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第47話「ドモー❤ 外国からやって来た新人店員のローズでーす! これからヨロ~❤②」

昨日更新した①の続きです。

「あのー店員さーん、これ、買う時に手直しして欲しいんだけど、

 お願いできるかなー?ちょっと変わった事なんだけど」

「んー? 腰のサイズなら、そのまんまでもいけると思うよー?

 あまり細くすると動きにくくない?」


ロザリアが接客を終えると、今度は獣人族の女性が細めのロングパンツを持って来て話しかけて来た。


猫系の種族で完全な獣顔ではなく、目鼻立ちや髪の毛並みに獣の特徴があるのと、頭の上に動物の耳があるのが特徴だった。

それでも手足はしなやかな強靭さを感じさせ、手は指先まで毛に覆われ、手のひら側には小さめの肉球まであった。


『おおおおおおお❤ リアル猫耳❤ 沸いた! マジエモ! かわいいかわいいモフモフしたいしたい!! 肉球さわりたい!!』

と、猫好きなロザリアは店内で猫系獣人族を初めて見た時、脳内で感動はしていたが今は接客中と必死で耐えていた。


「いや違うんだ、あたしら獣人は尻尾あるだろ? それ通す穴を開けないといけないんだよ。

 こういう長いパンツ穿()くの好きなんだけどね、自分で手直しするにもこの手じゃさ、仕立て直し屋とかに頼むと微妙に高いし」


獣人族の女性はちょっと後ろを向いて自分のお尻を見せると、確かに着用しているものには尻尾を通す穴が開けられていた、

しかしその穴は自分で開けたのか、雑に切られている上に穴の周りは()われていないのでほつれてしまっていた。


獣人族の手足は獣に近く、筋力は人間をはるかにしのぐ。が、指先の形状によっては繊細な作業が難しいとの事だった。

尚、尻尾を動かす時の見本のつもりか、女性が猫尻尾をくねらせたのを見て、思わず触ろうとしたロザリアは、

一瞬で側に来たアデルにぺしっと手を叩かれて止められていた。これではどちらが猫かわかったものではない。


「仕方ないから自分で開けたんだけどね、布を綺麗に切るの意外と難しいし、

 この手じゃろくに縫えないからほつれるし、酷い時は破れて下着まで丸見えさ」

「あー、それはお困りですねー、お尻の上の所をVの形に切って、

 尻尾を通した後、上の所を頑丈な革紐で結ぶようにしましょーか?

 銀貨3枚で、ちょっと手間かかるから預かりになっちゃうけどー」

「本当? 助かる! それくらいなら出すよ!

 冒険者なんてやってると服の痛みが早くてさー。

 あたしはまだまだ駆け出しだから仕立て屋に頼むなんて中々難しくて」

「あーね、だったら膝とかに布か革を当てて補強とかしましょうかー?

 ソフィアてんちょー ちょっと出来るかどうか相談したい事がー!」


と、ロザリアは店長を呼ぶと獣人族の女性を連れて試着室に入り、女性に商品を穿()かせてどのように尻尾を出すかの案を出したり、

膝をどのように補強するかを、実際に()う側であるソフィアを交えて、打ち合わせていった。

注文を終えた獣人族の女性は、半額で良いという前金を全額仕払い、次も頼むよと大喜びで店を後にした。こういう時に教会が経営しているという後ろだては役に立つ。



店には他にも色々な人達がやってくる、中には森の奥に住んでいるはずのエルフ女性までいた。

向かい合ってみると美形と噂されるだけあって顔立ちは本当に整っている。

色素の薄い肌に銀色にも見える金髪、切れ長の目に尖った耳という、

エルフ is エルフな見た目だった。

そのエルフ女性はいくつも商品を手にしていたが、いかにも使い込まれた、くたびれたものばかりを選んでいた。


「私達エルフは作られたばかりの新しい服、というのはどうも合わなくてね、こういう使い込まれた古着の方が良いんだよ。

 わざわざ古びた素材で新しい服を作る奇特な仲間はいるんだけど、エルフってのは気が長い、同じエルフから服を買おうとすると何年かかるやらなんだ」

「なるほど、それではそのワンピースドレスのスカート部分や傷んだ所を切って、

 今着てらっしゃるようなチュニックにしますか?」

「それ良いね、ボタンは今付いてるドワーフの気配がする金属のものが嫌だから、木とか貝のものに変えてもらえるかな?」

「あ、あー、ちょっと待ってくださいね、合いそうなボタン付いた服探してみますので、アデルさーん、クレアさーん、ちょっと服を探すの手伝ってもらえるー?」


『金属ボタンって、ドワーフさんの工房で作られたものだっけ? エルフさんとドワーフさんが仲が悪い、ってのは本当みたいねー』

正確にはドワーフやエルフは人間よりもやや精霊に近い存在の為、ドワーフの持つ地属性とエルフの持つ風属性が反発し合うので互いに苦手意識を持っているのだと言われている

面と向かうと殴り合ったり戦争を起こすような憎しみと言うよりは、ただ単に魔力的な相性の問題らしい。

ロザリアは2人を呼んで、エルフ女性の好みに合うようなボタンの付いた服を探し回るのだった。こういう時にも、ハンガーによる陳列は効率的と言える。



「意外な所に意外な需要ってあるもんですね、みんなちょっとした仕立て直しとかしてもらいたかったんだなぁ」

「うちは古着と合わせてだからその分安めだしねー、でもそのうち、そういう商売始める人出て来るんじゃない?」

「男もののロングパンツにも冒険者向けで男女問わず意外な需要あるよね、さっきみたいな人向けに膝とかに頑丈な布か革を当てて、痛みにくくしたのも置いておく?」

「革素材も店の中で扱えるようにしないとなぁ、ボタンだって色々買い揃えないと。明日から忙しいぞこれ」


閉店後の店内は忙しさから開放され、裏方の仕事のメンバーも出てきて思い思いに語り合い休憩を取っていた、その顔は皆明るい。

そんな中、ソフィアは売上を前にして興奮していた。


「ローズさん、マジ凄いです!ガチで凄いです!売上の伸びがイカついを通り越してパないです!」

「お化粧とか、お茶の入れ方は、孤児院で才能ある子を呼んできて、覚えてもらいましょう? そうすればこの店も大分良くなるわ」


「ソフィアさーん、口調口調、おね……、ローズさんのが感染(うつ)ってきてますよー」

「クレア様が、口調を気にするなんて……」

「いやアデルさん? さすがの私も、この店が渋谷のギャル街みたいになるのは、さすがにどうかなーと、思いますからね?」

「シブヤ、というのがどこかは知りませんが、私にとっては悪夢のような街のようですね」



「でも、これもいつまで続くか、ちょっと心配なんです。ほら、向かい側の店を見て下さい」

「どうして? あー、なるほど」


ソフィアが指差す先をロザリアが見ると、向かい側の店も同様にハンガーでの陳列を取り入れようとしてるのか、こちらの店のラックのようなものを運び込もうとしていた。

この世界には特許などの仕組みが無いので、それについてクレームをつけるわけにはいかない。


「しばらくはローズさんの感性とか接客でなんとかなるとは思うんです、でも、例えば孤児院の子たちを教育し終わるまでに間に合うかどうか」

「うーん、いずれ次の手が必要になるみたいね。どうしようかしら」

ロザリアは”ローズ”の姿で真面目な顔で腕組みするが、

その姿を前に、アデルはどうか今度はまともな手段であって欲しいと願うばかりだった。


次回、第48話「新商品を考えようとしたけど、アパレル関係の人って凄いよねー」

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