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第63話「光って回って開くアイテムって、エモくてガチでアガるよねー!!!」

ギムルガから鎧が完成した、との連絡でロザリア達は早速ドワーフ工房を訪れていた。

ギムオルは鉱山の操業が始まっているので、立ち会えないとの事だった。

工房に通されたが、鎧らしきものは特に見当たらない。


ロザリア達が首をかしげていると、「こっちだ、こっち」と、

ギムルガが作業台の方で手招きするので行ってみると、机の上を示している。


「で、、これが出来上がったものなんだがの」

「うでどけ……、大きめのブレスレット、ですね」

「こっちは、ネックレス? 何となく私の胸当てに似てますけど」


見せられたのは、クレアの胸当てに意匠がよく似た、

500円玉くらいの直径の円盤が付いた幅広のブレスレットだった。

見ようによっては、前世での腕時計にも見える。

もう一つはやや大ぶりなネックレスだった。

丸みをおびた逆三角の形で、中央に同じく500円玉くらいの円盤が付いており、

幅広の金属の帯でぶら下げる形になっている。


「正直言うとな、お前さん達の現在の魔力を基準にして装備を作っても、

 いずれ追いつかなくなる。それなら成長する装備を、と思って作ったのがそれだ」

「えっ、これが鎧なんですか?」

「正確には鎧を収納しているアクセサリーだな、それ自体もかなりの強度はある」


ギムルガはそう言うと、ブレスレットの方をロザリアに差し出すので、

とりあえず試そうと、戸惑いながら受け取り、身につける事にした。


「えっと、これ、どっちの手に付ければ良いんですか?」

「まぁ邪魔にならないよう利き腕とは逆の方だな、どっちでもかまわんが」

「では左腕に付けます、それで、これからどうすればいいんですか?」

「うむ、その状態だと、側面のボタンを押すと魔力抑制が働く。

 ボタンを回すと抑制の度合いを調整できて、押しなおすと解除だ」


時計で言うとリューズのようにボタンが付いていた。

押すと、確かに体内で魔力が抑えられたのを感じる。

円盤もクレアの胸当てと同じように光り出した。『エモいなー』


「ああ、これだと手足に付けなくて良いから手軽で良いですね」

「あの魔力抑制の腕輪足輪は囚人とか犯罪者に使うような、

 いわば拘束具だからの。あまり使い勝手までは考えておらんのだよ」

「あれそういうものだったんですか……、それで、これがどう鎧になるんですか?」

「まあ待て、まずはお前さんの魔力を溜めないと始まらんのでな、

 ちょっと腕を開いた状態でそのブレスレットの円盤を押してくれ」


言われたようにすると、腕のブレスレットが消え、

同じデザインで巨大なものがロザリアの腰回りに現れ、装着された。

しかし、その姿は……。


「えーと、仮〇ラ〇ダーの変身ベルト?」

クレアが思わずつぶやいたように、どう見てもその外観は変身ベルトだった。

しかも古めのラ〇ダーの。


明滅するいくつものラインが放射状に浮かび上がる巨大な金属製のバックルの中央に、

キュインキュインという音と共に光って回る円盤が中央についており、

金属製の幅広のベルトが腰をぐるりと回っていた。


「お嬢様、いくら何でもこれは無骨過ぎるのでは、服と全然合っていませんよ……。

 どうしてそんな嬉しそうなのですか」

「うわ、お姉さまめっちゃ喜んでる、はい鏡、鏡」

「ギムルガさん! これマジ良き! めっちゃアガるんですけど!

 光って回ってるのがさらにエモ!」


ロザリアは誰の目から見てもめっちゃ喜んでいた。

クレアが目ざとく見つけて来た鏡で自分の姿を見た時、

ロザリアの中の少年の心と、中学二年生の心が大爆発した。

いや少女の心どこ行った。


「お嬢様! 口調口調!!」

「はぁ……? お貴族様ってのは妙な話し方をするもんだな。

 お嬢さまには無骨過ぎたかと思ったが、気に入ってもらえてよかった。

 光って回ってるのは、お前さんの魔力を吸収して充填完了しとるんだ、

 本当は少し時間が経たんとそうはならんのだが、やはりかなりの魔力量だな」


「で、で、で! ギムルガさん! ここから鎧が出て来て変身できるんですよね!

 どんなポーズとって、どんな掛け声をかければいいんですか?」

「……? いや?特に何もしなくても、その状態でボタンを押せば鎧が展開されるが……。

 ……ちょっと待ってくれ、今度はなんでそんな残念そうなんだ」


「ええええ……、変身ポーズとか、無いんですかぁ……。そうですか……」

『こんな光って! 回って! 音が鳴ってるニチアサ系玩具っぽいアイテムで!

 最後は単にボタンだけ押せばいいなんて、マジありえないんですけど……けど……』

ロザリアはこの世の終わりかというくらいに落胆している。

クレアはそんなロザリアをよしよしと頭を撫でて慰め、

アデルはロザリアの世界観が理解できず、真顔になっていた。


「いえ……、無いんならいいです……、適当に自分で考えますので」

「何故それが必要なのかが全くわからんのだが……、

 まぁ、自分で考えて言うなら別に何も言わんが」

「自分で考えて言うのは! 何か違うんですよ! 魂的な何かが!」


「……お嬢さまのこだわりが、よくわからないのですが、私がおかしいのでしょうか……?」

「うーんと? あらかじめ道具に決められていたのを掛け声にするのと、

 自分で考えるとイタい感じになるのとはで雲泥の差、って感じですかねー?」


とりあえず妥協する事にしたロザリア、困惑するギムルガ。

頭をかかえて悩みだすアデルを、よしよしと頭を撫でるクレアと、

なかなかのカオス空間である。


「……まぁ何でもいいから、ちょっと試してみてくれんか?」

「はい、では、とりあえず掛け声は即決で、武装展開!」

「いや、別に無言で良いぞ?」


まだ困惑しているギムルガを前に、

ロザリアがそれっぽいポーズと共にベルトのボタンを押すと、

バックルの金属部分がバキャッという音と共に、円盤を中心に8つの放射状に割れ、

スライドして広がり、開いた隙間から赤い魔力が放出された。


魔力は身体の後方に流れると徐々に形を成していき、

巨大な赤い長袖のローブのようなものが現れる。

その服はロザリアの身体に着せ付けられ、身体の前で合わさり、

赤いドレスになった。淡桃色のフリルや、金色の装飾など、かなり豪華に見える。


同時に、肩・腕・胸・足と身体の各所で発光が起こり、

その光が消えると、銀色の鎧状の小さなパーツが出現し、ドレスに装着された。

ベルトはそのまま腰に巻かれている。

最後に目を閉じている頭部にティアラのような兜が光と共に出現し、

ぶぁさっと赤い髪が(ひるがえ)った。

その後、目を開いたロザリアの表情は、物凄いドヤ顔である。


その光景は、どう見てもアニメや特撮の変身シーンのようにしか見えず。

ロザリアがポーズを解いて一同に向き直ると、その姿はまさに……。

―――変身ヒロインだった。



「うむ、ひとまずは上手くいったな、それはドレスアーマーとでも名付けた。

 ドレス部分だけでもかなりの強度を持つぞ。

 鎧パーツは成長と共に大きくなって、さらに強固になる……。

 いや今度はなんで泣いとるんだお前さんは」

「生きてて、良かった……。異世界転生して……よかった。

 施設のみんな……のばらママ夢を叶えたよ……」


そう、ロザリアは感動のあまり泣いていた。

前世で施設の子供達と見ていたニチアサ番組のヒーロー・ヒロイン達に、

心の底で憧れていた事が実現したのだから。


アデルはスン……、といった表情で、感動するロザリアを見ており、その目に光は無かった。

クレアはロザリアの頭をよしよしと撫でている。

あっちでよしよし、こっちでよしよしと忙しい子である。


「アデルさーん、お姉さまはしばらく放っておきましょう。

 はいこっちこっち、私のでも見物してて下さい」

「うむ、そっちの嬢ちゃんのはこれだ、普段使いする事を考えると、

 その胸当てはやっぱり大きすぎるからの」

「そうなんですよねー、小さくなるのは凄い助かります」


クレアは感動しているロザリアは放っておいて、

気を取り直そうとアデルを手招きし、自分の試着に誘う。

ギムルガもクレアなら意思の疎通も問題無いだろうと、

全力でロザリアの事を忘れる事にし、ネックレスをクレアに手渡した。

クレアは胸当てを外し、ギムルガから手渡されたネックレスを身につける。


「天側の所にあるボタンを押せば魔力が抑制される。操作方法はあっちと同じだ」

「おお、こんな小さいのに同じ効果だ、

 でもこれ、胸当ての時も思いましたけど、見た目のわりに結構軽いですね?」

「お前さんの魔力を吸収したら、一部を反発作用に振り分けて、

 重さを一部消しとるからの。その状態で円盤を押すと、鎧展開の待機状態に入る」


思わぬ細やかな配慮に感心しながらクレアが円盤を押すと、

これまでの胸当てのように巨大化した。

「おおー、こっちの方が今となっては付け慣れた感じがしますね。

 で、今度はボタンを押せば鎧の展開ですか?」

うなずくギムルガを確認すると、クレアはボタンを押してみた。


「ちょっと待ってクレアさん! 変身前の溜めも何も無し!?」

いつの間にかこちらに来ていたロザリアの嘆きとは無関係に、

変し…クレアの鎧の展開は開始された。


クレアの場合は生成された青いローブが合わさると下半身はキュロットスカートのようになり、

生成された白銀色の鎧は、腕や脚などがかなり守る範囲が大きく、

脚の鎧パーツはキュロットスカートの中まで潜り込んでおり、

太ももの半分まで覆われていた。胸当てと相まって、

こちらはかなり普通の鎧っぽく見える。


「うむ、やはり魔力量が大きいだけあって、身体を覆う部分も大きくなったの」

「え、魔力とかが強くなっていくほど面積が増える、って事で良いんスか?」

「できるだけ魔力容量を高める方に作ったからの。本来はドレス部分だけなんだ。

 鎧状のパーツは魔力で生成された物質なんでな、覆う面積が多いほど成長した事になるな」

「成長って、最終的にはどうなるんですか?」


ギムルガがクレアの疑問に答えるのに対し、既に十分体を覆う範囲が広いクレアが、

これ以上どうなるのか、とロザリアは疑問を口にする。


「それは本人次第だな、パーツが追加されるが、羽根なのかもしれんし、

 尻尾かもしれん、追加の腕を生やそうと思えばできる」

「ええー……、羽根は格好いいかも知れませんけどー、

 腕が4本とか6本になったら、さすがにモンスターなのでは……」

「ちょっと正義の味方には、見えないわよね? 討伐対象になってしまいそうね」


さすがに女子的には腕が何本もあるのは格好いいの範疇(はんちゅう)を越えてしまうようで、

ちょっと想像したロザリアとクレアが引いていた。


「色々と言いたい事は山ほどありますが、お嬢さま方の防具が無事完成して良かったです。

 ギムルガ様、本当に感謝いたします」

アデルが頭を下げるのを見て、そういえば自分達はお礼を言っていないと、

ロザリア達も慌てて頭を下げた。


そしてこの後、アデルが鎧の制作代を支払おうとするのを制して、

ロザリア達が自分達の稼いだお金で支払おうとし、

ギムルガは礼として作ったものだから金なんぞ要らん。と押し問答がしばらく続くのだった。


次回、第64話「私は悪役令嬢のロザリアよ? 何をくだらない事をやっているのかしら?」

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