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第58話「武器屋さんで異世界コーデ!」

この話から、バトル要素多めになります。

しばらくお付き合い下さい。

魔技祭(マギカフェスティバル)を? ですか?」

「うん、一学期の終わりに、全校をあげて各学年ごとに行われるものなんだけどね。

 生徒どうしが魔法の技術を競いあうものなんだ。

 で、申し訳ないけど、今年は君達2人には辞退してもらおうか、と」


ロザリアはクレアと共に生徒会執行部室に呼ばれ、生徒会長席のリュドヴィックと向かい合っていた。

そして、唐突に告げられたが、ロザリアもクレアもその言葉は意外ではあっても、特に不満は無かった。


魔技祭(マギカフェスティバル)の内容はよくわかりませんけど、

 授業受けてる感じだと、何となくわかります。

 ちょっとレベルが離れ過ぎてるから、ですよね?」

「そういう事だね、はっきり言って、実力的に勝負が成立しないんだ。

 これは各生徒の現状を確認してもらって、今後のやる気を出させるものだから、

 今、越えられない敗北感とかを感じるのはまずいんだね」


ロザリアとクレアは魔法の授業で、それぞれ基礎魔法の範囲ながら、

炎の剣と、氷の剣を何本も空中に出現させ、

自在にそれを操って空中で打ち合わせるチャンバラごっこに興じる。

などの離れ業を演じているのに対し、

一般の生徒は十数発の魔力弾を放つだけで疲弊し、それを更に制御するのはまだまだできていない状況だったからだ。


「ロゼの方は、私が心配して婚約者を傷つけさせたくない、とか我儘(わがまま)を言った事にするから。

 クレア嬢も、今年度は魔力制御を慎重に確認する必要がある、とかで納得してもらえないかな?」

「そ、その理由はともかく、私は別に構わない、ですけれど」

「あ、私もそれでいいです。正直、自分の力の限界がわかっていない、というのはその通りなので」

「ありがとう、ロゼもクレア嬢も、魔技祭(マギカフェスティバル)の時は生徒会執行部の手伝いをしてもらう事にするから。

 特にクレア嬢は治癒魔法で色々頼むことになると思う。

 あ、あとエレナ先生の支援という事で、フェリクスも呼ぶからね」

「うえぇ!? なん……、いえ、はい」


クレアはフェリクスの名前を聞いて、顔を真赤にしていた。

何度もいっしょに仕事をしてはいるが、”学校”で会えるとなると話はまったく別である。

ロザリアはあらあらといった表情で、いつもとは逆の立場で、生暖かい目でクレアを見守るのだった。



「あー、皆の前でお姉さまと勝負はしたかったんですけどねぇ。ちょっと残念です」

「何言ってるの、間違いなく私が負けるわよ? クレアさんの能力は桁違いなんだから」

「んー、火力だけなら良い勝負だと思うんですけどね?」


生徒会執行部室での会話を終え、アデルと合流しての帰り道、ロザリアはクレアの言葉に苦笑しつつ返す。

ロザリアの能力も、クレアに引けを取らないものではあったが、根本的な魔法力の容量では、

封印されてるとはいえクレアに大きく軍配が上がるのだ。


「それにしても、クレアさん、学校でフェリクス先生と会える事になって良かったわねー」

「い、いえいえいえ、その、いっしょにお仕事しゅる、だけ、ですよ?」

「……、多分、お嬢さまとクレア様の仲が良いので、この際だから恋人を作らせて引き離そう、とでも考えておられるようですね。

 正直殿方の嫉妬は見るに堪えませんが、良かったですねー」

「いえですから、どうして皆して、私達をくっつけようとするんスか!?

 いえ、お気持ちは、凄く嬉しい、ですけど」


アデルの淡々とした分析に、クレアは真っ赤になりつつ反論するが、最後の方は声が小さくなって行く。

『クレアさんって、このところフェリクス先生がしゅきピっての隠しきれてないもんねー。せっせとフェリクス先生のお仕事手伝ってるし』


「フェリクス先生の働いている救護院に、自主的にお手伝いに行ってるんでしょう? どんな感じなの?」

「最近はギルドのお仕事、というのが一部解禁になったので、依頼としては行ってますけど、

 普通ですよ? 治癒魔法をかけたり、隣でお仕事を手伝ったり」

「治癒魔法はともかく、お仕事を手伝えるの? 医者のお仕事なのに?」

「あー、私、前世で何度も入院してたので、変にその辺の知識はあるんですよ。

 薬の種類とか中身とかはさっぱりですけど。

 この時代の医学ってやっぱりまだまだみたいで、ちょっと話したら物凄い食いつかれますね」

「あら、良かったじゃない、エレナ先生に負けないくらいの話題があるわけね」

「いやでも、あんまり話してもまずい、というのはわかるので、

 村の薬師の人がやってたのを見たり聞いた、という事にしたんですよ?

 そしたら、その人に会わせて欲しい、とか言われちゃって。

 まぁそんな人は元からいないんで、もう死んだ事にしましたけど。

 今度は私に質問しまくるようになりまして」


ロザリアの前世では医療関係はさっぱりだが、そういえばクレアの前世は病気がちな中学生だった。医療知識のある人間として興味を持たれても仕方ないだろう。

ほんの少しの医療機器に対する意見だけでも、何世紀も先の技術になるのだから。

とはいえ、ロザリアとアデルは、クレアが思っていた以上にフェリクスと親密になっているのを微笑ましく思うのだった。


「おやおや」

「え、何ですかお姉さまその笑い、だから私は、その薬師の人の所に面白がって入り浸ってたという事になってしまって。

 いろいろ聞きたがるんですけどね。まぁ、話のネタに困らないのは、凄く、ありがたいです、けど」

「おやおや」

「アデルさんまでー!?というか、何でお二人とも、人の悪い笑い浮かべてるんですかー!?」

「あらぁ? だって、私は『悪役令嬢』だもの」「私は、『悪役令嬢の侍女』ですので」

「お二人とも、腹立つくらいに息が合ってますね」



「ともあれ、こういう行事があるなら、いい加減、装備を(そろ)えないといけないかもね。

 私達って、鉱山に行ったり古着屋とかカフェやったりで武器防具をほとんど何も揃えていないんだもの」

「同級生の方が、はるかに良い装備をしてる状態ですもんね、そろそろ購買部や武器屋で何か買いたいですね」

常々(つねづね)思っているのですが、どうして魔法学園内で、生徒向けに武器防具の売買が行われているんでしょうか……。危険は無いのですか?」


アデルはロザリアとクレアの話を聞いて、もっとも過ぎる疑問を口にする。

一般的なゲームの中では、どこにでも武器防具店があるものだから、

ロザリアもクレアもそういえば気にした事が無かった。まぁ行った事も無かったのだが。

魔法学園の制服を着て学生証を提示すれば大抵のものは買えるのだが、

確かにその辺は不思議である。

ロザリアもクレアも、それに気付かされ、一瞬悩んでしまった。


「ま、まぁアデルさん、一応、魔法学園内では、機能を制限されるみたいなんですよ。

 武器は(さや)から抜けなかったり、そもそも使えなかったり」

「私たちが参加できないのも、魔技祭(マギカフェスティバル)ではその辺の制限が取り払われるので危険、という事が大きいみたいね。

 無理に私たちに対抗しようとして、思わぬ事故が起こりかねないらしいのよ」

「なるほど、一応の安全策は取られているのですね、しかし、うーん」


まだ悩むアデルをまぁまぁとなだめながら、ロザリア達はさっそく武器防具を見に行こうと、学園内で最大の店舗へと向かった。


その店は中央棟前広場に面しており、4階建てのかなり立派なものだった。

外観は一見宿屋のようにも見えたが、ショーウィンドウに鎧や剣が陳列され、

お約束のように剣と盾の絵が描かれた看板がかかっていた。


「おおー、見るからに武器屋っスね」

「さて、どんな武器があるのかしら?」

「お嬢様、できれば武器より防具を重視して下さい。

 場合によっては試合に飛び込んで、生徒の戦闘を中止させる手伝いをされるのでしょう?」

「あー、そういえば私も魔技祭(マギカフェスティバル)では救護活動を手伝って欲しい、とか言われてるんですよね。

 杖とかあれば、魔法の制御も簡単になるんでしょうか?」


様々な武器防具が並んでいるが、どれも魔法学園の生徒が使うのを想定しているようだ。

防具も全身鎧ではなく、胸当てや身体の要所を守るものであったり、学生服の上から羽織るローブ等が多い。

また、武器の方も、剣らしきものはあっても、刃をもって切り裂くというよりは、

剣状の杖、と言った感じで、魔力媒体としての側面が大きいようだ。

剣の形状は真っすぐなものもあるが、これは斬れないだろう、といった、ねじくれ曲がったのも多い。


「これぞファンタジー、といった感じねぇ、いかにも、なのが多いわ」

「武器も防具も、優美過ぎて強度が心配になるものが多いですね、

 直接何かを攻撃したり守るものではないという事でしょうか」

「聞いたほうが早いですよ、すいませーん、店員さーん」


クレアが店内に声をかけると、奥から店員が出てきた。

きちっとしたスーツに身を包み、髪を整えた初老の男性だった。

ロザリア達の姿を見ると、姿勢を正して一礼をした。そして、恭しく挨拶をする。


『おおー中々のイケオジ、格好良いー。一流の貴族向けの店でも通じるわねー。あ、この学園の生徒は大半が貴族の子女だからか』

しかし、ロザリア達が要望を伝えて、その店員の口から出てきた言葉は予想だにしない内容であった。


「申し訳ありません、お嬢様達にはこの店の武器防具をお売りする事ができません」


次回、第59話「ドワーフさんの工房に行ってみよう!」

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