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第46話「ドモー❤ 外国からやって来た新人店員のローズでーす! これからヨロ~❤①」

はい、前回の次回予告タイトルはフェイクです。

ギャル語は異世界でも通じる、多分。

それでは本編をドゾ~❤

「ハーイお客サマー、お買い上げありがとネー、これからもウチの店をヨロ~❤」

「ローズさん、選んでくれてありがとうございました! 今度来た時もヨロ~!」


「ローズさん、これ買おうと思うんですけど、見てもらえますかー!」

「り! おー! ガチのめっちゃかわヨ~❤ さっきのよりレベチで良き! 似合ってるよ~❤」」

「ありがとうございます! あの、これに着替えていって良いですか?

 これから、先週相談した、いいな、って思ってる人と会うので、あと、お化粧も…」

「おけまる! ここで気合入れたコーデで可愛くなって、しゅきピに全力でアピって落としてきな~!」

「り! ガンダで(とつ)ってきます!」


「お姉さま、すっげぇ生き生きしてますよねー、前世本当にギャルだったんだ……、

 周囲にギャル語が感染(うつ)りだしたけど良いんでしょうか? っていうか、何でギャル語が通じるんだろう……。ここ渋谷だっけ?」

「侯爵令嬢が……、侯爵令嬢が……」


クレアが生き生きと接客するロザリアの様子を苦笑いしながら見ている。

しかしアデルの方は虚ろな目をして(つぶや)いていた。その手は行き所を見失い、ワキワキと虚空を彷徨(さまよ)う。


「いやまぁアデルさん、あれ、どう見てもお姉さまには見えませんし、良いんじゃないっスかね?」

「クレア様、口調……」

「わざと、ですよ?」


クレアの言う通り、ロザリアの見た目は一変していた、認識阻害魔法の魔石具での変装は、誰も一見してはロザリアとは判らないだろう。

変装の為に最初は真っ赤な髪を金髪に、金色の目は空色に変えてみたのだ。

が、それだと貴族らしさが逆に増してしまったので、何を思ったのかロザリアは肌の色をやや濃く変えた。

やや肌の色が濃いアデルよりも更に濃くしたその肌は、前世の日本人なら割と焼けてますね、くらいの色だったのだが、結果、いわゆる『黒ギャル』が誕生してしまった。


アイラインは逆に明るい色で入れ、頬にそれらしい紋様を描き、唇は明るいピンク色の口紅を選び、髪はあえて編み込まず、リボンを交えてまとめてくくり、

大玉のビーズをつなげたものを、じゃらじゃらと何本も髪にぶらさげて、衣服共々異国情緒をマシマシにした見た目で、

前世のギャル語を「外国語(なま)りよ!」と言い切り、名前は「外国から働きにきたローズマリーのローズでーす、これからヨロ~❤」と名乗り、

ギャルのコミュ力と口調で接客する姿は、誰がどう見ても侯爵令嬢のロザリアには見えなかった。

見えなかったが、いろんな意味でアデルは頭を抱えた。



「おー! アデルさーん! 今日もめっちゃかわヨ~❤」

「あ……、はい」


そして、ロザリアは客の応対を終えると、嬉々としてアデルにギャル語で話しかけて来る。

アデルの頬をむにむにしたり、それはもう楽しげに。いや、確実に(たの)しんでいた。

アデルの方はというと、それを死んだ目で迎えるのだった。


「ドシタのアデルさーん、元気無ーい? ワタシ悲しい、ぴえん。テンションアゲアゲー⤴のテンアゲで行きましょー?」

「おじょ、いえ、……ローズ様、お仕事頑張って下さい」

「お姉さまその辺で、アデルさん大分悩んでますから、この子凄い真面目だから、しかもどうしてちょっとカタコトなんですか」

クレアがさすがに突っ込み始めたのに苦笑して、ロザリアはちょっと素に戻る事にした。


「でもいい感じだと思わない? 今朝から昼までで10着は売れてるわよ? お化粧や髪結いのお客さん入れたらもっとだもの」

「いやあ、ロザ、いえ、ローズさん。さすがですね、口調はともかく、接客とか衣装の選び方は凄い参考になります」


店長のソフィアの言う通り、ロザリアの接客は中々堂に入ったものだった。

元々この店の古着は教会への寄進という事もあり、失礼にならないようそれなりに上質で飾り気のあるものが多かった。

それをロザリアが相手の好みを読み取り、ギャル仕込みの色彩感覚でコーディネートすると、買っていく人が激増した。


お買い上げの後は店で着替える事もでき、更には水曜日・週末限定ではあるものの、ロザリアやアデルの手による化粧や髪結いまでサービスするとあって、

休みの日に出かける年頃の女の子達の来店が激増した。また、その女の子の友人や母親も口コミで立ち寄るようになり、

2週間が経った今ではこの広場でも人気の店となっていた。何しろ、化粧や髪結いのサービスだけでも割と客が来る。


最近では何故かエルフや獣人族といった亜人の女性まで来るようになっている。

その中に平成の黒ギャルがいるのは中々にシュールっスよねぇ……と、クレアはしみじみと思うのだった。


「すいませーん、ローズさん、ちょっと見てもらえますか?」

「おけまる。すぐ行くよーん、どしたん?」


”ローズ”のギャル語は何故か親しみを覚えるらしく、店を訪れる年若い客からもかなり気軽に相談を持ちかけられる。


「この服なんですけどね、色とか形とか凄い気に入ったんですけど、やっぱり凄く大きくて、腰とか袖とかすごく余るんですよ」

「あーね、ノープロブレムよ、こういう場合は、ドレープとか入れりゃ良いーの」

「ドレープ? ですか?」

「とりあえず、着てみて?」

「あ、はい」


「腰の所はシワシワにギャザー入れて、こう、山山にね、それから、スカートは上の一箇所だけを何か所か()って、スカートにぐるっと一周縦ヒダを入れてドレープを作って、

 背中や左右の袖も上と下を()ってアクセントにして細くして……」


この世界の女性の服はいわゆるワンピースが多く、サイズを直さないといけない場合は全身に手を入れる必要があったので、この店では売って終わりにはしなかった。

ロザリアが客の着ている服に次々と待ち針や安全ピンを入れていった。ウエストは細く見えるように、スカートはドレープを入れる事で縦のヒダがいくつも入り、

背中や袖は<二>のようなヒダが縦や側面に入った分細くなり、全体的にスマートに見えるようになる事で、

何の変哲も無いフラットなワンピースだったのが体にフィットし、様々なシワやヒダが入り、立体的に見える手の込んだデザインに見えるようになっていた。


「これでどう? 腰の所は、サッシュベルトか、布を巻けば目立たないよー?」

「おおおおー、これ、良い!良いです!」

「んじゃ、服代と直しを合わせて、銀貨4枚だけどー、どう?」

「あー、ちょっと、高い、ですねぇ」

古着の値段を下げた分、直しを含めた服の値段としては破格ではあるが、それでも庶民からすればそれなりな出費である。


「それじゃ、お客サマが着てきたこの服、銀貨2枚で買い取るよー?それなら、差し引き銀貨2枚で良いから。お化粧と髪結いも付けとくよー」

「本当ですかぁ! だったらこれでお願いします!」

「お買い上げあざーす! んじゃ、一旦元の服に着替えて、そこのカフェでゆっくり待っててねー、アデルさーん、このお客サマにお茶をヨロー❤」

「では、お客様、着替えた後はこちらへどうぞ」


店の中では簡易的な仕立て直しをその場で行え、今着てる服か持ち込みの服を買い取ってもらえる事もあり、レンタル気分で服を買えるとあって服の回転も中々だった。

また、せっかく待ってもらうなら、と店の片付けで余ったスペースの一角を待機場所としてカフェに仕立て、アデルがお茶をふるまっていた。

貴族屋敷仕込みのお茶が味わえるとあって、有料だとやや高値ではあるものの、そちらにも客が割と入るようになっていた。


尚、店の奥では孤児院から選抜された子供たちが、男女問わずフル稼働で服の手直しをしている。

決して楽な作業ではないが、命の危険が無い仕事であるのと、

日々食べるものが良くなって来ているので、労働意欲は増すばかりだった。


次回、第47話「ドモー❤ 外国からやって来た新人店員のローズでーす! これからヨロ~❤②」

ようやっとでギャルらしいロザリアが出せました……。

今まで「ギャル要素どこー?」と思われていらっしゃった事でしょう。

ですが何より作者本人が一番それを痛感しておりまして……。(出す所無かったんですよ…)

これからはたまに”ローズ”が出てくる予定ですのでどうかご愛顧を願うばかりです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ファッション、それも本流ではなくてある意味サブカルに近い辺りは世界が異なると同じ様式には収束しないだろうしギャル無双になるか
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