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第297話「世界の終わりには、いつだって正義の味方がかけつけるものよ!」


世界が、滅びようとしていた。星があるべき所には異形の都市が広がり、空には異形の魔獣が飛び、人々からは次々と魔法力が奪われていっていた。

異変の中心地のグランロッシュ王立魔法学園では天を貫く巨大な光る柱が天空の都市にまで伸びており、その柱には巨大な異形の女性が融合している。

その姿は遠く離れた王都からも見え、王都の人々はあれが破滅をもたらすものかと見上げていた。

「この世の終わりなのか……」

呆然と空を見上げつぶやく者がいる。荷物をまとめて逃げようとする者がいる。だがどこへ逃げるというのか。どこへ逃げられるというのか。

先程地上全ての人に向けて放たれた「死ね」という言葉、その言葉に人々は恐怖した。魂の根源に植え付けられた記憶を呼び覚まされ、1000年前の悪夢が再び蘇ろうとしているかのようだった。人々の心の中にあったのは、「絶望」という言葉だけだった。


「ママー、あの空何なの? あのおっきい女の人って何なの? 私達どうなっちゃうの?」

「私にもわからないの、でもこれから、きっとよくない事が起きるのよ」

今年で幼い我が子の手を握り、母親らしき女性は空を見上げて(つぶや)く。この先自分たちにはもう未来が無いのだろうと感じていた。

だが幼い子ども達は怖いもの知らずだ、まして今はヒーローがいる、ヒロインを知っている。しかもそれは空想のではなく現実に存在していた。

「大丈夫だよ! 絶対助けに来てくれるよ! ローレンツがいるもん!」

「そうそう! グランダイオーでばーっと何とかしてくれるよ!」

子供たちは先の”狂戦士(ベルゼルガ)”による王都への襲来で燃え上がる王都の火を消し止め、撃退し、崩れた建物から人々を救出し、傷を負った人々を癒やして回るグランダイオーの姿を見ていた。

救いの手が届かなかった死者を悼み、跪いて手を合わせる巨大なグランダイオーの姿は、子供たちにとって神々しい神像のようにも見えたものだ。


「グランダイオー!」

「グランダイオー!」

「グランダイオー!」

子供たちのその声は誰にも届くはずがなかった。遠い地でそのグランダイオーは敗北したのだから。残骸となって地に伏している。

本来なら、この物語はここで終わるはずだった。


その声は届いていた、ロザリアに。ヒーローを、ヒロインを、救世主を待ち望む声が聞こえていた。

他の誰もできないなら、自分に託された力でそれが叶うというなら自分がやるしかないと決心した、それが戻れない道であっても。

「亜神覚醒!」

突如、巨大な女性の姿の側に、光り輝く姿が浮かび上がる、子ども達の間から歓声が沸き上がる、そう、正義の味方は、いつだって世界の危機に颯爽(さっそう)と現れる。


ロザリアは前世のギャルだった記憶を取り戻してからはいつだって自由だった。誰よりも自分らしく、自分の心のままに生きてきた。

彼女が心の中に思い描き、最も自由で最も自分らしい姿、心の中にずっと持っていた”いつか世界を救いたい”という使命感が形となる。

世界を滅ぼす魔王の前に現れたその巨大な姿は―――。


「おーっほっほっほっほっほ!!」

ロザリアが劇で演じていた悪の女幹部アンブロシアだった。かなり気に入っていたらしい。

「「「……え?」」」


さすがに子供たちも真顔になる。違う、そうじゃない、待ってたのはそれじゃない。どう見ても正義の味方には見えなかった。

だが、真っ赤な髪に悪女そのもののアイメイク、真っ赤なドレスには黒い装飾の付いた銀色の鎧、背中には炎でできた巨大な翼。

手を口に当てて世界に届かんばかりの高笑い、傲然と眼の前のグリセルダを見下すその姿は、ロザリアにとって、ギャルの、悪役令嬢の最上級系の理想の姿だった。

「どうしてアンブロシアなの!?」

「そこはローレンツかグランダイオーでしょー!?」

「引っ込めー!」

当然ながら子供たちから苦情の声が上がる。ロザリアは軽く凹むが、これでも一応身バレを気遣ってこの姿を選んだのだ。思いついたのがアンブロシアというのがいかにもロザリアだったが。


「フハハハハハハハ! なんだその姿は! 私の真似事か?」

「おーおっほっほっほっほ! あなたにはこれで充分よ!」

グリセルダとロザリアの高笑い合戦が世界に響き渡る。普通こういう場合は片方が正義か平和を守る立場なのだが、正直どっちも世界を滅ぼす破壊神にしか見えなかった。


その姿はSG(スーパーグレート)グランダイオーから退避させられていた、サクヤやシルフィーリエルも見ている。

「……ねぇ、あれって、ロザリアさんですわよね? 大丈夫ですの? あれ」

「あはははははははは、あれ正直どっちも世界を滅ぼそうとしてるようにしか見えないよね、あはははははは」

呆れ返るサクヤ、シルフィーリエルはツボに入ったらしく、腹筋が切れる勢いで笑い転げていた。



「何だかわからないけど邪魔するんじゃないよ! 目障りな!」

「あらあらあら、魔王様もあろうお方がなんてはしたない。威厳も何もないわね、おーおっほっほっほっほ!!」

グリセルダを(あお)りまくるロザリアは、余裕を気取って見せているが内心はギリギリの状況だった。正直今の状況は時間稼ぎでしかない。

元々アルケオザラマンデルから託された能力は断片的なもので、『球船(たまふね)』から強制的に魔力や精霊力を自身に供給させて亜神(デミゴッド)化を維持している状態でしかない。供給が途絶えてしまえばただの人間に戻ってしまうのだ。

そして魔王と化したグリセルダの力はそれを遥かに上回っていたままだ。一人で世界を滅ぼしただけの事はある上に、今は2つの世界から力を吸い上げている状態だ。

「行け!魔獣共!」

更には魔法陣を通して魔界から召喚された真魔獣が溢れ出てくる、彼女はそれをロザリアにけしかけるだけで良かった。

「くっ!神気抜刀!」

アンブロシアの姿のロザリアは、手に神気を収束させて巨大な剣を作り出し、襲いくる魔獣を切り捨てていくが、それでもこの数は簡単にはさばききれない。

何よりも今のロザリアは”亜神”であり、万能の存在ではない。力には限界があるのだ。


そして、その様子は上空の球船のアデルにも見えていた。

「お嬢様……なんて姿に。お前ら早くしろや! お嬢様が命がけで戦ってんだぞ! 気合入れろ!」

「いやそう言われても、ワシらこれ調査中だったし……。お前さんそんなキャラだったの?」

アデルは球船の中で半ギレどころか全ギレでドワーフ達をこき使っていた。球船を経由したロザリアへの魔力供給は確保したものの、まだまだ作業は終わっていないのだ。

そこへ、王城地下から転移してきたクレアやリュドヴィック、フェリクスも合流してきた。

「アデルさん! 手伝いに来たっスよ!」

「アデル嬢、いったいここで何を……」


ドン引きしているリュドヴィックの質問に答えるのはあまり意味は無いのだが、アデルはロザリア絡みの事なので説明をする事にした。

「”援軍”を呼ぶ、準備をしています」

「援軍だと?どこからだ?」

「この船は、乗せた人を事象空間を移動して異なる世界へと移動するわけですが、その能力を逆転させて別世界から人を召喚する事ができるのだそうです」

「いや、たしかにそれは知っているが、はっきり言って無作為に呼び寄せるので都合良く来てくれるわけではないとも聞いたぞ?」

「詳細は省きますがそこは問題無いのです、とにかく今はこれを動かさないとどうにもなりません。

 早くしろやドクサレドワーフ! お嬢様に何かあったらお前らマジ皆殺しだからな! 全員アバラ突き破って手を突っ込んで背骨掴んで腹から内臓ごと引きずり出すぞ!」

切羽詰まっているのでアデルの口の悪さが全開になっていた。脅し文句にしてはグロテスク過ぎるので気分が悪くなるドワーフが続出している。ドワーフ達はこう見えて繊細なのだ。

「ステイ! アデルさんステイ!」

「そうは言われてもワシらもこれを使った事なんてないんだよ!」

少々どころか思い切り行き過ぎなので、クレアが必死に抑える。ドワーフ達も必死なのだが、勝手がわからないのでどうにも作業が遅い。もはや現場は泥沼だ。

そこへ、また新たな来訪者の姿が。


「私が手伝おう」

黒いフードに黒衣の、フォボスだった。その姿に全員が色めき立つ。


「フォボス!?」

「貴様! こんな所にまで!」

「落ち着け、私だ、私だよ、アデル」

頭にかぶっているフードを取ると、その顔はグリセルダだった。だがその顔は少々幼い。

「グリセルダ王女? しかし外のはいったい」

「それについては、”私”から説明させていただきます、”私”は、グリセルダの妹、ヴィアールダと申します」

グリセルダの雰囲気が少々変わる、話し方も心なしか外見相応の幼さだった。

「何だ? 2つの人格があるとでもいうのか?」

「おっしゃる通りですリュドヴィック殿下。私は、1000年前さらわれ、あの装置に封じられる前に分身を放ちました。

 それはとても弱いもので、この世界で魔力を吸い上げ、独自に動けるようになるまでかなりの時間が経ってしまいましたが」

その言葉に、アデルはフォボスが最初に現れた時に自分を”断片”と言っていた事を思い出す。魔法学園に通っていたグリセルダと同じように、本体から独立して動いていた存在なのだろうかと当たりをつけていた。


「その目的はただ一つ、姉を助けて故郷に帰りたい、というだけのものだったのですが、やはり欠片は欠片、心も記憶も大半が欠如していたので人格など無かったのです。

 ですがほんの少し前、私の”本体”が崩壊して自由になった時、ようやく記憶と、本来の目的を取り戻せたのです」

「その”本体”とは、狂戦士の中にあった”(コア)”の事で良いのだな?」

リュドヴィックは直接目にはしていないが、狂戦士に関する資料の中にあったので情報だけは知っていた。その言葉にヴィアールダと名乗った少女はうなずく。

すると、また目の前の少女の雰囲気が変わった。”グリセルダ”に切り替わったのだろう。

「”私”も、私の”本体”に吸収されてしまうはずだったのだがな、どうも”本体”との乖離が激し過ぎたらしく、はじき出されてしまった所を妹のアルダに救われた。

 まぁ余りものの存在だよ。記憶も何もかも失ってしまった。残っているのは魔法学園での思い出くらいだ」

「グリセルダ様……」

「ゼルダ、でいいよアデル。私は、この世界を救いたいんだ。今なら素直に言える。どうか私を信じて欲しい」

今の”グリセルダ”は過去も何も無関係で、ただ魔法学園に通っていただけのアデルの良く知る”ゼルダ”だ。

アデルにはそれだけで十分だった、アデルはゼルダの手を優しく握り、そっとうなずくのだった。

ゼルダもその手を軽く握り返し、吹っ切れた顔になってドワーフ達が必死に作業していたコンソールパネルに向かい合った。

「さぁ、では本気を出させてもらうかな?」

ゼルダはコンソールパネルを操作するのではなく、自身の魔力をシステム内に流し込み、その卓越した魔法科学とでもいう知識で、球船の中枢へと直接接続を開始した。

その処理能力はすさまじく、ドワーフ達が必死に行っていた事の何倍もの速度で改ざんを進めて行くのだった。



「よし、アデル! これで事象空間を観測した上で、さらに上位の世界へと接続が可能になったぞ! 何かするなら始めてくれ!」

ゼルダが作業を終え、アデルに向かって叫ぶ。アデルはそれにうなずき、クレアを連れておそらく球船を操船する為の所に移動した。


「アデルさん、時間が無かったのかお姉さまからは詳しくは教えてもらえなかったんですけど、いったい何を始めるんスか?」

「私の、『事象改変』の中にある因果律を操作する力を利用して、援軍を呼ぶとの事です。

 それとクレア様、貴女の『初期化』能力の中に含まれる、世界線の切り替え能力も利用すれば、無数の可能性の中から”援軍”を呼べるとか」

「はぁ、で、その”援軍”ってのは誰なんスか?」

「お嬢様の事ですから、ニチアサとやらのヒーローとかヒロイン達じゃないですか? そういうのがお好きなようですし」

「あー、映画とかでもそういうの見たなぁ」

「ですからクレア様、そういうのは小声でお願いいたします。あと、口調にお気をつけ下さい」

アデルの(たしなめ)めにクレアの表情も緩くなる。アデルが『この後を心配しなさい』という事は、確実に状況は改善していっている。

アデルとクレアは船を操作する為の球体に触れる。これは物理的な操縦ではなく、二人の体内にある魔力回路に接続して操船を行うとの事だ。

しかし今は船を動かす時ではない、二人は意識を集中し、ロザリアに呼びかける。


「お姉さま!準備はできたっスよ!」

「お嬢様!時は今です!」


『ありがとう二人共! 始めるわ! 世界中のみんなにとびっきりの未来を見せるわよ!』

球船の中に響き渡ったロザリアの声と共に、球船がそれまでとは異なる鳴動を始める。

それと共に周囲の装置に光が灯り、透明な床の下に見えていた多数の人が入るらしいカプセルにも光が見えた。”援軍”はあそこに呼び寄せられるのだろう。

カプセルの中に徐々に何かのシルエットが浮かぶ、まずは女性のようだ。だが、その姿は―――。


「え? お姉さま?」

「お嬢様、ですね、まさか別世界のお嬢様を呼び寄せたのですか?」

その二人の声に答えるかのように、次々と”ロザリア”達がカプセルの中に出現し始め、その場の全員が絶句する。クレアとアデルはそろってチベットスナギツネのような虚無目になった。

「う、うわー、お姉さまがいっぱい……、しかもどんどん増えてる……、なんかお姉さまがどんどん増えてるんスけどー……」

「……悪夢です、これは絶対悪夢です。悪夢に決まっています。もしもこれが全て世に解き放たれたら……」


カプセルの中にロザリアがいた、何人も、何十人も、何百人も、何千人も。何万人も。しかしその姿はどれ一人として同じではなかった。

悪役令嬢のままのロザリアがいた。聖女として生まれたロザリアがいた。男の娘のロザリアがいた。半身を魔族と化したロザリアがいた。天使になったロザリアがいた。半身を機械化したロザリアがいた。グリセルダに身体を乗っ取られたロザリアがいた。

闇落ちしているロザリアがいる。BLにはまって腐ってしまっているロザリアがいる。物理的に腐ってゾンビかグールとなっているロザリアがいる。

種族が獣人族なのか猫耳が生えているロザリアがいる、何故かメイド服を着ていた。

少女の姿のまま不老不死になったロザリアがいた。背に翼があるもの、目が3つあるもの、腕が6本ある異形の存在と化してしまっているものもいる。もはや姿形が不定形なロザリアもいる。

光となったロザリア、液体のロザリア、気体のロザリア、植物と一体化したロザリア、ちょっと待てお前らはどんな経緯でそうなった。

巨大ロボットと一体化したロザリアもいたが、さすがにカプセルに入り切らず『帰ってくれ』と周囲のロザリアに追い返されていた、寂しそうに姿を消していっている。

その全てがロザリアだった。ありとあらゆる可能性の中で発生しうるロザリア達がいた。

そうはならんやろとか、いや本当に本当にどうしてそうなったというロザリア達までがいた。


「お、おおおおおお姉さま!? たしかにこれ全員集めたら物凄い事になりそうですけど! これで本当にあの魔王に勝てるんですか!? それとも世界を破滅させる気ですか!?」

「ああなるほど、皆に見せる未来とは悪夢だと、この世の全てが破滅した悪夢だという事ですかあはははははははははははははははははははははははははははははは」

クレアは混乱しまくり、アデルは無数のロザリアを前にろくでもない想像しかできず、既に壊れかけていた。ただ1人のロザリアだけでも持て余しているのに、これら全てが好き放題する世界なんて考えたくもない。


「うーむ、どのロザリアも正直捨てがたいな……」

リュドヴィックだけは婚約者バカが入りまくっていて、ちょっと嬉しそうだった。



球船の外では亜神ロザリアとグリセルダの戦闘が続いていた。余裕のグリセルダに対して少々苦戦気味のロザリアだったが、突如その均衡が破られる。

球船の中に異常な存在感を感じ取ったのだ。しかも1つや2つではない。

「なんだ!? 突然この気配は!?」

「来たわね、紹介するわ、私の”援軍”よ」


亜神ロザリアの言葉に答えるかのように、周囲に無数のロザリア達が転移してきた。

そして亜神ロザリアを中心として、その背後で無数のロザリア達は規則的に並び、壮麗な幾何学模様の魔法陣か曼荼羅のような何かを描く。

ちなみに、先程『帰ってくれ』と言われた巨大ロボットと一体化していたロザリアは、いつの間にか戻ってきており、ちゃっかりその中心にいたりする。


「なんだこいつらは!? 同一存在がこんな大量に!?」

「よそ見してるヒマ無いわよ!」

亜神ロザリアは巨大グリセルダに剣で斬りかかり、(つば)迫り合いに持ち込んだ。それでもグリセルダの放つ強大な魔力に弾き飛ばされそうになる。

「これで増援のつもりか? しかし私には遠く及ばないようだが、あんな奴ら何人集めようが私には勝てん!」

グリセルダが言うように、無数のロザリア達はそれぞれが秘める魔力は桁外れではあるが、1人1人はまだ”人”だった。

対してグリセルダは既に大地の魔力脈にすら直結しており、この星そのものの魔力の塊と言ってよかった。

更には、上空の魔界からも魔力供給が始まっており、2つの世界を支配する魔王そのものと言っていい。だがそれでも、それでもロザリア達の顔に絶望感は無い。


「ねぇ、知ってる? 魔力って、高い方から低い方へと、流れ込むのよ!」

次の瞬間、魔王グリセルダに集まりつつあった魔力が、鍔迫り合いをしている剣を通じて亜神ロザリアへと流れ込んだ。その量はあまりにも膨大で、いかに亜神と化したロザリアでも1人で受け止めるのは不可能だった。

そう1人では。

亜神ロザリアの背後に浮かぶロザリア曼荼羅が激しい発光を始める。亜神ロザリアでは受け止めきれない魔力の奔流を、無数のロザリア達が受け止めて吸収しているのだ。曼荼羅そのものもどんどん複雑な形状に変化して巨大化してゆき、ロザリアやグリセルダを包み込まんばかりだ。

「ばかな! こんな事が人にできるはずがない! 人の領域を超えている!」


「人だからできるのよ! これが奇跡ってやつなの! みんな、良いわね? 今こそ全てを一つに!」

亜神ロザリアの声に応え、背後のロザリア達は魔力、神格、魔格、エネルギー、精霊力、電気、魔導力、因果力、ありとあらゆるエネルギーと化して1つへと、すなわちこの世界の亜神ロザリアを目指す。

ただ一人が、ただ一人の願いを叶える為に、無数の世界の一人から思いを背負ってただ一人に集結し、巨大な発光する球体と化した。

それは卵のようでもあり、あるいは太陽にも似ていて、世界をあまねく照らすのだった。


世界中がその光球を見守る中、神々しい光と共に何枚もの羽根が天に広がり、卵が割れる。

光の球体から出てきたのは、天を衝く程の身長、長く赤い髪と、神々しくも精緻な文様が浮かび上がるドレスをまとった一柱(ひとはしら)の女性だった。

その表情は穏やかで、慈母のように微笑んでおり、全身が神々しい光に包まれていた。その顔は、ロザリアだ。


悪役令嬢()ロザリアの爆誕だ。

「あっちが魔王ならこっちは神よ! 文句ある? ウチに逆らうなら天罰食らわすからね!」


次回、第298話「志村けんってマジ神よね?動画サイトで見た時、マジ腹筋切れるかと思ったんですけどー」「どうしてそう軽々しく”神”という言葉を使えるのです」

読んでいただいてありがとうございました。

また、多数のブックマークをありがとうございます。

基本的に月水金、夜の5時~6時頃で更新いたします。

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作中のギャル語・若者語は2015~2018年頃を想定しておりますが、

違和感などありましたらご指摘をどうぞお願いいたします。

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