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第51話「で、でででデヱト!? 何ですかそれ新しいスイーツですかー!?」②

2人して歩く通りの脇には、様々な店が並んでいる、ふと、リュドヴィック様が店の前で足を止めた。

そこは高級な店というわけでもなかったけど、様々な装飾品が並べられていた。


「ねえロゼ、今日の記念に何かプレゼントさせてもらえないかな?」

「え!? ええー、はい、嬉しいです。あ! それじゃ! 私もリュドになにかプレゼントする!」


二人で店の商品を見て回る、店に置いてある品物のほとんどは、銀細工や宝石をあしらったものだったけど、その中で一際目を引くものがあった。

小さな青い石のついたペンダントだ。まるで空を切り取ったかのような色がとても綺麗。

裏には、何か魔法陣のような物が彫られている、護符の一種だろうか?

これなら、ウチにも買える値段だし、ちょうどいい。金色の石のもあるのを確認して、ウチらはそれ買うことにした。

店員さんを呼んで、包装してもらって受け取り、お店を後にして再び王都の散策に戻る。


本当ならさっさとお互いの首にかけ合うべきなんだろう、でも、そうはしなかった。

何となく、そうするのは今じゃない気がして。

結局、商店を見て回ったり、高台まで言って街を見下ろしたり、2人で王都の街をゆっくりと歩いて周り、日が傾いて来て、街灯が点き始めた頃、ウチらは噴水のある広場に来ていた。

ここはベンチもあって、ちょっと座って話すのには良い場所だ。

並んで腰掛け、何となく家路を急いでいるであろう人達の流れを眺めていた。


「あの人達にも、それぞれ生活や人生があるんだろうね」

「ええ、家族や友人や恋人と笑いあったり、ケンカしたり、仲直りしたり、そういう当たり前の幸せが、あの人達にあるといいわ」


「……ロゼ、僕は王太子だ、きっとこれからも、逃出さない限りは王太子なんだ、それは変えられない。

 この変装を取って、王太子に戻ったとき、僕はまた王太子であろう、と自分を(いつわ)るんだろう。

 でも、どうか、信じて欲しい、今この瞬間の気持ちは、嘘じゃないから」

「え、信じてるよ? リュドはリュドだって」

「フフッ、ありがとう」


リュドヴィック様は、包みを開けてペンダントを取り出し、それをウチにかけてくれた。

そしてウチも同じようにリュドヴィック様にかけて、ウチは早速胸元からペンダントを取り出し、リュドヴィック様に見せた。

リュドヴィック様も胸元から同じ物を引っ張り出す。

なんとなく見つめ合ってしまった。その後、二人してクスリと笑い合う。


「ありがとう、良く似合ってるわ、リュドの本来の瞳の色みたいで、綺麗よ?」

「君こそ、凄くよく似合っているよ、ロゼ」

「あ、ありがと」

「……」

「……」


二人してしばらく見つめ合ってしまう。こ、これって、もしかして、いわゆる伝説に聞くというあの雰囲気ですか――!?

そっと、抱き寄せられる、はいこれ確定、もう覚悟するしかない、ウチはリュドヴィック様の顔をじっと見上げる。

リュドヴィック様の顔が近づいた瞬間―――。



遠くで鳴る夕刻を告げる鐘の音が聞こえてきた。現実はいつだって残酷。


「……時間切れどころか、思いっきりアデル嬢との約束破ってしまってるよね、これ」

「は、はい。ソウデスネ」


「店まで送っていくよ、ちょっと走らないといけないかな? 行こう」

「……はい!」


気が付くと、日は大分傾き、地面に落ちる影は長くなっている。

いつの間にか、凄い時間が経ってしまっていた。人生で一番短い数時間だったんじゃなかろうか。



「アデル、ごめんね、遅くなってしまって」

「すまない、約束を破るつもりはなかったんだけど」


「お、お姉さま……?」

「お嬢様……」

店に戻ると、ウチらを見るクレアさんとアデルが固まっていた。


その視線で気づく、店の近くで走るのをやめて呼吸を整えて、落ち着いた感じで戻る事にした、そこまではいい。

しかしウチらは走ったせいで服のあちこちが乱れており、それを直しながらだった。

髪も一部ほどけてしまっていたし、胸元のペンダントを見られるのが恥ずかしく、胸元を直したりしていた。

顔や首筋には汗をかいてしまっているし、微妙に紅潮した顔で、息遣いも微妙に荒い。


どう見ても、事後だった。


「お、おおおお姉さまが、ついに大人の階段ををを!」

「お嬢さまあああああ!? ヘタレだから一線は越えないと信じていたのに!?

 嗚呼(ああ)、侯爵様ご夫妻に、なんとお詫びをすれば……」

「ち、違う、違うからね!?」

おいアデルさん、ウチの人間性の評価について後で話をしようか。


「誤解させてしまったようだね、これは、責任を取るべきかな?」

「えっ」


いやそれはかえって変な方向に誤解されませんか!?と反論する間もなく、

ウチは2人の眼の前で、再びリュドヴィック様に抱き寄せられた。

リュドヴィック様の顔が近づいてくる、ウチは今度こそ、と目を閉じた。そしてキスされた。

おでこに。


「え、えーと。」

「やっぱり、この格好じゃね、きちんと場所と時間をあらためて。じゃぁ、ロぜ、またね」

「…はい、」


去りゆくリュドヴィック様の後ろ姿を見送りながら、ウチは軽く混乱していた。

え、えーと、今のはキスする雰囲気じゃなかった? ウチ完全にそのつもりだったんだけど。これって、私の事を、大切にしてくれてる、からよね?そうだよね?



「あ、アデルさん、これ大丈夫っスわ」

「……このヘタレどもが、まぁお嬢様の貞操は今後も守られそう、という事で良しとしましょう」


尚、事の顛末(てんまつ)を聞いた関係者が

「いやお姉さま! さっきのはキスする所ですから! 大切にしてくれる、とかじゃなくて、単にヘタレなだけですから!?

 っていうか、お姉さまの前世って18歳の女子高生でしたよね!? しかもギャルの!

 なんスかそのピュアさ!?」

「く、クレアさん、口調……、あと、笑ってはお嬢様がかわいそうですフフッ」

「いやアデルさんも笑ってますよね? こっち向いて下さい、肩震えてますから、思いっきり笑いこらえてますよね?」


と、どこかの侯爵令嬢が友人と侍女に、あまりの初々しさを笑われて顔を真赤にし、


「何を意味不明な事してんだお前ええええ!! そこはキスするべきだろうがあああああ!」

「い、いややっぱりきちんとしたムードとか、格好とか?さぁ?」

「ムードならまさにその時だろうが!キスなんか、勢いでやるもんなんだよ!

 この機会逃したら、次は『さあキスするぞー』感が凄くなって、

 お前みたいなヘタレは中々キスできなくなるだろうが!

 結婚式の誓いのキスまでずっとお預けになるぞお前らなら!」


と、某側仕えが、どこかの王太子の胸ぐらをつかんで叫んでたのはまた別のお話し。


次回、第52話「魔法の授業と、騒動のあとしまつ」

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