賢シイマネヲスル」

そう言ったフォボスは再び黒い球体へと変化していき、

アデルさんの攻撃をすり抜けてしまいました。


「自在に形を変えられるのですか、厄介ですね」

「厄介ナノハソチラモダ、本来ナラワレニ触レラレタダケデ侵食ガ始マルモノヲ」

えっ何ですかそれ、とっさに思いつきでやっただけなのに。

「……クレア様、本当に感謝いたします」

アデルさんは私に礼を言いつつ構えなおしました。


『ナラバ、コレデハドウダ』

そう言うと再び黒い球はまるで巨大なムカデのような姿へと姿を変え、

先ほどとは打って変わって素早い動作でアデルさんへ突っ込みます。


「速い!」

アデルさんはそのスピードに対応するより攻撃を受け流そうと、

両腕を前に構えて防御態勢に入ります。

しかし、

黒いムカデはアデルさんの横を通り過ぎ、その背後にいた私の方へ向かってきたのです。

「ちょっ! こっち来るんスか??」

私は慌てて走り出し、その場から離れようとします。

『逃ガスカ』

ならば! 今こそ変身っス!

私は適当に人がいない所まで逃げ、そこでドレスアーマーを展開しました。

ついでに、光の魔力を全身放出して自分の体を守ります。


「どぅおりゃあああっ!」

そして、私は鎧を身に纏った状態で相手を弾き飛ばしながら飛び上がり、

上空から相手を見下ろしました。天井の高い謁見室ならではですね。


「うわキモ!」

さっきの黒いムカデは、

巨大な芋虫の体に無数の人間の手足がくっついているような姿だったんです。

変身するにしても、もう少しこう、何とかならなかったんですかね?

しかし気持ち悪がってもいられないので、私は杖を取り出し、

お姉さまのように魔法刃を形成しました。

そして落下する勢いを利用して、一気にその異形を切り伏せます。

が、また空振り。

ムカデはその全ての手足を駆使して窓際にまで凄いスピードで逃げました。


『ナルホド、オ前達ヲ侮ッテイタ、デハ最後ノ手段ヲ取ラセテモラウ。

 ドノ道、増援ガ来ルマデノ時間稼ギダッタノダ』

「増援?」

私が聞き返したのに答えず、ムカデは窓を突き破り、お城の外へと逃げていきました。


「クレアさん! 大丈夫?」

「クレア様! ご無事ですか?」

お姉さまと一緒に駆けつけてきたアデルさんが私に声をかけてきました。

まぁ大丈夫も何も、逃げ回っていただけですしね、私。



「逃げられたか、とりあえず皆無事だな?」

「はい、全員クレア嬢の治癒魔法で回復したようですが、念のため拘束しました」

とりあえず危険は去ったので、いつまでも床に大勢の人を寝かせておくわけにもいかず、

王様は宰相である侯爵様とで事態の収集に動いています。


「ひとまず汚染された者の洗い出しという当初の目的は果たしたか、

 思わぬものまで出てきたが……。しかしあいつ、援軍と言っていたな?」

「はい、ですが今の所……」


「報告いたします! 南方の空からモンスターの襲来! ドラゴンです!」

王様と侯爵様が会話してると、突然謁見室に兵士さんが入ってきました。


ええー、逃げた後に真のボス戦が始まるのは定番だけど、

よりによってドラゴンですか……、定番ですがバカにはできません。

元になったゲームではこの世界最強クラスのモンスターですので。

ゲームでも終盤にならないと出てこない強敵を、今持ってきちゃいますか。


次回、第92話「それでは読者の皆様上空をご覧ください。お約束のドラゴンさんがやって参りました」

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